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黄泉霊録  作者: ツアンサ
黄泉夜家
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黄泉夜家

「……皆に会いたいよ」


人気が微塵も感じられず、ビューと建物と建物の間を吹き抜ける夜風が霊夜の体温を冷たく奪い、一人蹲る。

一人、帰る場所も失い孤独に蹲る霊夜に、冷たい風が当たるのだった。


「黄泉夜霊夜に逃げだされたそうです。根国霊夜、警視総監」


霊夜の居た病院から掛かってきた電話の内容を伝えるも、腕を組み表情を微塵も変えない総監。


その顔からは、何を考えているのか等は全く分からない。


「まぁ、霊夜君の事は佐鳥君達に諦めるように伝えたまえ」


「はぁ、了解しました。佐鳥警部達には、黄泉夜霊夜から手を引けと伝えます」

相変わらず言葉の真意も考えも読めない霊夜総監の言葉に従い、佐鳥警部達に言い渡すべく総監室を後にした。


「……“黄泉夜家”が襲撃されたのは恐らく、“あれ”が岩から解放されたか……」


総監の言う“あれ”とは一体何なのか。黄泉夜家が何故、襲撃されたのか。意味深な呟きは誰かに知られるでもなく虚無に消えた。


「はぁー黄泉夜霊夜の件から手を引けと本気で言ってるんですか!!」


病室で警視長から、霊夜総監の言葉を伝えられた佐鳥は当然、不満の声を上げた。


黄泉夜霊夜は、黄泉夜家の事件の鍵になる存在と見て間違いない。


「黄泉夜霊夜は、明らかに事件の鍵なんですよ!それを諦めろと納得出来ん!!」

治癒した後に黄泉夜霊夜を確保すべく捜索しようと考えていた矢先に手を引けの言葉を聞かされれば当然、佐鳥の方からしてみれば納得いかない。


だが霊夜総監はそう言ってくるだろうと佐鳥が不満の声を上げたら、此を言えと警視長に伝えていた。


「Need not to know!」

「……なっ!!」


Need not to know(知る必要の無い事)


その言葉を聞かされては、幾ら佐鳥が不満の声を上げようと無駄だという意味だった。


「安静に療養する事ですね。佐鳥警部」


では私は失礼しますよ。そう言って去っていく警視長の言葉は耳に入っていたのだろうか?


黄泉夜霊夜は、あの事件の鍵になる人物に違いないのに手を引け。

其に加えて知る必要の無い事……黄泉夜家事件は、只の事件じゃないって事なのか。


佐鳥の頭の中で疑問符が大きく膨れ上がっていく。とは言え、これ以上の情報は上層部にしか得られない

。だったら自力で……黄泉夜家事件を調べてやる。と決心した瞬間。


「黄泉夜霊夜には関わらないのが身の為だ」

「っ!!」

何時の間に背後にいたのだろうか。ピリッとした殺気が佐鳥の背後から放たれていた。


殺気の主は声が冷たくまるで感情を感じられない。

「生きたくば黄泉夜家の件には関わらない事だな」

「待て!!」


そう再び佐鳥に伝えると殺気の主は、振り返るより早く何時の間にか気配も足音も感じさせずに消えていた。


「今のは一体……誰だったんだ…」


佐鳥は暫く動けなかった。声の主の圧倒的な威圧感を受け去るまで膝が震え出すのを耐えるので精一杯だった。


「……輪廻様、あの佐鳥と言う愚者に忠告は確かにしました」


和風な雰囲気に竹がカコンと鳴る庭を横に、佐鳥に接触していた者と着物姿の少女が立っていた。


少女、輪廻は、ふむと頷くと思案顔を浮かばせる。


暫しの沈黙。


「……此で一先ずは部外者の介入は防げたわね。所で戦。霊夜様は何処にいらっしゃるの」

「………」


黒髪の少年、戦に問い掛ける輪廻。その表情からは佐鳥はどうでも良いから霊夜様は!!と気迫すら見えた気がした。


「おらっ!早く霊夜様に会わせなさいよ!!」


ゴゴゴゴゴゴッ!!と効果音が付いたら間違いなく鳴っているだろう輪廻を見て、戦は不安を抱きつつも口を開いた。


「……霊夜様は、其が霊夜様の“霊魂”の反応は確かに比良坂裏通りに合ったんですが……」

「ほぅ…間を開けたな」


裏通りに着いたら居なかった。と言う言葉は戦の口から発せられる事はなかった。何故なら。


「霊夜様を連れて来れずに戻ってくんじゃねぇわよーっ!!」


戦が言う前に理解した輪廻の右拳のストレートが鳩尾に綺麗に決まったからである。


「ぐっ……っ!!」


渾身の力が込められた右ストレートを受け戦の身体は綺麗に綺麗に吹っ飛んだ。


「馬鹿力が……」


遺言の様に戦は言い残し意識を手放した。


「全く修羅!畜生!!戦の変わりに霊夜様を連れて来てちょうだい」


輪廻の叫び声が届いたのか。直ぐに御意との二人の声が聞こえ屋敷を飛び出して行くのが見えた。


「さて……戦!何時まで意識を手放すつもり。ほら起きろってんだよ!!」

「ぐっ!起きます起きますよ!!」


屋敷には怒れる少女と少女への生け贄に捧げられた少年が残されたのだった。

「……所で輪廻様は、どうして霊夜様の事をご存じで」

「……へっ?」


輪廻の怒りが幾等か落ち着き、一段落付いた頃。戦は輪廻に霊夜の事を聞いていた。


霊夜様と輪廻様は“管理及び監視する霊界”が違うだろうに。


戦の知る限りでは霊夜と輪廻が接触する機会は、せいぜい報告会の時位だし、ここまで霊夜に出会いたがる理由は無いと思うのだがな。


そんな疑問符が顔に出ていたのか。輪廻の呆れた様な声が聞こえてきた。


「……確かに、元々は黄泉夜家に仕えてたアンタが知らないのも無理は無いかもね。霊夜と会ったのは…戦が黄泉夜家に仕える前だったからね……」

「輪廻様………」


その時の輪廻様は何かを懐かしむ様な感傷に浸っているかの様な表情で、戦にはこれ以上は聞く気にはなれなかった。


「霊夜ー今日は、どうでしたか」


「冷淡ーっ!!今日は霊鬼を刈り終えたぜ」


夕焼けに仄かに照らされた霊夜と冷淡。


冷淡の霊夜を見る表情は霊夜を襲った時の冷たい表情等ではなく、実に穏やかな微笑を浮かばせていた。

「ふふっ、霊夜は強いわね」


得意気な笑みを浮かばせる霊夜の髪を穏やかに撫でる冷淡。


「冷淡……早く帰って飯食おうぜ」


「……ふふっ、消耗したら腹は減りますね。では帰りましょうか」


穏やかに夕焼けに照らされ冷淡と霊夜は歩いて行く。穏やかな風が少年と少女を見守っていた……。





霊夜「よぅ、輪廻」


輪廻「霊夜様!!会えましたわね。嬉しいですわ」


今回のゲストは、霊夜と同じ選ばれし霊魂である。


輪廻「冥土輪廻よ!!宜しく」


霊夜「抱き付くなって暑いなー」


輪廻「次回は霊夜様の反撃よ!!」


舞台裏でした。

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