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化野から②
「あとどのくらいかかる」私が聞いて「たぶん1時間くらい」と彼が答える
同じような道が続いてそれがなぜ暗いのかわかった
街灯がない 山を下りているのに真っ暗な中に吸い込まれていく感じがする
頭上には何千何万という星がきらめいていて車窓からそれを見ていると二度とこの夜は明けないんじゃ
ないかと思った
その時ガードレール横に大きなユリだろうか 見たところ百合の形をしていたが
ピンクの和紙のような乾いた花びらの中には茶色のまだらの斑点が見える
かなり大きな花束だ
誰が置いたのだろう
何かの事故が起こったとかそういうことよりそっちのほうが気になった
この山に人が住んでいるのだろうか あの花は山でつんだのだろうか あんなにたくさん
「ねえ あれ」思わず言った
「ああ事故があったのかな」彼が平坦な口調で言う
事故があったのなら助けなど来るのかしら
そういえばこの人の前の奥さんは事故で死んだらしい
自動車事故運転を誤って首の骨を折った




