帰り道
「遅いですよ先輩。もう40分も待たされました。」
学校が終わり荷物をまとめて校舎を出ると、校門前で白い息を吐きながら少女が俺を待っていた。
彼女は絢刈蓮姫。
俺より一つ年下の高校一年生で俺の彼女だ。
「今日は少し遅くなるから先に帰ってくれってメールしたろ。見なかったのか?」
「何言ってるんです、先輩からのメールを見ないはずないじゃないですか。でも待たされた罰として今日は私を家までおんぶして帰ってください。」
「別にいいけど、ここからだと周りの視線もあるし少し行ってからでいいか?」
蓮姫はその愛くるしい容姿が男共に大人気。そんな蓮姫を人前でおんぶなんてしたら今でもだいぶ低い株がさらに落ちてしまう。
「写真、ばら撒きますよ?」
......と思ったがそれとは比にならないレベルの写真をチラつかされ、急いで蓮姫のスマホを手で覆う。
「......分かった、ここからでいいよ。」
「最初からそうすればいいんですよ。」
蓮姫はそういうと俺の後ろへと周りこみ、俺はしぶしぶ腰を下ろした。
「...重いです?」
蓮姫は俺に体を預け、ポソリとそんな事を聞いてくる。
「いんや、全然軽いよ。」
身長150そこそこなのだから重いはずもない。
「それは遠回しに胸がない分軽いってディスってます?」
「照れてるの悟られるのが恥ずかしいからってそう卑屈になるなよ。」
「なっ、て、照れるはずないじゃないですか。ばら撒きますよ?!」
「痛って、頬を引っ張るな!あとばら撒くのだけはマジで勘弁してくれ...。照れ隠しでばらまかれていいレベルの写真じゃねぇんだから。」
「だから照れてないって言ってるじゃないですかー!」
蓮姫は声を張りながら一層強く俺の頬を引っ張った。
✴︎
彼女と出会ったのは8ヵ月前の事だ。
新一年生の入学式、何人もいる新入生の中から、ふと見かけた1人の少女が俺の目に焼き付いた。
薄茶色のセミロングの髪に二つの髪留めをしたその少女をずっと見ていると、相手にも俺が見ている事が伝わったようで目が合った途端に少女は目をそらした。
その時俺は蓮姫を初めて見て何と思ったのか、その時既に惚れたのか後々惚れたのか...。
今では内面を含めて好きだと断言出来るが、入学式が終わって数日、顔を見たことしかなかった当時の俺は何となく蓮姫に恋をしていた。
それから少しでも仲良くなろうと休み時間になる度に1年のクラス前まで足を運ぶがそれだけでも勇気のいる事だっただけに少女に話しかける事は殆ど出来ず、ただただ見ているだけの時間が過ぎた。
そしていつしか、誰が言い出したのか分からないが1年のクラスへ通う俺に変態というあだ名が付けられた頃、俺が蓮姫と大きく近づくある事件が起きた。