1 イジメはいけない事だよなぁ
「悪りぃ、10円貸してくんね?」
俺こと七条彩葉は唯一のダチである足立武蔵に足りないお金を要求した。
「いや、すまん。これしかないわ」
そう言って武蔵は指を二本立てて横に振った。
これは『いま札しか持ってない』アピールである。
俺は別にお金を持ってない訳ではない。ただ、自販機で160円の物を買おうと財布を開いたら二人の諭吉さんがそれぞれ菊と桜の花を持っていただけである。
「はぁ、ついてねぇな.....ん?」
大人しく130円の缶ジュースを買おうと小銭を自販機に入れようとしていたら視界の端で内気そうな生徒が2.3人の生徒に連れてかれる所が映った。
「悪りぃ、ちょっと用事を思い出した。」
俺は○○にそう言ってさっきの生徒を追った。生徒たちが向かった場所には体育館倉庫があるが、それだけだ。さらに現在は6校時が終わってすぐなのだ。見た感じ用具を持っていなかったから倉庫に用事があった訳ではないだろう。とあれば必然的に浮かび上がってくるのが『カツアゲ』の線だ。
『カツアゲ』 名前だけ聞くとなんとも美味しそうな名前だと思うだろうが、実際は底辺に属する強弱のフリをした弱者が己より弱き者を脅し、金品を搾取するものだ。
別に俺は正義の味方でもヒーローでもない。今回だって視界に入っただけならば助けに行こうとしなかっただろう。目が合ったのだ。連れて行かれる生徒と。彼の目がこう語っていたのだ。「助けて」と。
流石にそれを無視できるほど俺は腐ってない。
「おらぁ!」
体育館倉庫に着いたのだが、遅かったようだ。内気そうな生徒が暴力男たちに殴られていた。さらに一人ボスっぽいやつがどこから持って来たのか、角材を振りかぶっていた。流石にあれを喰らうと危ないので俺は振りかぶった角材を掴んで止めた。
「何やってんの?お前ら。」
「あ?誰だおまえ。」
角材を掴まれた暴力男Aは蹴りを放ってきたため、バックステップで避ける。
「邪魔すんじゃねぇよ!」
周りにいた暴力男BとCが殴りかかってきたため、一人には拳を、もう一人には蹴りをお見舞いした。
「おらぁっ!」
残った暴力男Aは角材を振り回して来たが全て躱し、腹パンで沈める。
「大丈夫か?」
「へ?あ、あと、えと、その、ありがとうございます!」
「気にすんな!それより、さっさと行こうぜ。SHRが始まっちまう。」
そう言って俺は暴力を振るわれていた生徒を連れて教室へと戻った。
その姿を暴力男Aが沸々と煮え滾っている目で見ていたのだが、俺はそれに気づかなかった。
思いつきで始めた事だから書いたとこまで載せるけど続かんかもしれん。