初めて彼女が家に来た
「ここが先輩の住んでる...。」
「あぁ、下はカフェだから生活スペースは2階な。」
さすがに店に蓮姫をおんぶした状態というのは俺も、そして蓮姫も恥しいということで店が見える少し前に二人歩いて店まで来ていた。
「カフェだったんですね。あ、それにここ私1度来たことあります。」
「ん、そうなのか?」
まぁ、確かに外見は普通に可愛いカフェって感じだし女の子なら来てても何ら不思議ではないけど。
「3年くらい前に姉と一緒に。ここが先輩の家だったんですね。」
「んじゃ入るか。」
扉を開けるとカランカランと音が鳴ると店内にベルが響いた。
「いらっしゃいませぇ〜って、ゆー君か、おかえ.........」
「ん?ただいま。」
「ゆー君、その娘は?」
「えーっと、俺の彼女だ。」
「初めまして。彩刈 蓮姫です。先輩とは5ヵ月ほどお付き合いをさせてもらってます。」
「あらあら、まぁまぁ、そう。ゆー君もそんな歳なのね。」
どんな反応をするのかと若干の緊張はしていたが、カヨはにまぁと笑みを浮かべながらカウンターから出てくると蓮姫の頭に手を置いた。
「蓮姫ちゃん、可愛い彼女さんね。」
「…いえ、。」
突然可愛いと褒められた蓮姫は恥ずかしそうに顔を伏せ、その様子にカヨはあらあらまぁまぁと頬に手を当てた。
「それでチューはもうしたの?それとも、もうもっと凄いことしてたり?」
「ちょ、何聞いてんだよ!そういうのは普通聞かないもんだろっ?!」
「まだ何もしてません。先輩は見た目通りヘタレですから。」
「あらあら、まぁまぁ。」
「ちょっ!?見た目通りって?!」
まぁ、たしかに半年付き合って何も出来てないヘタレではあるが。
「と、とにかく上がるぞ!」
ここにいては精神的にダメージを負ってしまう。
「はい、おじゃまします。」
「ごゆっくり〜。あ、ゆー君。」
「ん?」
「蓮姫ちゃんとイチャイチャするのはいいんだけど、沙弥には気を付けてね。今は友達の家に遊びに行ってるけど沙弥はゆー君に依存してるとこあるから何しでかすか分からないわよ。」
「沙弥......か。あぁ、気を付けるよ。」
カヨの忠告を受けつつ、俺は蓮姫を連れて二階にある俺の部屋へと向かった。
部屋に入ると蓮姫は俺の部屋を見回し、そわそわとしながらテーブルの隣へ腰掛ける。
「結構片付いてるんですね。」
「まぁ、一応綺麗好きだしな。」
前に散らかっているからとカヨに勝手に部屋の掃除をされ、恥ずかしい思いをして以来部屋の掃除は日課になっている。
「先輩は見られたくない物は何処に隠すタイプですか?」
「それをこのタイミングで聞かれて答える人はいない。」
「冗談です。ところで先輩、沙弥って誰ですか?浮気ですか?」
「違う。沙弥は俺の妹だ。カヨの娘だから義理だけどな。」
「義理の妹...ですか。それに沙弥ってどこかで………。」
「どうした?」
「いえ。さっきカヨさんが先輩に依存している、と言っていたので気になっただけです。どうな人なんですか?」
「どんな……か。んー、今は高1で身長は蓮姫より少し高い160くらいか?んで、頭が良くて可愛くて」
さらに続けようとした俺だったが、バンッと机を叩いた蓮姫に言葉を止めた。
「ん?どうした?」
「先輩、そう軽々しく可愛いなんて言うものではありませんよ。」
「あ、えーっと......蓮姫の方が可愛い......よ。」
「............そう、ですか...。それで?続けてください。」
「ん?蓮姫の可愛さか?そうだな、容姿は言わずもがなだが、クールに振舞ってるのにそこに垣間見得る恥ずかしがり屋な部分や、頭は良いのに不器用で抜けてる所も可愛いな。後は...」
「な、ななな、何を言ってるんですか!?」
「ん?蓮姫の可愛さについてだが?」
「私は沙弥という人について続けてくださいって言ったんです!」
「あぁ、なんだ、沙弥の事か。」
「当たり前です!」
蓮姫は顔を真っ赤にしてプイッと顔を逸らした。