自己紹介します
リンが王子様発言したあと、部屋の中の人たちは声をあげて笑った。
「リン、金髪=王子様ではないって言ったじゃん‼」
「この年で王子様と言われるなんて照れてしまうけど、嬉しいね。」
「王子とはおそれ多く、私のようなものにはてきさないのでは?」
上から、アルロンド、アルロンドの父親、フィリップと3人は続けて話した。アルロンドは困ったようにリンに注意した。アルロンドの父親は、優しい目元をさらに緩めて、にっこりと微笑んで話した。フィリップは照れたのか頬を赤く染めて、首をかけながら困ったように言った。
リンは3人の言葉にさらに首を傾げた。
『おうじさま、じゃないの?みんな、キラキラだよ?』
リンの言葉に部屋にいた人たちは優しく微笑んだ。怯えていない様子に安心したアルロンドは、ポケットからリンを出してみたが、リンはポカポカのポケットから出た不安定さに驚き、アルロンドの上着の中に潜りこんだ。しかし慌てたのか尻尾はたらりと零れ落ちていて、その様子にさらに部屋の中は優しい空気になった。
「リンちゃん、まだ自己紹介をしていなかったね。私はアルロンドの父親で、このカンバール家の当主、ジェームズという。」
ジェームズの言葉に、リンの尻尾は揺れ、ポケットの時のように少しだけ顔を出してジェームズを見た。
『…アルしゃんの…おとしゃん?……かんがーる?…じぇじぇ?』
リンはうまく舌が回らないのか、言いにくそうにモゴモゴと呟いた。ジェームズはうまく言えないリンに微笑んだ。
「そうだ、パパでいいよ!」
名案だといようにジェームズはリンにむかってウインクをした。
『…パパしゃん?…』
「ふふ、リンちゃんは可愛いね。」
ジェームズがニコニコとしていると、横から咳払いが聞こえた。フィリップが少し腰を屈めてリンを見ていた。
「私も自己紹介をしていなかったな。私は、アルロンドの兄で、フィリップという。普段は騎士団で城に勤務しているため、あまり家にいないがよろしくな。」
じっくりとフィリップを見てみると、左目に額から頬にかけ、大きな傷跡があった。ジェームズやアルロンドとは違い、キリッとした目元と傷跡、大きな体が彼の見た目を怖いイメージにしていた。リンは優しそうな目元のジェームズより怖そうに見えていたが、自分のために腰を屈めて目を合わせてくれたり、よく見れば視線は優しいフィリップに気が付くと恐怖心はなくなった。
『…フィー…フィー?』
「フィリップ」
『フィー……プ?』
「言いやすい言葉でいい。」
相変わらず舌が回らず、名前の言えないリンにフィリップは苦笑した。
『フィーしゃん?』
「…それでいい。」
フィリップは自分を怖がらないリンに嬉しくなり、優しく微笑むと屈めていた姿勢を直してソファーに座り直した。
「自己紹介もしたし、いきなりたくさんの交流はリンちゃんが疲れるだろう。アルロンド、今日は何をしに行くんだ?」
「リンはボロボロの服を着ていたんだ。綺麗な服を着せたいけど、リンに合うサイズが無くてね。それで今は猫になってもらっているんだ。それに食器とかの日用品も足りないから買いに行こうと思ってね。」
「そうか、この家にあるものなら持っていっていいから、リンちゃんに必要なものを揃えてあげなさい。」
ヨハンが必要なものをリストアップした用紙を見ながらジェームズは少しチェックを入れて渡した。
「リンは人混み大丈夫なのか?」
「んー、心配だけど今のところ僕かヨハンにしかなついてないから、置いていくわけにはいかないからね。このまま、ポケットに入っててもらうよ。」
『リン、アルしゃんといっしょ』
手のひらに乗せたリンを撫でながら言うと、リンも手をあげてこたえた。
「なら私も行こう。休みだが、やることがなくて暇をしていた。リン、私も一緒に行ってもいいか?」
『…フィーしゃん、いっしょ?』
「そうだ。怖かったりしたらやめておく。」
『フィーしゃん、こわくない。フィーしゃん、わるいひとを、めってするでしょ、いいひと。』
「ありがとう、リンになにかあったらすぐに助けてあげるからな。」
フィリップは大きな手でそっとリンの頭をひとなでした。リンは大きな固い手に驚いたが、優しく撫でてくれたのが嬉しかった。
「じゃあ、いつもみたいに髪色を変えるからね兄さん。」
アルロンドがフィリップに向かって指をふると輝いていた金髪が濃いめの茶色になった。リンが驚いていると、今度はアルロンドが自分自身に指をふるとフィリップと同じように茶色の髪に変わった。驚くリンを見て、ジェームズはフフと笑った。
「私達の髪色では色々目立つから魔法で変えたんだよ。」
『キラキラじゃないね』
「金髪は珍しいから、すぐに僕たちとばれてしまうんだ。そうなるとスムーズに買い物出来なくなっちゃうからね。」
リンはアルロンドの垂れた髪に名残惜しそうに手を伸ばした。
「今日は手短に用事をすまそう。リンが馴れたら、ゆっくり王都を観光しようね。」
アルロンドは自分の垂れた髪をつかんで揺らした。猫になったリンはついつい飛びつてしまい、軽くジャンプしたあと尻餅をついてしまった。恥ずかしそうにそっぽを向いたリンは完璧に猫のようだった。
「アルロンド様、フィリップ様、馬車の用意が出来ました。町の近くまでお送りいたします。」
いつの間にか席を外していたガジールが馬車の準備をして報告にきた。
「じゃあ、父さん行って来るね。」
「気を付けてね。本当のリンちゃんのサイズと同じ大きさの人形とか買ってあげてね。抱っこしている姿は可愛いだろうなー。」
ジェームズの言葉にフィリップもアルロンドも力強く頷いた。アルロンドは想像した。人間のリンと同じ又は少し大きい人形を抱き締めて眠る姿を………
(めっちゃ可愛いじゃないか‼ウサギかくまか……)
何の人形を買うか考えながらニヤニヤするアルロンドにリンは首を傾げた。
次回はやっと買い物です!




