モテたい、切実に
モテたい。
モテたいんだ、切実に。
ボクは小学校一年生の頃から常々そう思っていた。
成績はフツーだし、運動もフツー。
ザ、平凡なオレがモテる訳がないと子供ながらそう達観していた。いや、早すぎるな。
容姿もフツー。
平凡な一般人なボクは足りない頭を働かせた。
そして、結論は。
――――――――女の子が好きそうな事とか全てを極めよう、と。
幼くはあるが、中々極端いうか馬鹿というか。今思えば何でそうなったのかと自問自答したくなるときがある。
とりあえずボクは自分の理想的な女の子のイメージに沿って様々な事をし始めた。
編み物を最初に、親に頼んでピアノも習った。女の子なら髪の手入れもしているだろうし、髪を少し伸ばして髪型の研究もした。それが面白くなって、更に髪を伸ばして三つ編みとかをして、次には持ち物に気を遣った。
ティッシュやハンカチ、絆創膏やヘアゴム、香水や手が荒れない様にハンドクリーム。唇が乾燥しないようにリップクリーム。常に見た目を確認出来る様に手鏡、そして紫外線から肌を守る為の日焼け止め。
中学になれば、親の手伝いをしてお小遣いを貯めてちょっとしたところからオシャレを始めた。加えてお母様に無理言って料理をし始めて今では我が家の台所を預かせてもらってます。うーん、料理たのしぃ♪
…………いや、あのね?
女の子の事を理解したり、実際にしていけば女の子達の話に入れるかなーって。まあ結構そういう下心マシマシだったんですぅ。
勿論、小学校の時はからかわれたさ。けど、ボクはモテたい!女の子達と話したい!あわよくばそれでモテモテになりたい!ってお馬鹿な考えで周りに屈しず、日々努力してきたんですぅ!
ああ、そう言えば性同一性障害と疑われたけど今でも普通に女性しか興味ないよ?
でもね、ふと我に変えるんです。
―――――――――――馬鹿じゃんボク。って。
まあでも、中学校の頃も当初は女のようなことする男――――――通称女男と呼ばれていた。けれど、時間が経つに連れて友達も出来たし、何より相談される事が多くなったのだ。
そう、相談。
内容は、異性に対してだ。
特に多かったのは異性に対してのプレゼント。誕生日プレゼントだったり、バレンタインのお返しなどが大半。まあ一意見として相談していたら好評だったらしく、二年の時にはボクのしている頃にはボクのそれは“ボクらしい”個性として学園生活に馴染んでいった。
そして、ボクは中学を卒業して高校になる。
「…………髪、違和感すごいな」
思わず自分の髪を触ってしまう。
何せ髪を切ったのだ。
卒業式の時にあった腰下まで伸ばしていた髪は、寄付する為に切って今は短くなってる。うん……個人的には短いと思ってるけど、男子からすれば長い方らしい。解せぬ。
まあ髪が短くなって洗うのと手入れも楽だし、何より乾かすのが速くなった!これダイジ。
「あー、きんちょーするなー」
中学時代に髪を切ったのは数回だけど、ここまでバッサリはこれが初めて。一応家から高校は近くて、中学時代の同級生が来てるらしいけど。
「…………ぉ?【歩人】さ?」
「あ、【白兎】」
「おー!髪切ったさ!?イメージかわ………らなんさね。歩人は歩人さ〜」
「白兎も相変わらずですね」
少し語尾に鉛がある高身長でイケメンさん。
中学の頃に仲良くなった【茗荷白兎】。しかも中学の頃に初めて出来た友達。放課後や長期休暇の時はよく遊びに行く仲ではあるかな。
中学の頃から異性にはモテモテの陸上部のエース。昔はピリピリした感じだったんだけど今じゃ大分柔らかくなったね。ボクは嬉しいよ。あの時のままだと同性に目の敵にされてたからね。
「………なんさ、その生暖かい目は」
「いえ。こんなにも好青年になって感動しているんです。最近は納豆とオクラも食べられるようになりましたし」
「そりゃ歩人の飯が美味いからさ〜。今じゃ、暑い時期に歩人のネバネバ丼は絶品さね」
「あーいいですね」
「それに、今日からバイトさ―――――――あ、歩人はバイトするさ?」
「ボクは――――――」
白兎と共にどんなバイトをするのか、部活とかの話をしながら教室へ向かう。
【沢葵 歩人】高校一年生。
下心塗れで、己が抱く付き合うならこんな女子がいいと願望敷き詰めた理想像を実際にやってみた結果、ただ女子力が暴力的に上がり過ぎました。
「モテるかなぁ」
「モテるさ〜」
「ほんとうですか!?」
「主に俺の様な野郎には特にな〜」
「全く嬉しくない……」
モテるかなぁ、モテたいなあぁ。