表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

アンタが気に入らない。

その頃、優香の家では愛子が半狂乱になっていた。

「優香ちゃん!どこにいるの?黙って出かけるなんて!それに明日は算数のテストでしょ!」

水晶玉に映し出された、目を吊り上げて一人で叫ぶ愛子の様子を見てクローネは意地の悪い笑みを浮かべた。

「この母親、ちょっと懲らしめてやらないとね。」

クローネの魔法があれば、優香を連れ出した時間に帰らせて、何もなかったことにもできるが、あえてしばらく不在の時間を作ることにした。そして場合によっては優香を帰さないつもりだ。

「せめて一晩は様子を見るとするか。」


翌朝、クローネは屋根の上にいた。屋根の下ではヒステリックな声が聞こえている。愛子は憔悴しきっているかと思いきや、まだテストの心配をしている。

誘拐の可能性を考えていないことは、一目瞭然。警察の張り込みらしい人物も車もいないのだ。

「今日は大事なテストだっていうのに!」

「ますます気に入らないね。警察にすら連絡していないようだ。娘の安否はどうでも良いのか?」

さて、と立ち上がると屋根をすり抜けて愛子の前に姿を現した。

「優香は預かっているわよ。」

「だ、誰よアンタ?」

「名乗るほどの者じゃないね。アンタみたいな母親が気に入らない女とでも言っておこうかしら。」

クローネの口調は、優香に対するそれとは比べ物にならない厳しい口調だった。愛子に対する怒りがこもっているためだ。

「はあ?どういうこと?警察呼ぶわよ!」

「警察?まだ連絡していないのかい?小学生の子供が一晩帰らないのに?」

「私の勝手でしょっ!」

「呼びたければ呼ぶといい。アンタが頭がおかしくなったと思われるだけだよ。他の人にはアタシが見えないんだから。」

「とにかく!優香を帰してちょうだい!テストなのよ!」

「帰してやってもいいけど、アンタにも条件を飲んでもらうよ。」

「私の娘なのにどうして条件をつけられないといけないのよ!だいたい、帰してやってもいいけど、って何様のつもり?」

「当然だろ。アンタが条件付きの愛情しか与えられないんだから。」

「そんなことないわ!」

「嘘つきめ!100点を取らないと愛せないんだろう?」

「だって、成績が良い方が先生に可愛がられるのよ?いいところにお嫁に行けるのよ?その方が幸せじゃないの。子供の幸せを望んで、何がいけないのよ!」

条件についての話がどんどん横道に逸れたまま、愛子がヒートアップする。

「違うね。アンタが望むのは娘の幸せじゃなくて、見栄を満たすことさ。アンタが愛しているのは世間体さ。」

「そんなこと、ないわよ!」

愛子は否定する。いや、否定したいのだ。

本当は優香が良い成績を取ってこないとイライラする。しかし娘のためだということにして、見栄という気持ちを封印しているだけなのに、それに気づかないふりをしているのだ。


「ふふん。送り込んでやる。」

そう言ってクローネが指をパチンと鳴らすと、愛子は歪んだ空間に引き込まれた。

「なにコレ~?」

「本の中に直送してあげるわ。」

パニックする愛子にクローネが言うと、愛子はそのまま本の中に送り込まれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ