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プロローグ

初投稿(処女作)になります。

プロローグ



「ガアー」


晩秋の山中に獣の鳴き声が響いた。

山の所有者が手を加えたのか、周囲を鬱蒼と茂った木々が覆う中、4メートル四方程のぽかりと開けた場所に、体長2メートルを超えるツキノワグマが後ろ脚で立ち上がり、前脚を大きく広げ威嚇するように吠えている。

本州最大最強の獣。体長は平均で160センチ、体重は100キロ前後。大きな個体でも180センチ、150キロ。人間はもちろん、野生動物も正面から対峙すれば、喰い殺されてしまうより他にない。しかも今吠え猛っているそれは、体長、体重ともに平均なものより大きく、そこから予想される、暴力、破壊力は、振るわれる側からすれば、絶望としか言いようないものであろう。


しかし残念または、悲しいことに猛る獣の前には一人の男が立っている。大きな男である。身長は190センチを超えているようで、立ち上がったツキノワグマと比較しても見劣りしない。頭にはニット帽をかぶり、緑色の丈夫そうなダウンを着込み、何10キロあるのかわからない、ロープやらスコップやらが取り付けられた巨大バックを背負い、腰には左右に山刀を下げ、アーミーパンツを穿き、足元は丈夫そうな黒いブーツで固めている。バックが巨大過ぎることと、山刀を2本もさげていることを除けば、少し体格のいい登山者といえるであろう。

しかし聊かおかしなところもある。

まず、彼がいる山は一般的に登山者が使うような山ではないということ。

次に季節が晩秋であるということ。


そして最後に巨大なツキノワグマと対峙しているにも関わらず一切の怯え、動揺が浮かんでいないところ。むしろその口元には薄っすらと笑みを浮かべている。


冬を迎える山に一人入り、巨大な捕食者を前に笑みを浮かべること事から、自殺志願者というのが当てはまりそうだが、そうではない。ツキノワグマから目をそらさず、背負っていたバックをゆっくり下ろすと、一転して凄まじい勢いでクマにとびかかっていく。

彼は自殺志願者でなく、被捕食者でもなく・・・・・



巨大なツキノワグマの懐とびこんだ男は鋭い右ストーレートを左胸に叩きこんだ。その一撃でクマの目からは一瞬光が消え、仁王立ちのまま体をピクリと痙攣させる。隙だらけのクマに対して、男は先ほどよりさらに威力の乗った左を同じ個所に叩き込む。ドゴっという音は、男の拳の威力とクマの命が消えかかっているのをもの語っている。たまらず体をくのじに折り曲げるクマの顎に容赦なく振るわれるアッパー。くのじから反転体をのけぞらせ仰向けに倒れた。まだ死んではいないようだが体をビクビクと痙攣させる姿には先ほどまでの威圧感はなく、むしろ憐れみさえ感じさせる。無防備にさらされた首筋を踏みつけられ、ゴキリという音ともに頸椎を破壊され、周辺の主として君臨していたツキノワグマはその生涯を終えた。


彼は自殺志願者でなく被捕食者でもなく・・・・・捕食者だった。




巨大なバックを背負い、ツキノワグマとイノシシに結ばれたロープを引きずる男が歩いている。明らかに一人では運べない荷物だが、彼は特に気にした様子もなく、むしろ楽しそうにしている。

「えっ!?」

しかし突然小さな声を残し彼の姿は忽然と消えてしまう。数瞬遅れて彼の獲物も引きずり込まれるように消えてしまった。男が立っていた地面には穴のような、影のような黒いモヤがあったが2秒もすると消えてしまった。



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