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ひつじで執事

更新が遅くなりました


「アルロンド様リボンが曲がっております。」


外出用の服に着替えたアルロンドに、ヨハンは素早く手直しをした。白いシャツに紺色のベストと裾の長いジャケットは一見シンプルだが生地は手触りが良く、金色の縁取りが上品であり、首もとにはリンとお揃いのオレンジ色の細身のリボンをつけていた。柔らかい金髪は飾り気のない紺色の紐で後ろに緩く纏められていた。さっきまではボサボサ頭に、よれよれのシャツと汚れた白衣を着ていたため、アルロンドの変身ぶりにリンは瞬きを繰り返した。


『にーにー』


リンはアルロンドに話しかけたが、可愛い子猫の鳴き声しか出ず、話せなかった。


「ケットシーになりきれないから話せないのかな?話せないと不便だから……取り敢えず臨時の魔法をかけるぞ。」


アルロンドが呪文を呟き、指先でリンの額をトンっと指すとキラキラと星のように光が瞬き、額がじんわりと暖かくなった。


『あったかい…あれ?はなせる?』


「動物と話せる魔法だ。これでリンが猫でも話せるようになったよ。」


『アルしゃん、ありがとう。アルしゃん、キラキラ、やっぱりおうじさま?』


リンが首をかしげると、アルロンドは照れたように頬をかきなからリンを抱き上げた。


「ん~、誉めてくれてありがたいが、王子様てはないよ。それに今から僕の実家に行くけど、僕の家族はみんな金髪か銀髪だから、リンからしたら凄くキラキラかもね。」


アルロンドはリンを撫でながら、そっと胸ポケットにリンを入れた。小さい体のリンにはちょっと頭が出るくらいて、狭くて暖かくて居心地が良かった。


「迷子にならないように狭いけどここにいてね。」


『ポカポカしてるから、ここすき~』


リンは喉を鳴らしながらアルロンドの指にすり寄った。


「アルロンド様、準備が終わりました。」


家の戸締まりを確認してきたヨハンが戻ってきたため、アルロンドは転移の呪文を紡いだ。足元にキラキラと光る魔方陣が現れ、光の粒が回りを覆い始めた。光の向こうで、精霊達が手を振っていてので、リンはピンクの肉球を振りかえした。一瞬、フワリと体が浮いた気がしたら光はおさまり、さっきまでいたアルロンドの自室とは違うところにいた。リンが瞬きを繰り返していると、正面の扉が開き、紺色の髪に眼鏡をかけた呼ばれていますもはとら同じ格好をした50代位の男性が入ってきた。男性はアルロンドを見ると、伸ばした背筋のまま綺麗なお辞儀をした。


「アルロンド様お帰りなさいませ。いらっしゃるのは明日と伺っていましたが急な変更、何かございましたか?」


「急に早く戻ってすまないガジール。明日は予定通りに報告に行くが、急遽買い物に行かなくてはいけなくなって。」


「買い物ですか?商人をお呼びいたしましょうか?」


「いや、今日は町に行くよ。」


「では、護衛を…」


「ヨハンがいるから大丈夫だよ。父さんや兄さんは在宅か?」


「旦那様は書斎に、フィリップ様は自室にいらっしゃいます。」


「まずは父さんに挨拶に行こう。」


「かしこまりました。アルロンド様、先ほどから気になっていたのですが……そちらは子猫ですか?」


ガジールの問いにアルロンドが胸ポケットに視線を向けると、リンはおそるおそる外を覗くようにポケットから顔を半分出していた。やや耳をふせて、警戒しているようだ。


『アルしゃん、だれ?』


「我が家の執事のガジールだ。ん~、うちでいうヨハンと同じで家のサポートをしてくれる。ここにいるときは、ガジールを頼るといい。」


『……ひつじ?』


「し・つ・じ」


『ひ・つ・じ?』


「うまく言えないか……ガジール、この猫はリン。事情があって一緒にいる。姿は子猫だが一応精獣だ。今回はリンの事で急遽帰ってきた。説明したいから、兄さんを父さんの書斎に呼んできてくれないか?」


「かしこまりました。リン様言いにくいようでしたら、ガジールでも大丈夫ですよ。」


視線が合うように少し屈んで、優しく話しかけるガジールの側にヨハンがそっと近づき小声で話しかけた。


「ガジール様、ここは名前ではなく“ひつじ”でいきましょう。」


「ヨハン様…名前の方が呼びやすいのでは?」


「リン様の人型は可愛らしい女の子でして、まだうまくお話出来ないのです。舌足らずな口調はたいへん可愛らしく……実は私は“じーじ”と呼ばれています。」


ヨハンの表情は珍しく優しげに微笑んでいるが、後半は孫自慢をする、祖父にしか見えなかった。


「ちなみに、僕は“アルしゃん”だ。アルロンドは言えないようだ。」


アルロンドも自慢げにリンを撫でながらガジールに教えた。


『じーじ?アルしゃん?』


子猫は二人を見ながら首を傾げ、チラリとガジールに視線をむけた。


『ひつじしゃん?』


「はい、ひつじで大丈夫です。」


可愛い声で話す子猫に、ガジールも目尻が下がり微笑んだ。


「何かお困りでしたら、このひつじに言ってください。」


『あい、ひつじしゃん。よろしく、おねがいしましゅ。』


リンが小さな前足をあげると、ピンクの肉球が見えた。アルロンドは良くできましたと、リンをひと撫でしてから歩きだし、その後ろをヨハンが音もなく続いた。ガジールは少し歩いてから、さっきの黒猫を思いだし微笑んだ。


(早く人型が見てみたいですね。)




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