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第20話 植物地獄

 次の階層へと降りていくエルたちは目を見張った。


 そこの床はよく分からない植物で埋め尽くされており、壁もよく分からない蔓やツタで埋め尽くされている階層だった。


 それを見て、レイアはあからさまに嫌な顔をする。




「り、竜様……。これだけ植物が繁茂している状況では床の罠を探知するのが難しいかと……。おまけに壁にはあれだけ蔓があるとなると、テンタクロスや罠の可能性も……。」




 テンタクルス。それは蔓状の触手生物である。蔦に紛れ、人が通りかかってくるのを待っている。特に機械機構など隙間のある壁に繁茂してその機能を停止させたり、機構を不安定化させていきなり罠が発動したりとスカウトには非常に嫌われている植物だ。実際、壁にはせり出して途中で止まっている矢や槍が出ているのが目に見える。




『しゃーなし。我が漢感知していくから、何かあったら援護をよろしくね。』




《いよっ竜様!》


《さす竜!!》


《ユリアちゃんを身をもって守るのマジ守護竜!!》




 ええいやかましいわ、と思いながら、エルは大型化していつもの通り《石壁作成》を唱えてそれを倒して足場にしていく。


 これなら床から罠が発動しても問題はないはずである。


 石壁で植物を踏みつぶしながら進んでいると、突然植物たちがわさわさと動き出し、ぼこぼこと無数の根が床を突き破って襲い掛かってくる。


 どうやら、床に生えていた一見無害な植物は敵対的な吸血植物の擬態であり、本質は根っこでそこから相手の血を吸うタイプらしい。


 次々とエルの肉体へと絡みついてくるが、その程度でエルの肉体を束縛できるはずもない。




『うぉおおお!!我をなめるなぁああ!!ヤローっ!!植物ごときが我を食らうとかふざけるんじゃねー!!』




 太い根っこといっても、彼からしたら細長いツルが絡みついてくる程度の話である。腕を振るうだけでたやすくブチブチと引きちぎられるし、これでは到底縛り付けるとは無理だろう。


 だが、今度はそれだけでなく、壁に絡みついている蔦、テンタクルスまでがエルに対して触手を伸ばしてきたのだ。


 刺胞植物であるテンタクルスは、触手が皮膚に触れると、毒棘が射出されて皮膚に突き刺さって獲物に毒を流し込んで麻痺させる。


 だが、元々鱗という天然のスケイルメイルによって守られているエルに対しては、毒棘など突き刺さずに全てはじき返すし、吸血植物も同様だ。


 鱗に守られていない目や腹などに気を付けながら、次々と二種類の植物の根っこやツタを引きちぎっていく。




「竜様!!援護します!!」




 一方、ユリアやレイアは弓矢やクロスボウを取り出すと、自分の矢に油をしみ込ませた布を巻き付け、火矢にしてエルの周囲の床にある吸血植物や壁のテンタクルスに対して火矢を叩き込んでいく。


 両方とも流石に植物、やはり火には弱いらしい。


 火矢を叩き込まれた両植物はのたうち回っているようだ。




「レイア!ありったけの油と松明を!私が竜様を直接援護に行きます!!」




 スカウトである彼女より、魔法戦士である自分が行ったほうがいいと判断したユリアに対して、レイアは頷くといわれた通りランタン用のありったけの小瓶と、松明を用意する。(ヒカリゴケがあるから使用しなかったものである)


 ユリアは火のついた松明を振って根っこから逃れながら、エルが作り出した床に敷かれた石壁の上を疾走し、エルの傍に近寄ると、その左右の植物に油の入った小瓶を投げつける。




「食らいなさい!!」




 その油を投げつけた場所に火のついた松明を投げ込んでいくユリア。当然、巻かれた油に火がついて猛烈な勢いで火が巻き起こる。


 さらに、もう一本の松明を取り出すと、その火で松明に火をつけてもう片方へと投げつける。


 これによって左右の植物は火炎に包まれることになった。


 流石に両方の植物も炎は嫌がるのか、まるで水が引くように吸血植物の根もテンタクルスもぞぞぞと引いていく。




『よし今だ!!一気に突破するぞ!!《石壁作成》ッ!!』




 その隙を見計らって、石壁作成で一気に道を作って走り抜け、エルや彼女たちは一気にこの階層を突破していった。

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