精霊のお手伝い
更新遅くなりました。
クローゼットの外も暗くなり、二階からの物音も聞こえなくなってからリンはそっと出てきた。
『キラキラおうじさま、ねたのかな?』
日中クローゼットの中は暇だったのでリンは、アルロンドや精霊達の呼び名を決めていた。
アルロンドは絵本の王子様と金髪から〈キラキラおうじさま〉
暗闇を明るくする光の精霊は灯りのようだから〈あかりちゃん〉
飛び回る風の精霊はふーふーと息を吹きかけて笑わせてくれたから〈ふーちゃん〉
人魚の水の精霊は水で動物をつくって遊んでくれたから〈みずちゃん〉
髪が炎のようにメラメラしている火の精霊は震えるリンを暖めてくたから〈ポカポカくん〉
朝に林檎をくれた木の妖精は〈りんごちゃん〉
と呼ぶようにした。
クローゼットから廊下へ出ると、光の精霊が足元を照らしてくれた。昨日掃除した浴室を覗くと、使わなかったのか綺麗なままだった。リンはリビングとキッチンのどちらを掃除するか迷ったが、僅かに異臭がし始めたキッチンを選んだ。薄暗い中、リンは椅子によじ登りテーブルの上を見ると、食べかけのパンはカビていて、フルーツも変色し、何の食べ物かわからない物が異臭を放っていた。
『ごみばこ、どこかな?』
キッチンを見回すがゴミ箱らしい物は見つからず、リンははじめから掃除が滞ってしまい困った。
『とりあえず、ゴミあつめよう』
床に落ちていた紙袋を広い、ゴミを集め始めるがテーブルはリンには大きすぎた。椅子に登っても端まで手が届かず、一つ登ってゴミを集め、届かなくなったら降りて。隣に登ってはゴミを集めを繰り返した。椅子6個分登り降りを繰り返すと、リンの息は上がってしまい、ヘトヘトになった。床に座り込んだリンを精霊達は心配そうに見つめる。水の精霊が額を撫でるとひんやりして気持ちが良かった。
『ありがと、みずちゃん………これ、どうしよう?』
息が落ち着くと、今度は集めたゴミをどうしたらいいのか悩んでしまう。リンがんーんーと悩んでいると、火の精霊がゴミの入った紙袋と床を交互に指差した。
『…ゆかにおくの?』
リンの問いに火の精霊が頷いたため、リンは床にそっと置く。火の精霊がパチンと指を鳴らすと、紙袋は一瞬で燃え上がり、塵も残さず消えた。
『……え?』
一瞬の出来事に驚いたリンはポカーンと口を開いたまま焼け跡もない場所を見た。火の精霊はニヤリと笑いリンを見た。
『ポカポカくんがしたの?』
リンの問いに対して火の精霊は部屋の隅にあったホコリを、また指を鳴らし一瞬で燃やして綺麗にしてくれた。火の精霊はどや顔でリンを見ると、リンは目をキラキラさせて
『すごい…ひをつかってもかじにならない、ゴミきれいきれいになる……ポカポカくん……ちがうアニキだ!』
今までと違う反応で火の精霊は首をかしげた。リンにとって火を使っても火事にならない事は尊敬する事柄だった。
『まえ、てれびでみたの、かっこよくて、たよりになるおとこのひとを、アニキっていうの!』
カッコイイ、頼りになると言われた火の精霊は髪の毛が真っ赤に燃え上がった。リンにポカポカ君と呼ばれるのも悪くなかったが、アニキはかっこよくて、更にいい!火の精霊がニヤニヤと嬉しそうにしていると、他の精霊達が少し不満そうに見ていた。人間なのか精獣なのかはっきりしない存在だが、魂が優しくキラキラしていて精霊たちはそばにいたくて仕方がなかった。その上、ガリガリに痩せており、食べ物をあたえるもほんの少ししか食べられず倒れてしまわないか心配であった。フラフラの体でこのゴミ屋敷を掃除するならと、自分の属性を使い手伝っていた。名前をつけて呼んでくれた時の、小さな笑顔が可愛くてますます守りたくなった。火の精霊がカッコイイ、頼りになると言われている姿を見ると羨ましくて悔しかった。その日から更に精霊たちは競うように自分の方が役に立つとリンの手伝いをするようになった。
その後、食器を運ぼうとするもお皿2枚持つだけで腕がプルプルして重く、お皿を持つと両手がふさがり、リンは椅子から降りれなくなった。
『どうしよう…』
リンが椅子の上でオロオロしていると、手からフワリと食器が浮き上がった。
『ういてる?』
リンが不思議そうにしていると、風の精霊が目の前をフワフワと浮いていた。精霊が生み出した小さな風が、食器を浮かしていた。
『ふーちゃん?』
リンの問いに風の精霊は嬉しそうに頷いて、食器を指差して首をかしげた。
『おさらはあらいばに置いてくれる?』
リンが洗い場を指差すと、風の精霊はテーブルに残った食器と洗い場を交互に指差した。
『…え?こっぷもできる?』
リンが首をかしげると、風の精霊は風をおこしてテーブルの上の食器を全て浮かした。浮いた食器は小さくカチャカチャと音をならしながら、全て洗い場に移動した。
『うわ~すごい!ふーちゃんありがと!』
手を叩いて喜ぶリンに、風の精霊は嬉しそうにビュンビュン飛んで見せた。リンは洗い場の前に椅子を引きずって運び、登ってみた。
『んー、とどかない』
背伸びをしても、爪先立ちをしてもリンの手は食器にとどかなかった。すると、木の精霊が椅子をトントンと叩くと、木製の椅子から芽が出て、蔦が延びて絡まりあい、リンを持ち上げるように一段高くなった。
『これならとどく、りんごちゃんありがと』
スポンジを持ち、いざ洗おうとするも今度は蛇口が届かず、水の精霊が指先から温かいお湯を出してくれた。風の精霊がトロリとした洗剤を容器から出して、スポンジにのせた。
『みずちゃん、ふーちゃんありがと。きれいきれいにできる』
リンは嬉しそうにスポンジを泡立てて食器を洗い始めた。小さな手で大きな食器を持って洗うため、リンは一つ一つ丁寧に割らないようにゆっくりと洗った。
リンが全てを洗い終わる時には窓から朝陽が射し込み始めていた。
『おわった…けど、ふくがびちゃびちゃ…』
お湯がはねたり、お皿が落ちないように抱えるように持ったり、腕から伝ったりとリンが着ているTシャツはぐっしょりと濡れていた。
『…どうしよう、きがえない』
光の精霊が持ってきたタオルで拭いても、Tシャツは濡れたままで少しひんやりしてきた。
『くしゅん』
体がブルッとしてリンはくしゃみがでた。風の精霊と火の精霊が力を合わせて温かい風をリンに当てると、髪や服が乾いていき、体もポカポカしてきた。
『ふーちゃん、アニキありがと……でも、ねむい』
一晩中食器を洗い続け、リンは疲れて眠り始めてしまった。温かい風はそのままリンを包むように吹き、軽い体を持ち上げてふわりふわりとクローゼットに向かって移動した。
次回、新キャラ出ます。




