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化野から⑬
カタカタと小さな音がしてドアが開いた
立っていたのは以前の妻だったが顔は腐敗して頬からのぞいた歯が笑っているような表情を作っているよ
うだった
生きている時は歯並びの良さを自慢にしていた
その歯もところどころ変色して溶けてしまった肉のせいで大きな笑みを作って
下半身はねじ曲がっていた
沼の水を含んだゴボゴボいう音がした
「お前は死んだんだ」 自分に言い聞かせるように言った
首がかしいだ
自分が力いっぱいめた首が何かを問いかけているように
これは現実だ 腐臭がひどくなり それから自分が入っていたはずの電話がなかった
電話ボックスごとなかった
逃げようとしてバランスを崩しその上に妻だったものが倒れてきた
冷たい肉がこそげ落ちて自分の顔を覆った
その時遠くに麻子がたたずんでいるのが見えてもう一度名前をよぼうと口を開けた
口の中に肉が入って息ができなくなった
ささやきが聞こえた
待たされるのは嫌いだわ ずっと一緒にいましょう




