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第6話 す、凄い、金鉱石の山だ……

「なに、なにかしら? この茶色の液体……銀器を動かす手が止まらないわ」


 先ほど拾った金髪の少女が夢中でカレーをかき込んでいく。

 よほどお腹を空かせているのか、あっという間に平らげてしまった。


「見ず知らずの私を拾っただけでなく、聖餐まで頂けるなんて感謝するわ。もう一杯いただけるかしら」


 思ったよりも図々しかった。まあ、別にいいんですけどね。


「ねえ、イツキさん。この方は?」

「さあ、外でお腹を空かして瓦礫に埋もれていたから連れてきた」

「歳はイツキさんよりも、少し下ぐらい? とても可愛らしい人ですね」


 確かに、言葉遣いはさておき、気品のあるお嬢様だ。所作も優雅で、貴族の出なのは間違いないだろう。


「それで、一体あそこでなにしてたんだ?」

「大地の意志が邪悪なものに変わった時、我が魂の故郷は哀れな塵芥と成り果てたわ」

「……? どういうことですか」

「地震が起きて、街が崩れ去ったって言いたいそうだ」

「なるほど」


 街跡で出会った老人も同じようなことを言っていた。

 ここしばらくの間に、この地方では大規模な地震が起きていたようだ。


「私はこの地を再生したいと思い、方策を探っていた。しかし、新たな大地の怒りが迫り、たまたま側にあった建物の崩落に巻き込まれた」

「それはさっき聞いたな。でも、またどうして地震が? 元々、ここは地震が多い地域なのか?」

「否。そうだったなら、ここに我が祖先が居城を建てるはずがない」


 それもそうだ。現代日本と違って、土地には恵まれているのだから、地震頻発地域に城なんて作らないだろう。


「元々この地域は、地母神の守護を受けた豊かな土地であった。大地の怒りなど、起ころうはずもない。というか、私も地震初めて。こわかった」

「地面が揺れるなんて怖いですもんね。よしよし」


 エールが少女の頭を撫でる。少女はその気持ちよさにとろんとした表情を浮かべている。

 というか、地震か。慣れた俺でも怖いし、地震に馴染みのない異世界人なら、その恐怖は相当なものだろうなあ。


「しかし、気になることを言ったな。地母神っていうのは?」

「ダンジョンに眠るボスモンスター、アルラウネ。昔からこの土地を支えてきた」


 エールなんかは一方的にダンジョンに閉じ込められていたが、お人好しなボスモンスターもいるんだな。


「その地母神の加護があるなら地震なんか起こるはずがないと。ということは、その地母神になにか起こったのか?」

「恐らくは……でも、私ではダンジョンの最奥になんていけるはずもなく……確かめる術はない」


 そりゃそうだ。ダンジョン深部の生還率は1%以下だ。

 目の前の可憐な少女一人で、簡単に100層までいけるはずがない。


「なるほどな。なら、俺たちが様子を見てこよう」

「旅人達が?」


 今回俺が受けた依頼は、アルラウネから黄金の林檎を採集することだ。

 元々、100層に行くつもりだったので、それぐらいお安い御用というわけだ。


「で、でも、ダンジョンなんて危険なところ、あなた達だけで向かわせるなんて……」


 妙な口調も鳴りを潜め、少女はストレートに俺たちを心配してくれる。


「大丈夫だ。これでも既に80層まで潜ってるからな。なんとかなるはずだ」

「そうなの? 見かけによらず随分と腕が立つのね?」


 まあ、俺の力じゃないけどね♪


「ということで、明日早速行ってみようと思うんだが、どうする?」

「どうって、付いていってもいいの?」

「もちろん。地母神と話をする時も、スムーズにいくかもしれないしな」

「感謝する、旅人よ。そういえば、名前を尋ねてもいいかしら? 私はフローラ・エル・オルディスよ」


 俺達はフローラに名を名乗る。


*


 ということで、俺たちはダンジョンの90層に潜っていた。


「ウルゥ……」


 ペガサスは翼をしまうと、深く一礼した。


「うぬぅ……ギリギリの戦いであった……」


 90層でペガサスが要求したのは一騎討ちであった。

 別に、無視して数で押しても良かったのだが、彼らは誇り高い種族だ。

 彼らの信頼を得て、テイムを成功させるには、こうするほかないのだ。


「お疲れ、ランスロット。本当にありがとう」


 格上の相手だというのに、ランスロットは一騎討ちを買って出て、見事にこれを制した。

 そのおかげで、俺はユニコーンのテイムに成功した。



【基本情報】

名前:ヴェントス

種族:翼馬族

性別:雄

レベル:94

【ステータス】

HP:432

MP:792

力:67

守備:73

魔力:147

魔法耐性:152

敏捷性:136

テイムボーナス:20

【スキル】

《疾風魔法:S》《疾風の翼:S》



 とりあえず、風を意味するラテン語をあててみた。

 内のメンバーの中でも特に、魔法攻撃に優れているので、エールと双璧を為すアタッカーになれそうだ。


「あ、あの……イツキ殿、今のは?」

「ん?」


 フローラが目を丸くさせていた。なんだか、とんでもないものを見たような表情だ。


「ど、どうしてボスモンスターのテイムを? ボスモンスターは誰もテイムが出来ないはず……」

「さあ、俺にはなぜか出来るみたいだ」


 確かに、ボスモンスターがテイムできるなど聞いたことがない。テイムのスキルを得てから、俺も一通りテイマーについて調べたが、ボスモンスターだけはテイムできないと、どの本にも書いてあった。

 とはいえ、俺だけ使える【ラスボステイム】のおかげで異世界生活も実に捗っている。


「俺にも理由は分からんけど、とりあえず先に行こう。この力があれば、100層まで安全に下りられるはずだ」


*


 そして、100層に俺たちは到達した。目の前には重厚で大きな扉が立ちはだかっている。


「この先にアルラウネか」


 一体、どんな姿なのだろうか。ゲームなどでは比較的穏やかな気質で描写されている気がするが。


「イツキさん、下がっててください。念のため、私が開けます」


 エールが先陣切って扉に手を触れる。

 この中ではもっとも戦闘力が高いだけに頼もしい。

 ゆっくりと扉が開かれていく。エールの時は、普通の洞窟が広がっていたが、この先にはなにが待っているのだろうか。


「これは……」


 扉の向こうは目映いばかりの黄金の空間であった。


「うおっ……す、凄い、金鉱石の山だ……」


 一般的に鉱石に混じる金の割合は極めて少ないが、目の前にあるのはほとんど純金の世界であった。


「こ、これだけ、あれば大金持ちですよ、イツキさん」

「ああ。まさか、この世界で一攫千金の夢が叶えられるとは……」


 なんとか、持って帰りたいが、その前にアルラウネはどこに居るのだろうか。


「っ……!! イツキ殿、方々、下がられよ!!」


 突如、ランスロットが叫んだ。

 俺は即座に、後ろに下がると、禍々しい紫の煙が奥から放出された。


「ウルゥウウ!!」


 ペガサスが咄嗟に前に出た。そして大きく翼を広げると、結界のようなものが展開されて瘴気が遮られた。


「アアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


 同時に女性の悲鳴のようなものが響いてくる。見ると、毒々しい色の泉の中で、美しい緑髪の女性が苦しんでいた。


「こ、これはどういうこと? 地母神が猛ってる」

「分からないけど、危険な感じだ。一回、逃げるぞ」


 俺はペガサスの結界を盾に、全員に撤退の指示を出す。

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