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第8話 全 て 敏 捷 性 に

 俺たちは再び、ダンジョン100層の扉の前にやって来ていた。


「ということで作戦名【ゴリ押し】の決行が決まった」


 結局、俺たちが選択したのは、一気呵成に黄金の林檎を回収する作戦だった。


「本当に俺で大丈夫なのかなあ……」

「自信を持たれよ。私の授けた剣技とイツキ殿の潜在能力があれば必ずや成功するはずですぞ」


 作戦の概要はこうだ。超スピードで中に突入して一気に回収する。それだけだ。


 俺はこの作戦のために、ダンジョン攻略で獲得したテイムボーナスを振り分けることにした。

 現時点で判明した。テイムボーナス獲得の条件は以下の通りだ。


 ・スライムの場合、初めてテイムする種に限る。

 ・10層から50層までの魔獣から得られるボーナスは5、60層から70層は10、80層から90層は30、100層は50。

 ・ダンジョンボスから得られるテイムボーナスは各階層につき一回だけ。


 ということだ。

 今回のダンジョン攻略で、既に105ポイントのテイムボーナスが溜まっている。



【ステータス】

HP:111

MP:102

力:32

守備:25

魔力:12

魔法耐性:22

敏捷性:104→209

振り分け可能テイムボーナス数:0



 俺は溜まりに溜まったボーナスを全て敏捷性に振ったのだ。


 全 て 敏 捷 性 に 。


【スキル】

《剣聖:E》

《疾風の翼:E》

《超再生:E》


 そして、この作戦を確実にするための要素がスキルだ。

 俺は《スキルリンク》によってテイムした魔獣のスキルを継承することが出来る。

 それぞれリビングデッドのランスロット、ペガサスのヴェントス、ヒーリングスライムのリンリンから継承したスキルだ。


 習熟度は高くないために、スキルランクは低いが《疾風の翼》で毒をギリギリまで防ぎ、《剣聖》の身のこなしでアルラウネの攻撃を凌ぎ、万が一毒などでダメージを食らっても《超再生》で致命傷を避け、あとは極限まで上昇させた敏捷性に任せて最速で黄金の林檎を奪取するという筋書きだ。


「旅人にこんな危険な役目を任せて申し訳ない」


 フローラが深々と頭を下げる。


「いや、この組み合わせは俺にしか出来ないから、仕方ない。適材適所ってやつだ。無事に帰ってこられるように祈って欲しい」

「うん……ありがとう」


*


 さて、扉が開かれた。相変わらず奥のアルラウネが暴れており、毒の瘴気を振り撒いている。


「じゃあ、行ってきます」


 俺は意を決して地面を蹴る。すると……


「うぉおおおおおおおお!?!?!?!?」


 あまりに早すぎて、アルラウネを通り越して壁に激突した。


「敏捷性200越えの世界ってこんな感じなんだな」


 漫画とかアニメで、強キャラが一瞬で姿を消して一瞬で背後に現れるみたいなシーンがあるが、実際にあんな感じで移動できるのだ。


「しかし、今のでコツは分かった。林檎林檎っと」


 俺はアルラウネの浸かっている毒沼を見回す。

 幸い、ヴェントスのスキルが効いているので、毒の影響はない。


「え……?」


 そこで、俺は意外な姿を見掛ける。


「ホシナさん……」


 クラスで唯一俺のことをかばってくれた星奈静流さんが、アルラウネのツタに宙吊りにされていた。その手には黄金の林檎が握られていたが、毒の瘴気を吸ってしまったのか、かなり苦しそうな表情を浮かべている。


「っ……!!」


 俺は一瞬でツタを切り落とし、ホシナさんを抱えて、アルラウネから距離を取る。


「大丈夫、ホシナさん?」

「けほっけほっ……」


 様子の確認をするが、激しい咳を繰り返すばかりだ。


「とにかく治療しないと……」


 俺は迫り来るアルラウネのツタを振り切り、ボス部屋の出口へと大急ぎで向かう。


*


「ピューイ、ピュイピュイー!!」


 扉の外に出ると、リンリンが状況を察したのか、ホシナさんの全身を包み込むようにまとわりついた。本当にこいつは賢くて気の利くやつだ。

 全身から緑の癒やしの魔力が注ぎ込まれ、やがてホシナさんが意識を取り戻す。


「はぁ……はぁ……こ、ここは?」

「ボス部屋の手前だ」

「イ、イツキくん……? どうして? あなたは確か……」

「まあ、こうして無事に生きてたわけだ。それよりもありがとう。その林檎がどうしても必要だったからな」

「あ……」


 俺はホシナさんが林檎を握る手をそっと持ち上げる。


「ハセガワくんが引き受けないからって、一人でダンジョンに挑むなんてな。危ないことをする……」

「そうだね。でも、病気で苦しんでる人がいるって聞いてなんとかしないとって思って。ちょうどダンジョンの魔獣もみんな倒されてたから」


 昨日、俺たちが入った直後に、潜ったってわけか。

 それにしても、本当にお人好しな人だ。クラスで浮くかもしれないのに、俺のことをかばおうとしたし。


「とにかく、しばらく休むといい。毒で体力をごっそり持って行かれてるだろう?」

「うん……」


 ホシナさんはゆっくりと頷くと、目をそっと閉じた。


「よし、これで材料は揃った」


 黄金の林檎は依頼品だが、まずはアルラウネの浄化を済ませよう。彼女を助ければ、きっとその礼に分けてくれるはずだ。


*


「う、うぅ……」


 調合した《豊穣神の涙》を毒沼に注ぎ込むと、あっという間に浄化が始まり、アルラウネは正気を取り戻した。

 これまではあまりじっくりとは見ていなかったが、サラサラとした緑髪の実に美しい女性だ。


「あなたたちは?」

「お、お初にお目に掛かります、地母神様。わ、私は、このイストミアの領主の娘でフローラと言います」

「そう、あなたが……」

「俺は冒険者のイツキだ。その様子だと、身体は大丈夫そうだな」

「ええ、どうやら沼の浄化をしてくれたのね。ありがとう」

「っ!?」


 アルラウネが俺をそっと抱き寄せた。


「ま、待て息が」


 その豊満な胸に包まれ、俺は動転する。これが、アルラウネ流のお礼なのか?

 役得だが、少し恥ずかしい。


「このダンジョンに封印されてから、ずっとこの土地のために浄化してきたけど、あんなものを投下されて本当に焦ったわ」

「ああ、あれはよそから来た冒険者の仕業でな。フローラ達のせいじゃないんだ。どうか、恨まないでほしい」

「そうだったのね。お姉さん、てっきり街の人達に嫌われちゃったのかと思って、悲しかったのよ」


 随分とおっとりとした人物のようだ。


「それよりも冒険者さんがあの薬を調合してくれたのよね。本当に感謝してるわ。なにか、お礼して欲しいことはある? 私に出来ることならなんでもするわ」

「ああ、それなら……」


 その時、アルラウネの身体が光り出した。


「あら? あらあら? これはどうしたのかしら?」

「テイムの光だ」


 俺はテイムの準備が完了したこと、テイムをすればこのダンジョンから抜け出せることを彼女に伝える。


「そうなの。まさか、そんなことが出来る人がいるなんて……ぜひお願いするわ!! ふふ、テイムの知識はあるから手順は大丈夫よ。私の名前はフレイヤよ」

「分かった。汝、フレイヤの力と献身を。その対価として汝の幸せを約束しよう。汝、契約に応じるか?」

「ええ、もちろん」

「それじゃ、契約の誓いを……」


 俺は右手を差し出して、契約のキスをしてもらおうとする。すると……


「ん!?!?!?」


 フレイヤは俺の両頬に手を添えて、そっと唇を寄せてきた。


「ふふ、これでどうかしら?」

「な、なな、た、旅人殿、地母神様になにを……」

「心配しないでフローラちゃん、これはテイムの儀式に必要なことなのよ」

「そ、そうなのですか?」


 いや、唇じゃなくてもいいんだけど……てか、やば、アルラウネめっちゃいい匂いした。

 あんな美人とキスできるなんて、テイマーになってよかった。


「イツキさん、鼻の下伸びまくりです」

「そ、そそそんなことないですよ」



【基本情報】

名前:フレイヤ

種族:地精族

性別:女性

レベル:160

【ステータス】

HP:450

MP:950

力:70

守備:120

魔力:200

魔法耐性:240

敏捷性:90

テイムボーナス:50

【スキル】

《土魔法:S》《浄化》《豊穣の加護》



 ともかく、新たに心強い仲間を得るのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒット&アウェイで、相手を倒すって事ですね、わかります。 というか、もっと貯めたら、流石に他にも振るんだろうけど、敏捷性に振りまくったら、通り過ぎるだけで攻撃出来ますよね? 勇者との差が…
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