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親友との再会

階下から微かに聞こえてくる物音で、アダムは目を覚ました。窓には冬用の分厚いカーテンが掛かっているため室内は真っ暗だが、使用人が動き回る気配からおそらく早朝だろうと予想できる。


まだ身体には気怠(けだる)さが残ってはいるが、おそらく身体を動かせば解決するだろうとアダムは判断した。目を覚ました直後であるにもかかわらず、自身の一部が凪いでいることに気付く。だが別の生理的要求はきちんとあるため、アダムはベッドから起き上がってバスルームへと向かった。


『以前は鎮まるまで用を足すのも面倒だったよな。そう思えば、これはこれで便利になったと言えないこともないか』


アダムはひとまずトイレの水を流し、そのままシャワーブースへと向かった。このバスルームには、トイレと浴槽だけでなく、シャワーブースも備わっている。


『乙女の塔は本邸よりも水回りがしっかりしてるな。特にこのシャワーは本邸や王都邸にも設置すべきだろう。いつでも熱いお湯が出るのは本当に便利だし、何より一人で身体を洗えるからな』


ちなみに、普段のアダムの入浴は、侍従に風呂用の湯を運ばせ、湯船に横たわって髪や身体を洗わせている。別にアダムが使用人に傅かれるのが好きだというわけではない。部屋に付属しているバスルームには給湯設備がないため、数人がかりで湯を部屋まで運んでもらわなければならないのだ。運んでくるのは熱湯なので、水で薄めなければ利用できない。だが、髪や身体を洗いながら、流すためのお湯を作るというのはとても面倒なので、結果として誰かに身体を洗ってもらうことになる。


本来、貴族の令息であるアダムの身の回りは、メイドではなく男性の侍従が中心になって世話をする。しかし、乙女の塔に男性の侍従を入れることをサラが認めなかったため、そうした手伝いはゴーレムにやらせることになる。だが、アダムはどうにもゴーレムに身の回りの世話をしてもらうことに慣れなかった。もっとも、トマシーナがゴーレムであることに、まだアダムは気づいていない。お陰でアダムは一人で入浴するようになり、その快適さにすっかりハマってしまった。これまで入浴は面倒だと思っていたのが嘘のようである。


シャワーから出ると、部屋をノックする音が聞こえてきた。アダムが誰何すると、トマシーナであった。アダムは扉を開けてトマシーナを中にいれ、客間のソファに座った。


「おはようございますアダム様。お加減はいかがでしょうか?」

「少し(だる)い気もするが、寝ていたせいで身体がなまっているだけだろう」


会話している間にも、トマシーナはカーテンを開け、机の上に開いたまま伏せられていた本に栞を挟んで閉じ、アダムの手を取って体温や脈拍などを確認していく。


「食欲はいかがですか?」

「普通に腹は減ってるな」

「では朝食をお持ちしますね。今日はパンケーキですが、沢山食べられそうですか?」

「5枚は余裕だ」

「卵はどうされますか?」

「オムレツにできる?」

「もちろんです」

「じゃぁ、それで」

「承知いたしました」


バイタルチェックをしつつも、トマシーナは部屋を出ることなく他のゴーレムを経由して厨房にアダムの要求を伝えていた。


「体温、脈拍、血圧もすべて正常ですね。リヒト様にもそのように伝えておきます。それでは、朝食を持ってまいりますね」

「よろしく頼む」


トマシーナは部屋を出ていくと、5分もしないうちに朝食用のトレイを抱えて戻ってきた。


「お待たせしました」

「いや、全然待ってないよ。相変わらず乙女の塔は意味が解らない」

「そういう場所だと思って頂ければ問題ありません」

「理解できないことを無理に知る必要はないってことを、ここでは常に実感するよ。まぁ今の僕は関係ないことに頭を使う余裕は無いし」

「なるほど。それでしたらお手伝いも可能です。昨夜自習されていた数学の練習問題ですが、問3の答えが間違っていらっしゃいます」

「え? 僕がどんな回答したか見てないよな?」

「先程、心拍数を確認しているときに、机の上に乗っている紙が見えたのです。問題の方はカーテンを開けた後に、該当ページに栞を挟みましたから」

「それだけでわかるのか?」

「はい」

「本当に乙女の塔にいる人間はとんでもないな……」


アダムは深く考えず、美味しく朝食を食べることに専念した。メイドが自分よりも賢い(アダムはトマシーナをただのメイドだと思っている)という事実に少し凹んだものの、マーグも女の子だったことを思い出して落ち着いた。


『僕がダメダメなだけだ。賢い女性に負けたからってなんだっていうんだ。もっと勉強すればいいだけだ』


朝食を済ませたアダムは、トラウザーズとシャツというシンプルな出で立ちで部屋を後にした。いよいよマーグとの顔合わせだ。既に先触れは出しており、あちらも朝食は済んでいるので、いつでも部屋を訪ねてほしいという伝言は受け取っている。


アダムの足取りは重かった。正直なところ、アダムは未だにマーグが女性であったことを信じられないでいた。確かに綺麗な顔をしているとは思っていたが、貴族には容姿が優れた者が多い。しかも、グランチェスターは王室に負けないと言われる程の容姿を誇る一族であることから、アダムはすっかり美形慣れしてしまっていた。


そんなことよりも、アダムは自分の正体が小侯爵の長男であることをマーグに知られたことの方が気になっていた。より正確に言うのであれば、自分の正体を知ったマーグに嫌われることが怖かった。


同じフロアにある客間から客間への移動など大して時間はかからない。しかし、アダムは何度もマーグたちの客間の前をウロウロするだけで、なかなかノックできずにいた。


すると、突然中からドアが勢いよく開いた。


「さっきから足音が五月蠅い! 入るなら入れよ!」


中から顔を出したのはマーグであった。長いストレートのストロベリーブロンドをハーフアップに結い、フリルのついたドレスを着ていても、間違いなくアダムの親友のマーグだ。


「マーグ! お前、身体はもう大丈夫なのか? ミリーは?」

「いや、それはオレの台詞だろ。おまえこそ、あんなに痛めつけられてたじゃないか」

「僕の方は平気だ。治癒魔法で怪我は治ってるよ」

「良かった。本当に良かった。オレたちのせいで、アダムがあのまま死んじゃうんじゃないかって……。助けを呼ぶつもりだったのに、オレそのまま倒れちゃって…ごめんな」

「それはいいよ。マーグも熱病で大変だったんだし」

「とにかく入れよ。じゃなかった。失礼しましたアダム様、どうぞお入りください」


マーグの口調が変わった瞬間、アダムの背筋に再び恐怖が戻ってきた。丁寧な口調のせいでマーグ(親友)に線を引かれてしまった気がしたのだ。マーグたちの客間ではメイドの代わりに司書用のゴーレムがお茶をサーブしてくれたが、マーグがゴーレムに人払いを指示したため、この場にはアダムとマーグだけが残された。


アダムはマーグに促されるまま部屋に入ってソファに座ったものの、なかなか口を開くことができないでいた。言いたいことは沢山あるのだが、何から話して良いのかがわからないのだ。


「えっとさ、アダム。今まで黙っててごめん」


沈黙を破って先に口を開いたのはマーグであった。


「男の子のフリをしてたこと?」

「うーん。それもそうだけど、そもそもラドフォード子爵の娘だってことかな」

「親が横領の罪を犯したってことはちゃんと教えてくれてたじゃないか」

「でもさ、父上と兄上は横領の主犯だ。グランチェスター本家からしてみれば、領の危機を招いた敵だと思う」

「ちょっと待って! マーグは僕がグランチェスター本家の人間だって知ってたの!?」

「それは考えればわかるだろ。さすがに普通の平民たちには無理だろうけど、一応オレは貴族だったわけだし、会ったことは無くてもアダムがグランチェスターの子供なのはわかるよ。そのくらいの年齢だと該当するグランチェスターの男子はアダムとスコットだけだし、そもそもオレはスコットと顔見知りだからね。だいたい偽名も使ってないしさ」

「そうか…」

「なんでコーデリア先生の私塾に通ってるのか知らないけど、先生のことを尊敬してるのは伝わってきたからね。正体を隠してでも先生の教えを受けたいなら黙っておこうって思ってたよ」

「ありがとうマーグ」


アダムは安心したように、にへらっとマーグに向かって微笑んだ。


「僕はてっきり小侯爵の長男だってことがバレたら、マーグには嫌われるって思ってたよ」

「逆ならわかるけど、オレがアダムを嫌う理由なんかあるか?」

「マーグの父上や兄上は、本家が嫌いだって聞いた。それに、僕はずっと身分のことを黙ってたじゃないか。騙してたみたいで申し訳なくて」

「言わなかっただけで騙してはいないだろ。そんなことで嫌ったりしないよ」

「良かった。だったら、これからも僕と友達でいてくれるか?」

「おい、アダム! オレの今の姿をよく見ろよ。なんか言うコトあるだろ?」


マーグは立ち上がり、アダムに見せつけるように両手を広げた。


「えっと…そうだな。本当の髪の色ってそんな感じだったんだ。とても綺麗だと思う。でも、ドレスのフリルは少ない方がマーグには似合うと思う。それ、クロエの趣味だよな」

「そういうコトじゃなくて、オレは女で、横領犯のラドフォード子爵の娘なんだぞ」

「別にマーグが男でも女でも関係ないよ。頭が良くてカッコいい僕の親友だ。それに、マーグの父上や兄上が罪を犯したとしても、それはマーグが悪いってことにはならないだろ。それともマーグは僕が小侯爵の息子だったら友達じゃないっていうのか?」

「普通に考えろよ。オレとお前じゃ立場が違い過ぎるだろ。お前は将来、グランチェスター侯爵になるんだぞ!」


はぁはぁと肩で息をしながら、マーグは一気に捲くし立てた。


「マーグ、まず落ち着いて座ってくれないか。たぶん、僕たちはいろいろ話し合いが足りてない気がするんだ。お互いに黙っていたことが多すぎる。僕の勘違いじゃないなら、僕らは親友同士なんだろ?」

「あぁ勘違いじゃない。オレはそう思ってたし、今でもそう思ってる」


マーグがソファに座りなおすと、アダムはふぅっと大きく息を吐き出した。


「まずさ、僕が将来グランチェスター侯爵になれるかどうかはわからないんだ。僕はコーデリア先生に会うまで、本当に怠惰でどうにもならないヤツだったんだ。この歳になってもアカデミーの試験に落ちまくってたし、ワガママばかりで勉強もせず、贅沢に遊び回ることばかり考えてた」

「それは意外だね。アダムは熱心な生徒だと思ってたから」

「さすがにアカデミーにも入れないような奴を継嗣に据える気はないと、祖父様にハッキリ言われてるんだ。だから、次の試験が事実上、僕が将来の侯爵になれるラストチャンスってことになる」

「えっ! そんな重大な人生の岐路に立ってるのか?」

「完全に自業自得だけどな」


ふとアダムは遠い眼差しで、窓の外に目を遣った。


「こんなこと話すとマーグに嫌われるかもしれないけど、僕はサラを殺しかけたんだ」

「えっ?」

「故意ってわけじゃない。その頃の僕は鼻持ちならない貴族の下種野郎だったから、グランチェスター家に引き取られたサラをイジメたんだよ。平民の癖にって」

「え、あのサラを? アダムよく生きてたね」


マーグは、彼女が一瞬だけ見せた怒りの威圧を思い出してぶるりと震えあがった。


「僕がサラを池に突き落としたから、彼女は魔法を発現したんだ」

「あぁ、命が危険に晒されると魔法を発現しやすいって聞いたことあるよ」

「池に落ちた彼女を見て怖くなった僕は彼女を助けなかったし、イジメがバレるのが怖くて助けも呼ばない卑怯者だったんだ」

「確かにそれは最低だな。サラが無事でよかった」

「この件をサラは絶対許さないって言ってるし、僕も許されるとは思っていない」

「お前らって、そんな険悪な関係だったのか? そんな風には見えないんだけど」

「サラに言わせると『それはそれ、これはこれ』なんだそうだ」

「なんだそれ」

「彼女は利のためなら敵とでも手を組むと言い切ってたよ。なんとなく、僕とは器が全然違う気がするんだ。僕に将来の侯爵なんか無理って、何度も打ちのめされてる最中ってとこかな」

「ふむ」


マーグはこてんと首を横に傾げ、やや思考に耽った。


「話を総合すると、すげーイヤな奴だったアダムは、サラの実力に打ちのめされて、その器のデカさに惚れたから心を入れ替えたってことになるのかな? まぁ確かにサラは美少女だし、好きになるのは仕方ないよな」

「待て待て。確かにサラは美少女ではあるが、中身はかなり残念だぞ。惚れるとかは絶対に無い。スコットがサラに惚れてる理由が僕にはさっぱり理解できない」


慌ててアダムはマーグの勘違いを否定した。


「へぇ、スコットはサラに惚れてるのか」

「昨日もデートに誘ってたぞ。二人で出掛けて行ったしな」

「じゃぁ二人は付き合ってるんだ」

「たぶんスコットの片思いだと思う。サラに惚れてる男はいっぱいいるけど、サラはジェフリー卿に夢中なんだ」

「あはははは。確かにジェフリー卿は超絶カッコいいからね!」

「マーグ、お前もか」


アダムはやれやれといった風情で、小さくため息をついた。


「改めて思ったけど、マーグもちゃんと女の子なんだな。口調はそのままでいいの?」

「うーん。アダムの前では男言葉に慣れちゃったけど、本当は少し無理してるかも」

「好きなように話していいよ」

「ありがとう。アダム。……様を付けるべき?」

「それはやめてくれ。なんだか遠くなっちゃう気がするんだ。王都では貴族の友人がたくさんいるって思ってたけどさ、親友って呼べるヤツは一人もいなかった。マーグに会ってよくわかったよ」

「アダムは全然貴族っぽくないね」

「それもサラのせいだな。ちょっと前まで、本当に僕は貴族至上主義のイヤなヤツだったんだ」

「ソレ自分で言う?」

「間違いを認めるなら早い方が良いからな」


アダムとマーグは顔を見合わせてくすくすと笑った。


「サラってすごいね。まだ8歳だよね?」

「実年齢は確かにそうなんだけどさ……」

「言いたいことはわかるわ。私の髪を元に戻してくれたのもサラだもの。この塔の持ち主だってことも聞いたわ」

「サラはいろいろ規格外なんだよ。僕の怪我を治療したのもサラなんだ」

「規格外とかいうレベルじゃないと思うのだけど」

「考えるだけ無駄だ。そういう存在だと思うしかない。それと、サラ自身は隠してるけど、おそらくサラとソフィアは同一人物だ」

「へ? 待って待って。ソフィアってソフィア商会の会長のソフィア様?」

「うん」

「だってソフィア様は大人の女性でしょ?」

「サラには沢山の妖精の友人がいるんだ。理屈はわからないけど、たぶん魔法で姿を変えているんだと思う。けど、サラが自分で言わない限り聞かないでおこうって、僕たち家族は全員で決めてるんだ」

「ってことは小侯爵一家も知ってるってこと?」

「うん。おそらく祖父様やロバート叔父上は知ってると思う。偶然にしては、彼女たちの言葉はあまりにも似通っているし、そもそもソフィア商会を動かしていることをサラは僕たちの前では隠さないから」


マーグはソファの背もたれにどさっと身を預けて、天井を振り仰いだ。


「確かに規格外だわ。ソフィア様に会うことを凄く期待してたのに、まさか既に会ってたなんて……ちょっとショック」

「サラが残念で?」

「もっとこう、神秘的な女性を想像してたのよ」

「その神秘的な女性とやらは、自ら剣を振り回して暴漢を退治するんだが?」

「素敵よねぇ。手合わせしたい!」

「……マーグも剣術を嗜んでるの?」

「ちょっとだけね。父上も兄上も大反対したのよ。手がゴツゴツしちゃうし、嫁の貰い手がなくなるって。だけど、母上がこっそり習わせてくれたの」

「どうりで僕より喧嘩が強いわけだよ。そういえば、サラは早朝に剣術の訓練をしてるらしいから、マーグも参加させてもらえば良いんじゃないか?」

「一緒にやりたいなんてわがまま言って嫌われないかな?」

「嫌わないと思う。手合わせの相手がほしいはずだし。けど、サラはドレスを着たまま剣を振るうぞ」

「え、そうなの?」

「うん。ドレスのまま自由に剣を振るうことができるようになりたいらしい」

「カッコいい!」

「しかも双剣で独自の流派を確立する勢いだぞ」

「入門したい!」


うっとりとした眼差しのマーグを横目で見つつ、アダムは少しだけ頭痛を感じていた。


「なんだろう。グランチェスターって女性が強くなる場所なのかな」

「エレナ様のこと?」

「大伯母様のこともそうだけどさ、マーグやサラはグランチェスターの女性だからね」

「うーん。グランチェスター男子がヘタレだから、フォローするために強くならざるを得ないんじゃ……」

「否定できないな」


にへらっと笑ったアダムを見つめたマーグは、意を決したように発言した。


「よし決めた。私は小侯爵の養女になるわ」

「へ?」

「アダムって誕生日いつだっけ?」

「4月10日だ」

「私は8月15日だから、私が妹になるわけね」

「ちょっと待って。養女ってどういうこと?」

「ありがたいことに、グランチェスター家は私とミリーを保護してくださるそうなの。それで、小侯爵かロバート卿のどちらかの養女になるように言われているのよ」

「そうだったんだ」

「だから、私は小侯爵一家の養女になってアダムをサポートする。まずはアカデミーの試験に協力しないとね。親友で義兄のアダムがちゃんとグランチェスター侯爵になれるよう、私は全力で応援するわ」

「僕は嬉しいけど、マーグの将来はどうするのさ」

「私はソフィア商会で働きたいな。将来的には、グランチェスター家とソフィア商会を繋ぐ役割を担えれば最高。やりがいのある仕事だと思う」

「それでいいの?」

「それがいいのよ。アダムがアカデミーを卒業して未来の侯爵夫人と結婚しても、小姑っぽくならないよう外できっちりお仕事するわ」

「マーグは結婚しないの?」

「そうだなぁ…好きになった相手が私を望んでくれればすることもあるかもね。でもラドフォード子爵を継いでくれる人は、ミリーの旦那さんでいいかなって思ってるの。あの子のあざと可愛さで、優秀な男子をメロメロにしてもらおうかなって」

「ははは。確かにミリーならやれるかもね」


マーグはすっと立ち上がり、アダムに向かって優雅にカーテシーをきめた。


「アダム義兄様。今後ともよろしくお願い申し上げます」


アダムも立ち上がってボウアンドスクレープを返し、マーグの手を取って軽く指先にキスをした。


「よろしく。僕の麗しい義妹さん」


そして目を合わせた二人は大きな声で笑い出した。


「あはは。私たちって最高の親友で、最高の兄妹ね」

「そうだな」


二人はちょっぴりお行儀が悪いと分かっていながらも、ハーブティの入ったティーカップをカチリと合わせて乾杯し、冷めた中身を一気に飲み干した。


どうやらアダムとマーグは親友を失うことなく、新しい兄妹を手に入れることになったようである。

えっ! ちょっとまって。君たち、お友達枠でいいの? (作者困惑)

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― 新着の感想 ―
今はこの関係とても素敵だと思います。 将来的にそれが恋愛に発展しても無二の親友かつ義兄妹のままでもどちらも悪くないと思うし。 ただ、ママはちょっとロックオンしてる感じだからずっと親友路線で行きたいなら…
そう遠くない将来に、「あの人は親友、あの人は親友」と互いに悶々とするのも乙なものでしょう?
この作品には恋愛より圧倒的に友情を求めているので、むしろGJという感じです!
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