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第7話 ドラゴンを倒すためにドラゴンキラーが欲しいのに、ドラゴンからドロップする素材を要求されるかのごとき理不尽さ

 撤退した俺たちは、一度《魔獣ホテル》に戻って、ダンジョンボスの対処法を練ることにした。


「地母神というか邪神じゃないか」


 ダンジョン100層に居たのは、目を血走らせながら毒の瘴気を振り撒く禍々しいアルラウネであった。


「こ、こんなはずでは……一体どうして」


 フローラが頭を悩ませている。話によると、アルラウネはずっとこの地域を守ってきた存在らしいので、それがあの様に暴れているのを見たら、混乱もするだろう。


「一体どうしてもなにも、あの毒沼のせいなんじゃないか?」

「アルラウネが浸かってたものですよね?」


 ちらっと見ただけだが、あのアルラウネは苦しんでいるように見えた。

 エールが無理矢理閉じ込められていたように、あのアルラウネも冒険者を試すためにわざと暴走させられているのではないだろうか?


「ということで、方針は決まったな」

「方針……? 旅人にはなにか計略が?」


 フローラが小首をかしげる。俺は自分の考えを彼女に説明することにする。


「ああ。あのアルラウネが苦しんでいる原因を取り除く。最近になって起こり始めた地震とあのアルラウネ、無関係じゃないと思う。それなら、あの神殿に悪影響を及ぼす原因があるんじゃないか? なにか心当たりはないか?」

「……分からない。でも、一つ関係があるとすれば、礼拝堂だと思う」


 フローラに連れられて、俺はホテルの外へ出る。


*


 案内されたのは、街の側にある森林に置かれた小さな礼拝堂であった。


「ここは私達が生みだした混沌の闇を封印する場所にして、地母神による浄化が行われる場所」

「ゴミ捨て場って事か?」


 フローラに案内されて礼拝堂の奥の扉を通ると、地の底へと続く巨大な穴から毒の瘴気が漏れ出ていた。


「うおっ……」


 あまりの臭気に鼻が曲がりそうになり、俺は慌てて扉を閉じる。


「今までここからゴミを投棄して、アルラウネに浄化してもらってたのか……原因それじゃね?」


 アルラウネの浄化許容量を超えたゴミが投棄され……考えられそうな話だが。


「そ、そんなはずない。地母神の力は偉大、我々程度の生み出す穢れを受容するぐらいの力は持っている」

「それなら、あれだ。最近急にゴミの量が増えたとか」

「……ゴミ。もしかして、あれかも」


 フローラにはなにか心当たりがありそうだ。


「今から随分前、彷徨の戦士達の一団が街にやって来ていたわ。深淵の魔の研究者達が生みだした失敗作を放棄したいとかなんとか言っていた。父は断ったから、すぐに返ったと思うけど。たしか《白竜の顎》とかいう帝都の冒険者ギルド」

「ハセガワくんたちじゃねえか!!」


 思わず大声で突っ込んでしまった。

 そういえば、ハセガワくんと一部のクラスメイト達がイストミアに用があって遠出しているという話を聞いたような気がする。

 どうやら、魔術研究の失敗作の破棄に来ていたようだ。


「本当に申し訳ない……」


 俺は身内の不始末を詫びる。

 まあ、今となっては身内でもなんでもないのだろうけど、それでも申し訳なさが募る。


「どうして、旅人が謝るの?」


 フローラが不思議そうに首をかしげる。俺は、元々そのギルドに所属していたことなどを軽く説明する。


「そういうことなの。でも、追い出された旅人が詫びる必要はないわ。聞けば、随分な仕打ちを受けたみたいだし」


 まあ、結論から言うと殺されかけたわけだし。

 なんで、そんなハセガワくんの代わりに謝罪しなきゃいかんのかとは思うが、現に異世界の人に迷惑を掛けてしまっているので、そこは分けて考えるべきだろう。


「そういってくれると嬉しいよ。だけど多分、ハセガワくんは、警告を無視してここに投棄したはずだ。そういう性格だからな。だから、俺が責任を持って浄化するよ」


 どうすればいいのかは分からないが、色々と方策を考えてみよう。

 聖水みたいなのを礼拝堂の穴から投げ込むとか、水を浄化する魔獣をテイムするとか、色々できそうなことはあるだろう。


*


 それからしばらく、俺たちはアルラウネのいる神殿を再攻略していた。

 目的は二つ、アルラウネを浄化するための魔獣を探すこと、もう一つはそしてテイム数を稼ぐことで、スマホの新たな機能を解放するためだ。

 100層のボスを除いて、各階のボスは一度撃破するかテイムするかすると、その顔ぶれを変える。

 一度目の攻略とは違った面々をテイムしながら、俺たちはダンジョンを進んでいた。


 ――新たな機能《アイテム工房》が解放されました。


 よし来た。ダンジョン60層のボス、クイーン・ビーをテイムした直後、スマホが通知を出した。これはなにやら使えそうな機能だ。


「なになに、どうやら俺が知っているアイテムであれば、MPと素材を消費して生成できるようだな」

「旅人は本当に不思議なものを持っている。その《聖遺物》はどこで?」

「ダンジョンの100層を攻略した時に手に入れた。ここの奥にもあるかもな」


 さて、あとは浄化に役立ちそうなアイテムの知識を得る必要があるのだが、俺は仲間達に心当たりがないか尋ねる。


「……父の所有する《アカシックレコード》にアクセスすれば、なにか分かるかもしれない」

「なら、その書斎から、本を借りてきてもらってもいいだろうか?」

「イツキさん、どうしてそんなに、すらすらフローラさんの言葉が分かるんですか?」


 なんでだろう。根が中二病だからなのか。


*


「なるほどなあ……こりゃハードモードだ」


 さて、フローラのおかげで、汚水の浄化に有効な《豊穣神の涙》という秘薬の精製方法が分かった。

 しかし、そこには大きな問題があったのだ。


「黄金の林檎が必要になるなんて、困りましたね」

「ああ。一回、あの毒まみれの空間に突っ込まなきゃいけないんだよな」


 ドラゴンを倒すためにドラゴンキラーが欲しいのに、ドラゴンからドロップする素材を要求されるかのごとき理不尽さだ。


「とりあえず、作戦を練るか。黄金の林檎さえ手に入れば、あとの素材はどうにでもなるからな」


 それから俺たちは、アルラウネの偵察や情報を集め、なんとか黄金の林檎を奪取する算段を企てるのであった。

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