03 死んでしまうとは情けない
『おお、七条よ。死んでしまうとは情けない。」
「うぁ….」
目を開けるとそこは病院の天井ではなく、白い空間でもなく、青空だった。かといって車の走行音がするわけでもなく、波の音も聞こえない。
取り敢えず俺は起き上がった。周りを見てみるとそこは近くに森のある草原だった。ひとまず俺はひとつの疑問を口にした。それに、なんだか身長が縮んだ気がしたので、自分の身体を少し見てみた。
「なんだこれ?」
下を向いたとき、肌色の双丘が見え、己のおいなりさんが消滅しているのを確認すると共に顔に髪がかかった。おかしい。俺は髪が短かったから顔にかかる事は無いはずだ。付け加えて双丘が見えると言う事はつまり俺は女体化してしまったのだろう。、、、俺に例のテンプレは発生しないぞ。
まぁ、ここは天国かなにかだろう。そしておれは天使に生まれ変わったのだろう。それならば今こうして性転換して、わけのわからない場所に素っ裸で放り出されているのにも説明がつく。なれば、羽がないのは惜しいな。一度空を飛んでみたかった。
いや、それよりも、、、
「誰だ?」
俺が目を覚ます時、頭の中で声が聞こえたのだ。俺が誰何するとすぐに頭の中で声がした。
『私は.....神とでも名乗っておくよ。』
「なんだ?今の間は。」
『そんな事どうだって良いさ。それよりも、君は自分がどの状況に陥っているか理解しているかい?』
「理解しているよ。確か俺はトラックにぶつかって死んだんだっけ?」
『その通り。私が死んだ君をここまで連れて来たんだ。』
あ、俺は死んだんだな。
『達観してるねぇ。普通はもっと驚くんだけど。』
と、頭の中の声はため息を吐いた。
「それより、ここは何処だ?」
『ここはアルテラ。君からすれば異世界さ。ここには剣や魔法もあって、魔物もいる。それと、ここは田舎だから周りに何も無いけど、地球と文明はそう変わらないよ。強いて言えば君がやってたゲームに近いかな。』
俺は神があのゲームを知っていることに少し驚いた。
「へぇ。って事は車やビル、スマホやテレビ、パソコンなんかもあるわけだ。そしてあのゲームと似たようなって事は魔物に土地を侵略されていて、それを奪還しようとしてるわけだ。」
『その通り。理解力がある人は嫌いじゃないよ。ただひとつ違うのは、魔物と戦う人を育てる学校が存在する事かな。』
「その情報を俺に伝えるって事はつまり俺にその学校に行けという事か?」
『その通り。君はあのゲームで相当な実力者らしいからね。この世界を救ってあげて欲しい。どうだろうか?』
「ああ、良いよ。他に行くとこもやることも無いんだし。」
『助かるよ。差し当たってこの世界の事について説明するね。
さっきも言った通りこの世界はアルテラ。そしてここはナナリア。実を言うとここはまだ奪還されてない土地なんだ。あ!安心して。君が心配するような事は起きないよ。結界を張ってるからね。
君にはここらにいる魔物と戦ってほしい。なにぶん君はだいぶ生前の姿とはかけ離れた容姿をしているらしいからね。』
「そういや、俺はなんでこんな姿になってんだ?そして何故裸なんだ?そんな事よりも俺に素手で戦えと?」
『容姿が変わっていることと服が無いのは私には分からんよ。君の容姿と装備の担当は私の部下に任せていたから部下の趣味だろう。というより、容姿が変わっていることがそんな事よりもで済むんだ。』
「当たり前だろう?命あっての物種だ。容姿が変わる事よりも生死に関わる方が気になるのは正常な反応だ。」
『そうかい。取り敢えず服を含めた装備については後で渡すから先に進めるよ。
まず、『ステータス』と唱えて欲しい。口で言っても心の中で唱えてもいいよ。』
俺はさっそく「ステータス」と唱えた。