化野から⑫
やるべきことを迅速かつ適切にやらねばならなかった
もう怖がる必要はない
呼ばれたのは私ではないのだから私は二人に近づいて言った
「もっと 暖かい場所に行きましょう」
二人がおずおずと顔を上げた 青黒くむくんだ顔がちらりと見えた
二人はさっと顔を伏せた 私は手を出した
「もう怖いことは何もないの」
「私達 こんな手になってしまって・・・・」むくんだ手を隠した
「それはあなたたちのせいではないの すぐ直るわ」
そのころ隆はまだ電話ボックスの中にいた
人影が大きくなってきた
やがて近づいて自分を呼ぶ 「あなた」
その首がかしいだ 黒い縞が付いた自分がしめた首
「私が好き」いつの間にか扉が消えている
足元がぬかるんで水につかるのがわかった
元は妻だった女が車ごと沈んだ池
その時麻子が後ろを走っていくのが見えたので大声で叫んだ 「助けてくれ 麻子」
麻子はこちらを見た
なんという勝手な神経の持ち主なのだろう なんという厚かましさ
冷たい眼がそう言っているように見えた
そしてそのまま走って行ってしまった
そのとき 「あなた」と言いながら冷たい手が巻き付いてきた




