21話
カレンに呼び出された俺は、待ち合わせの喫茶店に入る決心がつかず。店の周りをウロウロしていた。
こんな悪あがきをしても、意味がないことは分かっている。
例え、今日会うことを断ったとしても、いつかは顏合わさなければいけない時が来る。
いつまでも逃げ続けることはできない。そんなことは分かっている。だけど
(そんなに簡単に割り切れるかよ)
カレンに会うと決めたときから胃のあたりがきりきりと痛む。気のせいか吐き気までしてくる。
理性的に考えればストレス性の胃痛ってやつか?どうやら、浮気した直後に平気な顔して彼女に会えるほど、俺の神経は図太くないようだ。
なんて勝手な罪悪感抱いているのだろう。こんなことならタジマと寝なければよかったのだ。だけど、
(アイツが悪いんだ。)
タジマの言動にどうしようもなく苛立ってしまった。傷つけてたまらなくなったから、我慢できなかった。
彼女と別れなくてもいいが、優しくして欲しいだなんて。
それじゃ。
(誰でもいいってことだろ。)
必要とされていると思った。頼りにされていると思った。
俺だからこそ、タジマはつらい状況を打ち明けてくれているのだと。
俺と同じようにつらい状況を誰にもせず苦しんでいるのかと思ったのに、
(アイツは違ったんだ。)
タジマは俺とは違う。ただ同情してほしかっただけだ。つらいんだね。分かるよみたいな安っぽい言葉が欲しかっただけなんだ。都合のいい逃げ場所が欲しかったんだ。本気じゃなかったんだ。俺じゃなくてもよかったんだ。誰でもよかったんだ。
彼女と別れてほしいって言ってくれれば、俺だってあんなことしなかったのに。
自分だけを選んでほしいと言ってくれれば。俺だって…。
(なんだよそれ、それじゃまるで、俺がタジマのことを…。)
自らの頭によぎった考えを、あわてて振り払うとスマホを取り出す。
いつまでウジウジと考えてもしょうがない。店に入れないなら、相手に来てもらえばいいだけだろ。
スマホを操作し、カレンにメッセージを送る。
急な予定が入ったから、行けないと。