差出人不明のラブレター
ある夏の日。
体育の授業で、クラス全員外で真夏のギラギラと光る太陽の元授業を終え、着替えてクラスに戻ると机の中に俺が入れた覚えのない可愛らしい柄の小箱が入っていた。
「なんだこれ?」
誰かが間違えて入れたのか?と、筆箱程の大きさの小箱を手に取って机から取り出してみるとヒラリと1枚の便箋が床に落ちた。
その便箋も周りに可愛らしいキャラが描かれた、ピンク色のもので。
当然俺は直感した、女子からのラブレターだと。
まぁ、まだ手紙の内容は読んでいない、それを読んでからだ。と便箋を拾い上げて文面に目を通すとそこには可愛らしい丸文字でこう書かれていた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
神城 悠一先輩へ。
私は1年の女子です。
先輩へ直接想いを伝えるのは素直になれない私では無理だと思い、このように手紙を渡すという手段をとらせてもらいました。
先輩の事を好きになるきっかけはありません。一目惚れでした。
毎日顔を見ては見てる事を悟られないように慌てて目をそらすの繰り返し。
いつか大好きな先輩のその目をまっすぐ見たいです。
もし、先輩が誰かとお付き合いしたいと想い、私が誰なのか知りたいと思うのなら今日の放課後、屋上へ来てください。
一緒に入れておいた小箱。
誰とも付き合う気がないのなら中を見ずに捨てて下さい。
もし屋上へ来てくれるのであれば、その時は屋上で中を見てくれると嬉しいです。
では放課後待ってます。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
紛れもない、これはやはりアレだった。
「...ラブレター.........」
どれくらいボーッとしていただろうか。
何せ初めて貰ったラブレターだ。
相手の女の子も誰だか気になるし、そもそも俺の事を好いてくれる女の子がいた事にかつて感じたこと無いほどの嬉しさが込み上げた。
もちろん、俺の好きな少女の事もあるし、付き合う事は出来ないがそれでも嬉しいものだ。
そしてそれと同時にある一つのまず有り得ないほんの僅かな可能性がどうしても俺の頭を過ぎる。
これの差出人は俺の恋したあの少女ではないだろうか、と。
「いやいや、ないよな。まだ目が合った事だって1度しかないし......ないない......。」
そう口に出して期待するなと自分に言い聞かし俺は椅子に腰を下ろした。
すると小箱にふと目がいき、中身が気になった。
1年だと書いてあったし今開けても相手には知られないが、屋上で開けろと書いてあったし今開けるのはまずいな。
と、いつもの俺なら開けてしまいそうなものだが、初のラブレターなだけあってその文面に完全に従ってしまう。
だがどうしても気になり音だけ、と箱を手に持ち耳元で振ってみると、カサカサと箱に何かが擦れる音だけ聞こえた。
「......だめだな、全く分からん」
まぁ、何にせよ、放課後だな。
俺は箱を机の中に戻すと時計に目をやる。
あと3時間ってとこか。
「............タイムリープしてぇ...。」
この時ほど3時間が長く感じる事は未だかつてなかったことだろう。