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29話

俺たちは酒を飲み、他愛のないことを話し、笑いあった。はたしてどれだけ飲んのだろうか?

ヒラガもカレンも酔いつぶれ、俺のベットと寝息をかいていた。


「酒強いんだな。以外…でもないか。」


俺はチューハイを片手に、ベッドの上に寝ている奴らに甲斐甲斐しく布団をかけているタジマに話しかける。


「父がお酒強いんです。その影響かもしれません。」

「へえ。」


気のない返事をしながら、俺はチューハイを傾ける。

アルコール度数だけが売りのそれは、うまくなかったが、俺の気を強くするだけ力はあったらしい。


「どうして…。」

「?」


俺は自分が思っていた疑問をタジマにぶつける。俺の問いにタジマは不思議そうな顔浮かべていた。


「どうして言わなかったんだ?」

「何がです?」


酔っていた頭は回らない。それでも踏み込まずにはいられなかった。


「俺と寝たっさ。カレンに…ヒラガでも構わないが…どうして言わなかったんだ?」

「その…言ったはずです。私はスドウさんに優しくしてもらえればそれでいいんです。…別に…そのカレンさんと別れてほしい訳じゃ…」

「それじゃあ…。」


しどろもどろに言い訳をするタジマを眺めながら、俺はどこか感情が冷えていくのを感じる。


「それじゃさあ、俺でなくてもよかったんだ…タジマはさ。」

「違います!私は…。」

「たまたま俺に優しくされたから、それだけの理由だったんだろ?」

「それは…。」


言葉に詰まるタジマ。そんな様子には気にも留めず俺は言葉を続ける。


「何がタジマの琴線に触れたのか、俺にはよくわからない。…でも、俺はタジマにそこまで思われるようなことはしてないだろ?」


タジマは何も言い返してこない。何も言い返せるわけないだろ?…期待するなよ。


「適当な逃げ場が欲しかったんだろ?慰めてほしかったんだろ?…だったら辞めてくれよ。」


タジマは何も言わない。それでも俺は口を閉じることはできなかった。


「…嬉しかったんだよ。俺は…初め…お前に必要にされたことは…。」


気持ち悪い…吐き気が止まらない。飲み過ぎたのだろうか?俺は口を閉じることができなお。


「なのに…それなのに…。ひどいだろ?…ひどいじゃないか?彼女と別れなくてもいいなんて、それじゃ…違うだろ?俺は…必要とされたかたんだ。俺みたいな…どうしようもない人間でも…誰かは…誰かは必要としてくれんじゃないかって…。」


自分でも何を言いたいかよく分からないまま、感情のままに開く口だけは止らない。


「私にはスドウさんが…何を言っているのか、全ては理解できません。だけど…」


タジマは俺に近寄ると、そっと俺を抱きしめる。俺は抵抗もできず、ただなんだかとても泣きたい気持ちになった。


「…俺嬉しかったんだ。…高校受験に失敗して、家族とうまくいかなくて、それでカレンともうまくいかなくて…。そんなダメダメな俺だけどタジマは俺を必要だと言ってくれて…。」

「そうだったんですか。」

タジマは俺の背をやさしくなでてくれる。それがたまらなかった。


「俺は…何を…どうしたらいいか…どうしたらいいのか分からないよ。両親にはどう接したらいいか分からない。カレンは…俺を好きだと言ってくれたからなんとく付き合った…それだけなんだ…。深く…考えてなかたんだ。俺は…。」


一度せきを切ったら、後は止められなかった。俺は支離滅裂に言葉を吐き出す。タジマ辛抱強く俺の言葉に耳を傾けてくれた。

それが嬉しかった。


「ごめんなさい。私嘘を言いました。」


どれほどの時間が経過しただろうか?一方的にしゃべていた俺は疲れ果て、横になろうとしたとき、タジマは静かに俺に語りかけてきた。


「スドウさん。いいえメノウ…さん。私と付き合ってくれますか?たとえ…カレンさんと別れたとしても。」


俺はこの問いに…。


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