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見つけた。

優しい魔女が子供を隠す。

怖い魔女が大人を隠す。


どんな子供が隠されるかって?

どんな大人が隠されるかって?


それは魔女が決めること。


じゃあ、どこへ連れていかれるの?


それは魔女が決めること。


魔女クローネが水晶玉を見つめている。そこにはある家の様子が映し出されている。

「ククク。見つけた。あの子、連れていっちゃおう。」

クローネは、子供を自分の世界に連れていく魔女。どんな子供を連れていくのかって?それはクローネが決めること。


映し出されているのはヒステリックな女をあげる母親の愛子と、うなだれる小学三年生の女の子、優香。

「80点ですって?ねえ優香ちゃん、こんな点数を取る子はママ、嫌いよ。ママは100点を取る子が好きなの。」

「じゃあ、100点取ったら、私のこと、叩かない?ハグしてくれる?」

「もちろんよ。学級委員をやる子も好きよ。」

「じゃあ、また次も学級委員やるね!」

「まあ素敵!」

その声を聞いてクローネはますます愉快そうにしている。

「バカな親だこと。」


クローネはさっそくある家に向かった。そして屋根の上に座ると、手鏡を覗き込んだ。

「さてと、ご対面の前に身だしなみをチェックしなくちゃね。魔女が、しわくちゃのカギ鼻の婆さんばかりと思われちゃたまらないからね。ヨシ、今日もバッチリだわ。」

真っ黒なドレスに真っ黒なとんがり帽子。カールされた長い漆黒の長い髪。丸くて大きな目に長いまつげは髪の色に負けないくらいの漆黒。唇と長い爪は血の色を思わせる赤。すうっと筋が通って尖った鼻。魔女にしては爽やかな風貌である。


「かわいそうな子。アタシが幸せにしてあげるわ。母親を忘れるくらいにね。」

赤くて長い爪を陽に当てながらニヤニヤしている。


「どうしてママは100点を取った時だけ優しいの?」

屋根の下から悲しげな声が聞こえ、クローネが二階の部屋を覗くと、優香が部屋で涙ぐんでいる。

「さて、お迎えに行きましょ。」

すっと壁を通り抜けて部屋の隅に立つと、クローネは優香に話しかける。

「ねえ。優香ちゃん、アタシと来ない?」

女の子はビックリしている。

「だだだ、誰?」

ドアも窓も閉まっているはずなのに、どうして?クローネが現れたことで優香はパニックしている。

「クローネっていうの。おばちゃんって呼ばれるのは好きじゃないから、クローネでいいわ。魔女よ。」

「い、いや、あの、…窓、ドア…。」

「魔女ですもの。壁を通り抜けるくらい余裕よ。」

「マ、ママ…。変な人が…。」

「お待ちなさい。大きな声を出すと、あなたが大声で独り言を言っていると思われるだけよ。他の人にはアタシの姿は見えないし声も聞こえないんだから。それから、変な人じゃなくて、クローネ。」

助けを呼ぼうとする優香を制止してクローネは続けた。

「ク、ローネ?」

「そう。クローネよ。あなたは100点を取ったり、学級委員をして、楽しい?」

「でも、ママが…。」

「ママのためにそんなことをしていて、楽しい?」

黙って首を振る優香を見て、クローネはニッコリ微笑んだ。

「じゃあ、決まり!少し旅に出ましょう。」

そう言って指をパチンと鳴らすと優香は眠りに落ちた。クローネは優香を抱き上げると壁の向こうに姿を消した。

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