悪意の糸を刈り尽くせ!!
「おやおやおや、私の素敵な素敵な人形様が暴れてるわね」
形人館では、希美と九忌が話していた。
嬉しそうな困った様な表情で、しょうがない人形様何だからと呟いている。
「……人形様ってあの霊魂を常に装置によって命に無理矢理宿らされてる、夜泉夜霊夜かい」
九忌は、そう言って歪んだ笑みを浮かばせる。その笑みは夜泉夜霊夜を人間とは見ていない。そう思わせる恐ろしき笑み。
「そうでしたわね。私が貴方の九忌家に頼みましたのよね。そう夜泉夜君が暴れてるのですわ。早く帰りになさった方が宜しくてよ」
面白い光景が貴方の屋敷で見れますわよ。そう言って、うふふふふふふと不敵な笑いを漏らす希美。
「はは、面白い事を言う。奴の命に設置された機械は奴の意思を支配する事も可能なんだ。暴れてる等、不可能さ」
九忌は知っている。夜泉夜霊夜の命に設置された機械は、意思を奪い支配する事も可能な非道なる装置だと。
だから暴れていたら、装置で意思を奪い支配するだけの事。
「うふふふふふふうふふふふふふふふふふふふ」
そんな九忌に対し希美は、ただただ不気味に笑い続けるのだった。
「……貴様、我等の道具な筈の貴様が何故、抵抗するっ!!」
研究室で霊夜を連れて来るのを待っていた九忌家の夫は、連れてくる筈の研究班の者からの通信を聞き映像室に向かい驚愕した。
倒された【夜泉夜霊夜】対応班の者達。
どの者もかなりの力で攻撃されたのだろう。壁にめり込んだり口から鮮血を流している者等、意識を覚ます気配はない。
だが男が驚いたのは其だけじゃない。
「……貴様の心臓に設置した意思を支配する筈の提供器が効かない等、どういう事だ!!」
そう夜泉夜霊夜の心臓に設置されてる筈の、霊魂提供器を操作したのだろう者も倒されていたからだ。
「貴方どうしまして……っ!!貴様、何をした」
夫の怒鳴り声を聞いたのだろう。同じ様に奥から姿を現した妻も、今の状況を生み出した霊夜を睨み付ける。
「……どれだけ苦しんだと思っている!!どれだけ夜泉夜霊夜が苦しんだと思っていやがるんだっ!!」
そんな夫妻の睨み付ける視線に対し、霊夜は激情の視線を浴びせ怒鳴り返した。
その銀の眸には苦しみを思ってか激情と悲しみの涙が滲んでいた。
「……貴様!?夜泉夜霊夜じゃないな」
「何者よ、何者なのよ。貴様は何者なのよぉぉおおお!!」
その霊夜の声に、目の前に立ち怒りの視線を浴びせてくる少年が、夜泉夜霊夜じゃないと夫妻は遂に気付いた。
「俺か。俺は黄泉夜霊夜。黄泉夜家の生き残りにして黄泉の選ばれし霊魂だっ!!」
「なっ!!黄泉夜霊夜だと」「しかも黄泉夜家ですって!?」
夜泉夜霊夜だと思っていた人物が黄泉夜霊夜であり、しかも黄泉夜家の者と知り驚きを隠せない夫妻。
「……俺が貴様らに見せられた映像を許すと思うか?」
「……っく!!」
「……貴女、ヤバいわよ。黄泉夜家と言えば、我々九忌家とは違い善の家系よ」
黄泉夜霊夜。黄泉夜家の者に知られては我々の霊魂提供器の技術も九忌家もお仕舞いだ。
「こうなったら、黄泉夜霊夜の口を塞ぐまでだ!!」
「ふふふははははは死になさい黄泉夜霊夜」
夫妻は霊夜を口封じの為に殺害すべく装置を新たに起動させる。
「なっ!!霊魂が沢山だと」
床からゴゴゴッと地鳴りの様な音を轟かせ、禍々しい気を纏った霊魂が無数に現れたのだ。
「さぁ、目の前の餓鬼を霊魂達よ!!呪い殺せぇぇえええ」
「呪い殺す……」
夫の命令に従い、霊魂達が、霊夜への呪詛を紡ぎ始める。
「ぐはっ……」
ドクンと霊夜の霊魂に、身体に呪詛が侵食し霊夜を苦しませる。
「ぐっ…止めろ!!純白霊刃」
霊魂にドクンドクンと侵食してくる呪詛を祓うべく、地を蹴り霊魂達が固まる場所に純白霊刃を放つ!!
放たれし純白の霊気の刃は、動かぬ霊魂達を消滅させ呪詛から霊夜は解放された。
(何だ、何なのだ!!あの武器は、我々の捕らえた霊魂達が消滅しただと、馬鹿な。有り得ない!!)
「なっ!!あの様な武器を私は知らん」
「私もよ!!どうするのよ、口封じも失敗したのよ!!ヒッ」
霊夜の握る霊魂器、黄泉霊刀純白月華を見て動揺を隠せない夫に、口封じも失敗に終わり新たな策を考えようとした妻の顔が青ざめる。
「お前達の負けだ。俺には勝てない、諦めるんだな」
霊夜が純白月華の切っ先を妻の喉元に突き付け告げたからである。
「……ぐっ、どうやら貴方、私達の負けの様ね」
「くそ、こんな事が我等が九忌家が負けるとは!!」
夫妻は遂に諦めたのか、霊夜に対し白旗を上げた。
そんな夫妻に純白月華を突き付けたまま霊夜は口を開いた。
「……お前らは霊魂を私用に使い過ぎた。今、俺の前で夜泉夜霊夜に謝罪っ!!」
謝罪しろと言おうとした霊夜に異変が襲った。
(なんで声が出せない。しかも身体が勝手に!?)
謝罪しろと紡がれし筈の声が出せず、純白月華を突き付けていた筈の腕が勝手にビシッと戻ってしまったのだ
「……親父に母、危なかったな」
「えぇ、私の操り糸を宿らせていなかったら九忌家はお仕舞いでしたのよ」
霊夜の背後から聞こえてくる声。一人は九忌家の息子、九忌だと分かるが、もう一人の少女の声に驚愕した。
(どうして、あの時は確かに夜泉夜霊夜の友達だと言っていたのに!?)
何故なら、その少女は夜泉夜霊夜の友達だった筈の少女の声だったのだから。
「あら霊夜君、驚きまして。私が彼の事は九忌家に頼んだんですのよ。こう言ってね」
そう言って希美は驚愕の表情を浮かばせる霊夜に真実を告げる。
「夜泉夜霊夜に霊魂を宿らせて頂戴」
(なっ!!夜泉夜霊夜に霊魂を無理矢理宿らせる頼みをしたのが希美だと)
何でどうしてだよ。と言う思いが湧いてくる。友達だった筈の夜泉夜霊夜。
その友達に無理矢理霊魂を宿らせる頼みをしている何て歪んでいるとしか思えなくなってくる。
「夜泉夜君は、霊魂を宿らせる実験体には相応しい少年だったのよ。でも手放したくなくてぬいぐるみ化させたのよ」
そして更に非情な真実を口にした希美。しかし、その顔は狂気に染まっていた。




