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第109話 ミストルティン対ティフォーネ2

 目の前の空中に浮かんでいる女性をモニター越しに見ながら、ユリアは彼女をせせら笑った。何がエンシェントドラゴンロードか。そんなもの、この主砲の前では塵芥程度に過ぎない。塵も残さず消し去ってくれる。

 だが、まずは時間稼ぎをしなければならない。ミストルティンの全体から鋭い針が無数に出ると、その針の切っ先から魔力放電が開始され、魔力放電による機体を覆いつくす結界が構築される。

 それを見ながら、腕を組みながら宙に浮かんでいるティフォーネは、不敵にほほ笑む。


「なるほど。まずは小手調べと行きますか。」


その彼女の呟きと共に、空一面がたちまち曇り空へと変貌し、瞬時にその雲の中を雷鳴が響き渡る。そして、それと同時に無数の空からの雷、落雷がミストルティンへと一斉に襲い掛かる。

通常ならば普通に空から下に落ちるだけの落雷は、不自然に落ちる方向が変化し、ミストルティンへと集中していく。

だが、それらの雷撃は、ミストルティンが張った魔力結界により防がれる……が当然ただではすまない。ミストルティンの全身から出ている魔力放出針はあちらこちらから煙を噴き出してショートしていく。


「舐めるな!!主砲発射!!あの女を塵に返してやれ!!」


 その間に稼いだ時間で、ミストルティンの主砲である巨大な光の矢が構築され、光の弦によって引き絞られ、空中に漂うティフォーネに対して射出される。

 人間一人に核ミサイルを放つような愚行。だが、それは相手がただの人間である場合だ。ティフォーネは猛烈な勢いでこちらに迫ってきた光の矢を、片手を前に出して魔力障壁で防御する。

 ミストルティンの主砲である光の矢を真正面から片手で受け止めたティフォーネの片腕の服の裾は力の余力で弾け飛び、彼女の腕の皮膚すらもぴしぴしと罅が入り、そこからバシュ!と音を立てながら彼女の血が噴出する。

 それを見たティフォーネは狂暴な笑みを浮かべながら髪の毛を逆立たせると、瞬時にその白く細い腕はたちまち竜の鱗へと覆われ、指先から凶悪な爪が生える。


「あああああっ!!」


 邪魔だ!と言わんばかりにミストルティンの光の矢を受け止めた、鱗と鉤爪が生えた右腕をティフォーネは乱暴に横凪に振るうと、受け止められ、光球に変化していたそのエネルギーは、あらぬ方向へと吹き飛んでいき、遥か遠くのほうに着弾して猛烈な光と共にキノコ雲を上げて爆発する。

 それがこの国の領域かそれとも隣国に着弾したかは彼女にとってどうでもいい。

 ハハハハハ!ハハハハハ!と狂った哄笑を上げ、まさしく鬼神のごとき狂暴な笑みを見せながら戦いに猛り狂ったティフォーネは叫びをあげる。


「私に数百年ぶりの外傷を与えてくれるとはやってくれる!褒めてやろう!褒美は貴様らヒトカスどもの殲滅だ!!何もかも消し去ってくれる!!」


 外傷を食らい、自らの血を見たティフォーネは完全に狂暴な暴風神としての側面を顕わにした。普段は割と大人しい彼女だが、本来は制御できない自然界の力を象徴する存在である。やるといったら国一つ殲滅するぐらいはやるだろう。

 バチバチと大気中が帯電し、ティフォーネは自らの銀髪のロングヘアーを逆立たせながら凶悪な笑みを作り上げながらミストルティンに戦いを挑もうとする。

 だが、そこでちらりと目に入ったのは、下の森の中を一生懸命走っているエルの姿だった。ティフォーネが囮になっていい感じにミストルティンを破壊し、そしてエルが内部に潜入してユリアを救出する。それが彼女たちのプランである。

 そんな風に森中をえっちらおっちらと健気に走っているエルを見て、頭に血が上ったティフォーネも冷静さを取り戻したらしい。


「……いかんいかん。健気に弟子が頑張ってるのに暴走するのは師匠としてはいけませんね。」


 彼女はそういうと、純白の鱗に覆われ、鋭い鉤爪が存在する右腕を振るうとそれはたちまち雪のように白い元の人間の腕へと変化していく。

 この程度本来の姿である竜の姿を出すまででもない。これでも十分にハンデになるのだ。冷静さを取り戻したティフォーネは、再びミストルティンへと向き合った。 


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