第4話 おめでとうございます。スキル継承が完了いたしました。
イストミアの街は瓦礫と化し、今日泊まるところにも窮する俺だったが、スマホのおかげで一夜の宿を得ることが出来た。
「その魔獣にあった快適な部屋になるって話だったけど……」
俺にあてがわれたのは、ありふれた男子高校生の自室であった。
青いシングルベッド、32インチのテレビ、愛用のノートパソコン、ゲーム機、マンガ、ラノベ、俺が想像する現実世界のものが再現されていた。
「はは……なんだよ、これ。まさかこんな部屋になるなんてな」
確かに、それは俺が最も欲しがっていた部屋であった。
叔父夫妻は、両親の遺産目当てで俺を引き取った。体面を気にする人達なので、餓死しない程度に食べさせてはくれたし、衣服も最低限のものを用意してくれたが、基本的に学費や小遣いを払うことはなく、暗い物置に置かれたボロベッドだけが俺の居場所であった。
だから、憧れていたのだ。自分の好きなものを置けて、誰にも侵されない自分だけの城というやつに。
「おまけに冷蔵庫やキッチンまでついてるなんて、さすがに豪華すぎだな」
この部屋だけで生活に必要なものは一通り揃いそうな勢いだ。
「キッチンはともかく、父さん達が生きてたら、こんな部屋に住んでたのかな……なんて、今更言ってもどうしようもないよな。異世界で折角、手に入れた自分の城だ。ここは堪能させてもらおう」
驚くことに、ここに再現された娯楽類、すべて実際に使えるようだ。
――東山高校2-Aの生徒達が謎の失踪を遂げてから、一年が経過しました。賢明な捜索にもかかわらず、手がかりは未だに見つかっていません。
「へぇ、俺たちニュースになってるのか。それに、時間の経過は異世界と現実も一緒みたいだ」
――血のつながりこそありませんが、それでも実の息子のように思っておりました。
「ぷっ……叔母さん、心にもないこと言ってるなあ。あんたにそんな人間らしい心なんてあるわけないだろう」
自分を物置に押し込めた叔母が、世間の同情を集めているのを見ておかしくなってくる。きっと、ああして涙を流す振りをしているだけで、かなりのお金が入ってきてるのではないだろうか?
「検索かけたら、俺を探すためにクラウドファンディングなんてやってるよ。本当にお金儲けがうまいな」
高額転売、怪しい情報商材、叔母は金を稼ぐためにはどんなことだってやる人間だ。恥も外聞もなければ、法に触れないギリギリの範囲であくどいことをやっている。
俺はそんな叔母をある意味で尊敬していた。
「まあ、あの人達のことはいいや。そろそろ、あいつらにご飯をあげないと」
魔獣の世話も俺の務めだ。俺はスマホを取り出す。
「そういえば、このアプリ。リンリン達の部屋に入れたりはするのだろうか」
――可能です。《魔獣リフレ》の機能もお試しください。
「おっ、また新しい機能だ。なになに……」
俺は新しく開放された機能で出来ることを探ってみる。
「どうやらご飯を上げたり、一緒に遊んだり、撫でたりすると、ステータスが上昇するみたいだな」
素材さえ揃えれば、魔獣用のフードも自動で作ってくれるみたいだし、早速利用してみよう。
*
「ピュイピュイ!!」
「ウォウッ!!」
一通り、魔獣達にご飯をあげ、撫でたりぷにぷにしたり、毛繕いしたりと、それぞれの望むようにスキンシップをかわすと、俺は次の仲間のところへと向かう。
「おお、これはイツキ殿。どのようなご用件で?」
「ご飯の時間だ。それに折角、仲間になったランスロットと色々交流しようと思って」
「それは立派な心がけですな。臣下の腹を満たし、信頼関係を築くのも将たるものの務めですからな」
そんなに立派なものじゃないけどな。
「ところで、リビングデッドってなにを食べるんだ?」
「基本的に、食事は不要ですな。瞑想すれば魔力も補充できますので」
「ということは、この魔獣フードも魔力補給に役に立つんじゃないか?」
俺は魔獣フードを手渡す。
「魔力を持った鉱石を削り出した、特製のスパイス入りだ」
「ほう。それは楽しみですな。食への欲求は失えども、食への興味は尽きぬのが人というもの」
ランスロットは満足そうにフードを口にする。食への興味が残っているなら、エールのように人の食事を振る舞うのもいいかもしれない。
「さて、さっきまでリンリン達と遊んでストレスを発散させてきたんだが、ランスロットはなにかやりたいことないか?」
「それなら一つ」
ランスロットが俺に長剣を差し出した。
「まさか、鍛錬の相手とか……」
「いや、私の剣技を継いで欲しいのですよ。子に恵まれず、己が剣技を残せなかったのが未練でしてな」
それって、応じたら成仏しちゃわないか?
「無論、イツキ殿に忠誠を誓っている身。勝手に逝くことはしませぬ」
「そういうことなら」
俺はしばらくの間、ランスロットの厳しい修行に耐えるのであった。
「今日はここまでにしましょう。あまり、主に無理をさせるものではない」
「ぜぇはぁ……剣を振るってこんなに大変なんだな。俺には向いてなさそうだ」
「とんでもない。イツキ殿には才能があります。このまま鍛練を積めばきっと、私を超える剣士になれるでしょう」
「本当かな……」
――おめでとうございます。スキル継承が完了いたしました。
俺が疑問に思っていると、スマホから音声が響いた。
「スキル継承?」
俺はスマホで自分のステータスを確認してみる。すると……
【基本情報】
名前:クズハライツキ
種族:人間
性別:男性
レベル:23
【ステータス】
HP:111
MP:102
力:28
守備:23
魔力:12
魔法耐性:22
敏捷性:99
振り分け可能テイムボーナス数:75
【スキル】
《スライムテイム》《ラスボステイム》《テイムボーナス》《スキルリンク》《剣聖:E》
おお、確かにランスロットの持っていた《剣聖》のスキルが身に付いている。
そういえば《スキルリンク》なんてものもあるがもしかさて、これのおかげで、テイムした魔獣のスキルを手に入れることが出来るのだろうか?
ステ振りに続いて、魔獣のスキルまで手に入るなんて、すごいな。
「今後も主殿が望めば、稽古をつけるので、遠慮なく頼ってくだされ」
俺はランスロットに感謝を伝えて、自室へと戻る。
「さて、次はエールのところか」
まてよ……エールとはどんなスキンシップをすればいいんだ??
ランスロットみたいに稽古……って感じじゃないよな。
リンリンやゲイルみたいになでなでしたり、ぷにぷにしたり、毛繕いしたり……!?
「なな、なに考えてるんだ」
ふと、以前彼女と交わしたキスの感触を思い出す。
「正直、エールってかなり可愛いよな」
見た目の年齢は俺と同じくらいだが、同世代の中では飛び抜けて美人だ。
髪は綺麗だし、スタイルもいいし、声も聞いてて落ち着くような可愛らしい声だ。
「なんだか、急に緊張してきた」
こんな部屋をもらったからか、まるで同級生の部屋におじゃまするかのような気分になってしまった。
「で、でも、エールのご飯もどうにかしないといけないし、放っておくわけにはいかないよな!!」
俺は心の中で言い訳しながら、エールの部屋へと足を踏み入れるのであった。
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