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黒猫ちゃんちょっと思い出す

更新遅くなりました。



リンはお腹がいっぱいになり、ゆっくりと船をこぎ出したためヨハンがそっと壁際にあるソファーに横にした。ガジールが柔らかい膝掛けをかけてあげた。アルロンド達は食事が終わり、リンを見に行くと顔を埋めるように丸くなって眠った。


「リン、疲れたならベッドで寝ようか。」


アルロンドがリンに声をかけると、浅い眠りだったのかリンは目を擦りながら頭を起こした。


『…リン、ねてないお…』


瞼が開かないのか、首をかくかく揺らしながらリンは訴えたが、その姿に皆は苦笑した。


「リン眠いならきちんと寝たほうがいいぞ。寝ないと大きくなれんからな。」


フィリップは揺れるリンの頭を優しく撫でた。


「そうだね、今日はこのままの休んで明日の朝にでもお風呂に『おふろはいる‼』はいろっか?」


リンはお風呂と聞いて、ぱっちりと目が覚めて飛び起きた。寝てると思ったリンが目をキラキラさせ、尻尾をブンブンと揺らし嬉しそうな姿にジェームズはクスクス笑った。


「リンはお風呂が好きなんだね?」


『リン、おふろすきー!あわモコモコで、いいにおいする。ポカポカになる!』


「リンは猫の精獣なのにお風呂が平気なのか?」


『リン、せいじゅーわかんない。おふろはすきだよ?』


ケットシーなどの猫科の精獣はみなそろって体が濡れるのを嫌がるためフィリップとジェームズは驚いたが、リンが好きならいいだろうと納得した。リン達が談笑していると、食堂の隅に控えていた若い茶色の髪のメイドが歩みでてきた。


「旦那様、リン様の入浴を私達でお手伝いいたします。」


「ふむ、リンは体が小さいし手伝いが必用か。リン、彼女はうちのメイドで……リンどうしたんだい?」


ジェームズがメイドを紹介しようとすると、顔色を悪くし、カタカタと震えるリンが目を見開いてメイドを見上げていた。メイドも可愛らしいリンが自分を見て怯えている姿にショックを受けていた。


「リンどうしたんだ、具合が悪いのか?」


フィリップの問いに返事もせずメイドから目が離せないリンの前にアルロンドが入り込んだ。アルロンドはニコニコと微笑みながら、リンの頬を包むように両手を添えて、自分と目が合うようにした。怯えていた目が戸惑ったような視線に変わりアルロンドを見上げた。


「リン、あの人はここにはいないよ。この家に君を傷つける人はいないよ。彼女はあの人ではないよ。大丈夫、今日は一緒にお風呂に入ろっかな、ヨハンに手伝ってもらおうね。」


アルロンドの言葉に顔色は戻るが、チラリとメイドを見ては怯えたように視線をそらした。ヨハンがリンを抱き上げると、リンは周りを見ないようにヨハンの肩に顔を押し付けた。アルロンドがヨハンに先に部屋に行くように言うと、ヨハンはリンを抱えて食堂をあとにした。

残された人達、とくにメイドは自分が何かしてしまったのかと困惑していた。さっきまでリンに微笑んでいたアルロンドが振り向くと、眉間にシワをよせて少し怒った表情をしていた。


「アルロンド、リンはどうしたんだ?」


「あぁ、まず君は何も悪くないから気にしないように。」


アルロンドは自分が話しかけてからリンの様子の変わったことで、顔色を悪くしていたメイドに話しかけた。


「しかしアルロンド様、リン様は私に怯えていたようで………」


リンの怯えた顔を思い出したのか、悲痛そうに訴えるメイドにアルロンドは首をふった。


「いや、君は全く悪くない。二人にはリンは母親に虐待されていた話はしただろう?リンの母親は君みたいな茶色の髪で、年や背格好も似ているんだ。リンは君に怯えたんではない、暴力をふるうった母親を思い出して怯えていたんだ。君は悪くないのにごめんね。」


リンの家族事情を聞いたメイドは顔色を青ざめた。自分は悪くない事は理解出来たが、自分をみるだけで怖い思いをすると思うと胸がきゅっと痛くなった。顔色の悪いメイドはベテランのメイド長が付き添い退室した。


「リンは男の人から暴力をたくさん受けていたけど、母親からは暴力以上に精神的な暴力が多かったみたいだね。見るだけなら女の人が怖いみたいだね。この家にいるときはメイドに気を付けるように言っておこう。」


「少しずつ慣れてくれればいいんだけどね。リンの世話はヨハンがしてくれるよ。」


3人はリンが滞在している間に注意することを話し合い始め、執事のガジールがメイド達に伝えるために部屋に控えていた。




リンはヨハンに抱っこされたままボーとしていた。指先は冷たく、どこを見たらわからずヨハンの上着のボタンを見ていた。茶色の髪の女は何を自分に言った?どんな目で自分を見ていた?表情は?口調は?手に何か持っていた?あれ?痛くない?叩かれていない?


『…いたくない?』


ぐるぐると考え混んでいたが、自分の体が痛くない事に驚き、声が零れた。不思議そうに呟いたリンにヨハンはたずねた。


「リン様何処かお怪我を?」


そこで初めてリンはヨハンに抱っこそれているのに気が付いたが、自分の疑問が気になりそのまま首を傾げてヨハンを見た。


『ちゃいろのおんなのひといたのにね、リン、どこもいたくないの』


「………リン様、さっき会った女の人はこの家のメイドで、リン様に痛い事をする人ではないですよ。」


ヨハンの言葉にリンは不思議そうに首を傾げた。茶色の女の人がいたのに痛くないという初めてな事に理解が追い付かなかった。顔色は良くなったが、違う世界にきても母親からの暴力に怯えるリンの姿にヨハンは悲しくなったが、リンに笑ってほしいとも思い、穏やかな口調で話題を変えた。


「リン様、今日のお風呂はどのような入浴剤にしましょうか?たくさんあるので、好きなモノを選んでいいですよ。」


ヨハンの言葉にリンの目はキラキラと輝き、力なく垂れていた耳と尻尾がピーンと伸びた。


『じーじ!おふろはアワアワ?』


「アワアワにしましょうか?」


『アワアワがいいー‼リン、おはなのにおいがいい‼』


さっきまでの暗い表情はなくなり、照明の灯りを反射するオレンジ色の瞳が輝き返しながらヨハンを見つめた。


(少しずつでいい、辛いことより楽しいことでいっぱいになり、心から笑えるようになってほしい。)


ヨハンはどのような楽しいお風呂にしようかと考えながら、リンを抱き直した。



書き途中で投稿してしまいました。すみません。慣れない操作に戸惑っています。

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