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脳腫瘍と暮らす。  作者: chopmonkey
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忘れえぬ人

私には、忘れられない人がいます。

それは腫瘍が見つかった時付き合っていた方。

本当に本当に大好きで、ずっとそばにいたくて

会うと楽しくてこんな日がずっと続いたらいいなと思わせる人でした。

その当時はお互い仕事が忙しくても、時間を合わせて会って

誰よりも信頼していて、悩みも相談したりしてよい関係でした。

とある日、脳に腫瘍ができて突然その生活に別れを告げることになります。

もし何か彼と一緒にいる時に病態が急変したりしたら彼に迷惑がかかるし

その当時の私は母と弟の3人暮らしで家族を支えていかなくてはいけないという

重責があって、それでも諦めたくなくてたくさんの葛藤の結果でした。

もう会わないと彼に告げた時、彼はなぜと何回も尋ねてきましたが

腫瘍があるなんて言えず、私は会えないの一点張りで

しばらくして彼は転勤で県外へ行って、本当に会えなくなりました。

本当はね、会わないじゃなくて会えなかったんだ。

心の中で私は何度もそう言っているような気がして

会いたくて会いたくて泣いていました。

子供のように毎日泣き続け、腫瘍に対する憎しみと正直に話せなかった

自分への悔しさに涙が止まりませんでした。

その時に、本当に私は幸せな時間を過ごしていたのだと心から思いました。

本当に、本当に好きだったんだ。

しばらく私は何もかもなくなったように空っぽになり

楽しいことすら見つけられず、また楽しいと感じることもなく

日々何も考えないで一日が終わって、一カ月が過ぎて

時間に取り残されたような日常が続きました。

それから数年後、ふとしたきっかけから彼と連絡がとれるようになりました。

あの日、突然別れを告げたことに怒っているのではないかと思っていたのに

彼の久々の言葉は「体大丈夫?」と私を気遣う言葉でした。

なんとか大丈夫と言ったけど、私はわからないように電話口で涙があふれ

別れを責められることもなく、心配してくれる言葉に

この人を好きになってよかったと改めて思いました。

それから、叶わなくても心に止めていく愛する人は

彼だけでいいと感じるようになりました。

一人は辛い、病気を持つともっと辛い。

だけども、誰かを愛している限り私は強く生きていけると思ったからです。

だから、私の人生は腫瘍が見つかったあの日に一度終わったのだ、

これからは何事にも動じない強い私で生きていくと決意した日でもありました。

同じ一度きりの人生なら、泣いて暮らすより

笑って過ごすのがいいに決まっています。

私はこれからたくさん笑って、楽しいと思えることをして

あぁよく生きたなぁと思えるまで生き抜くつもりです。

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