風の悪戯
「よし!終わったっ!」
放課後になった瞬間に既にまとめてあった荷物を持って俺は立ち上がった。
と、同時にクラスで数人がポソリと呟く。
「お、変態は1年生見に行くのか?」
「変態。」
「もう清々しいよね、変態。」
............期待で胸が一杯なのに悔しさなんか入れたら胸がもう張り裂けちゃうぞ...。
なにより変態呼ばわりする中に女子の声が混ざってるのがさらに俺の心を深く抉ってくる。
「.........」
何か言い返してやろう、そう思って息を吸った俺だったが、これから会いに行くのも一年生なわけで。
何も言わずに教室を後にして屋上まで早足で階段を登った。
ガチャ!と扉を開いて屋上へ出ると、少し強い風が吹き込んできた。
「......まだ来てないか。」
屋上を見渡すがそれらしき人影はなく、ふぅ、と息を吐く。
まぁ、1年も大して時間に差はないからもう少し待ってれば来るか。
と、扉を開けっ放しにして屋上へ出た所でふと持ってきた小箱の存在を思い出した。
「そういえばもう見ていいのか。」
あの手紙には屋上で中を見ろとは書かれていたが相手の目の前で開けろとは書かれてなかったからな。
そうと決まればずっと気になっていただけにさっそく小箱を鞄から取り出してすぐにその蓋を開けた。
........................。
「...............は?」
俺はあの文面からはあまりに想像出来ない中身にポカンと口を開いたまま固まった。
「こ、これって......」
いや有り得ない、見間違いだ、俺の初めてのラブレターにこんな物が添えられるはずがない。
と己に言い聞かせて箱からその中身を摘んで取り出した。
だが、やはりその中身は変わらずもはや見間違えようがない。
「......パンツ......?」
疑問は抱くがパンツかどうかではない。何故パンツが入っているのか、それが問題だ。
ピンク色がベースのフリルが付いて小さな兎の装飾が施された完全に女物のパンツ。
「......よ、よほど肉食系なのか?」
だとしてもラブレターに自分のパンツ添えるとかありえねぇだろ...と眼前まで持ち上げると強く吹く風に煽られてパンツがペタァっ!と顔面へと張り付いた。
あ、女の子の匂い......なんて感じる変態では俺はない!
すぐに顔から離そうとした時、パシャパシャ!パシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ!!
と記者会見でも行っているのだろうかと思うほどのシャッター音が屋上の入口の方から聞こえてびくぅっ!と体を跳ねさせて俺は振り返った。
そして俺は心臓が止まる錯覚を起こす程の絶望を覚えた。
女物のパンツを顔面に張り付かせている写真を撮られたのも確かに絶望させるが問題はそこではない。
そこに立っていたのが、俺が恋した少女、彩狩 蓮姫だったからだ。
蓮姫は顔を真っ赤にして、口をパクパクさせながら俺が振り返った今も尚、指を画面から離さず
パシャシャシャシャシャシャ
と写真を撮り続けていた。
恐らく故意に撮り続けているのではなく、俺のあまりの変態的行動に指の動きが停止しているのだろう。
そして数秒、固まっていた蓮姫が指を画面から離し、シャッター音が止むと顔を一層紅くした蓮姫が口を開いた。
「何してるんですか、変態。」