大きなお皿にギッシリと並んでいるおにぎり
寒い、お腹空いたな、パンの袋を嘗めても、もう、味も匂いもしない。
水も無い。
外に行ければ何か食べられるかも知れないし、水も飲めるかも知れない。
でも、鎖で柱に繋がれ檻に閉じ込められているから此処から動けない。
ママが言うあっちに行くのかな?
行くのはいいけど、あれをもう一度食べたいな。
この家に来たばかりの頃、ママが檻の鍵を閉め忘れたからママがいないとき外に出てみる。
外は暖かくて眩しい物が上の方で光ってた。
「坊や、何処の子だい?
これ食べるかい?」
白い髪の痩せた女の人が差し出してくれた白くて丸い物、味はしょっぱかったけどいい匂いがして仄かに甘かったあれをもう一度食べたいな。
「この家だよ! 子供が虐待され閉じ込められているかも知れない家は」
あれ? あの女の人の声がする。
家のドアが数度叩かれた後、鍵が開けられる音がしてママ以外の誰かが入って来た。
「大変だ! 救急車を要請しろ」
誰かが遠くの方で叫んでいるのが聞こえたあと何も聞こえなくなる。
目を覚ましたら暖かくて厚い布に包まれていた。
此処がママが言ってたあっちなのかな?
回りを見渡したらピンク色の服を着た女の人が目に入ったから聞いてみる事にする。
「あの、此処は………………」
最後まで言えなかった。
女の人は此方を見てから部屋の外に飛び出して行き大声で叫んだから。
「先生ー! あの子が目を覚ましました」
女の人が叫んだら部屋に白い服を着た男の人やピンク色の服を着た女の人が沢山詰めかけて、身体のあっちこっちを触られた。
お腹空いたって言ったら、女の人が白いべちゃべちゃした物を少し食べさせてくれる。
胃が小さくなっているから少ししか食べちゃ駄目なんだって。
上の方で光ってた物、太陽って言うのと夜って言うのが十数回入れ代わった後、あの白い髪の痩せた女の人が部屋に来て聞いて来る。
「坊や何か食べたい物はあるかい? 言ってごらん」
「あのね、出会ったとき貰った、あの丸くて白くていい匂いがして甘い、あれが食べたい」
「そんなので良いのかい、分かった、握って来るから待ってな」
リハビリを済ませ部屋に戻って来たら白い髪の痩せた女の人が待っていて、白くて丸くていい匂いがして仄かに甘いあれがギッシリ並んだ大きなお皿を差し出して来て言った。
「此れはおにぎりって言うんだよ。
沢山握って来たから、たんとお食べ」