悪意の糸を刈り尽くせ!!
「霊ー何処に行ったのー!!」
太陽が山に沈み深き闇が姿を現し始める中、その村は行方不明者が続出していた。
「夜泉夜君ーお母さんが心配してるよ!!何処に行ったのー」
「我々は、山の奥を捜索して来ます!!行くぞ」
泣き叫びながら息子の名を呼び続ける母親。その息子の同級生に村の警官達も必死に捜索し続ける。
「……ふふっ、夜泉夜君は私と一緒。彼もあの彼も私と一緒。永遠に私と一緒な夜泉夜君のお人形。うふふふふふふ」
村人総出で、捜索する中、その家の一室では、大事に大事に人形を抱き締める人間の姿があった。
その抱き締められる人形が、まるで離せと言わんばかりに動いていたが徐々に動かなくなり冷たくなっていった……
そして、その村は神隠しの村と呼ばれる様になるのだった。
「……んー温泉♪温泉♪枕投げー♪」
枕投げて修羅倒せー枕投げて修羅倒せ♪
そんな霊夜作、枕投げの歌を歌いながら霊夜一行は、のどかな村にやって来ていた。
「……ちょっと霊夜!!何で私が枕投げで倒されなきゃ駄目なんですか」
そんな歌に当然、抗議の声を上げるのは倒される事になってる修羅である。
「だいたい、枕投げの歌。だ何てダサいんですよ!!」「……てめぇ、修羅」
自分が余程、枕投げで倒されるのが気に入らないのか。霊夜が作った歌までダサいと言う始末。
其に気分良さげに歌っていた霊夜の雰囲気が鋭利な雰囲気に変わる。
「……(あぁ霊夜様の歌を否定するとは、何て無礼な奴でしょう)」
そんな霊夜の雰囲気の変化を瞬時に察した修羅以外の者達は、修羅から離れる。一人、冷たく笑っている凍霊はいるが。
「……あぁ!!修羅、今、何て言いやがった。その口、封じてやる!!」
そして不機嫌マックスな霊夜が、一気に修羅の懐に飛び込む。
「あっ!?待って霊夜、ごめん!!」
懐に飛び込んできた霊夜の、雰囲気のヤバさを感じ謝る修羅だったが、
「今更、遅いんだよ!吹っ飛んでろっー!!」
霊夜は、冷たく謝罪の言葉を切り捨て渾身のストレートを鳩尾に叩き込んだ。
「……あぁー随分吹っ飛びましたね」
ドゴォ!!と何かに激突したであろう修羅の音を聞き、小さく戦は呟いた。
「……自業自得ですわ。霊夜様の歌を馬鹿にするのが悪いんですのよ。ほら霊夜様に置いてかれますわよ」「霊夜ー待ってよ」
スタスタと目的の温泉に、さっさと歩いて行く霊夜を追って、凍霊達も霊夜を追うように目的の温泉に向かって歩き始めるのだった。
気絶している修羅を一人残して。
「……ふぅー此所だな。温泉宿【形人館】あの、予約した黄泉夜霊夜だけど、誰か居ない?」
檜の香りが漂い、精巧な作りの人形が置かれた宿の受付場で呼ぶ霊夜。
「おかしいなー確かに宿の名前は違わないんだけど、おい、黄泉夜霊夜だけど誰か居ないのかよ!!」
シーンと静まり返り受付担当も来ない事にムッとしたのか声を荒くしてしまう。
「んだよ、呼んでるのに来ないとか感じ悪いな」
一向に来ない担当に気分を悪くしたのか悪態付くと、宿を後にしようとする霊夜。
「霊……霊よね!!」
そんな霊夜に声を掛ける人物がいた。
「はっ?アンタ誰なの。俺は知らないんだけど」
突然霊夜に声を掛けてきた着物姿の女性に、知らないとズバリと言う霊夜。
「おい霊君が帰って来てるぞ!!」
「じゃあ、あの大人が霊君だけじゃなく少女まで拐っていたのか!!」
ぞろぞろと村人が霊夜の前にやって来て帰って来たと叫び始め畜生や霊矢を誘拐犯だと叫び始める始末。
「だから俺は黄泉夜霊夜で、アンタ達の霊君って人とは」
違うんだっての。と霊夜が言う事は出来なかった。
「さぁ霊、帰りましょう!!」
霊夜の言葉を聞いていないのか。霊夜の事を霊と呼ぶ女性に手を取られ車に連れ込まれてしまったのだ。
そして、ブロロロロとエンジン音を響かせ霊夜を乗せた車は走り去ってしまった。
「……霊夜様が拐われたー」
「おのれ人間!!霊夜を裏切って尚、誘拐何て許せん」
余りにも突然で怒濤な誘拐劇に、唖然としていた輪廻達だが立ち直るなり、走り去ってしまった車を追おうとするが。
「大丈夫だったかい!!」
「おい誘拐犯め逮捕する」
村人総出ではないかと思える集団が邪魔で追えず、畜生と霊矢がチャリと手錠を嵌められてしまった。
「ちょっと嘘ー!!」
私が何かしたか。霊夜を誘拐した犯人だと!!コイツら何を言ってんのー
ただ霊夜の刺傷を早く癒す為に温泉に来たってのに!!
何が悲しくて誘拐犯だ何て言われなきゃ駄目なのだろうか。
「おやおや逮捕されちゃいましたね」
そんな嘆きを内心してる畜生と違い霊矢は冷静だった。
まぁ、此処は神隠しの村。其に黄泉夜霊夜と霊君じゃ紛らわしいですしね。
明らかに人違いだと気付いてる霊矢は、大人しく村の警官に連れて行かれるのだった。
「じゃあ霊。貴方の部屋だからゆっくり休んでてね」
そう言ってバタンと扉を閉め霊夜を、霊君の部屋に連れて行った女性。
「……霊君ね。確かに間違えそうだな」
ボフンとベッドに座り室内を見回した霊夜は納得したかの様に呟いた。
室内に貼られた写真。
その写真の少年、霊君は霊夜に瓜二つな顔をしていたのだ。
白の様な銀髪。
銀の双眸。
白き肌。全て霊夜に瓜二つだったのだ。
「……失礼します。霊夜様」
コンコンとノック音と共に入って来たのは、この家に仕えて長そうな執事だった。
「……黄泉夜霊夜様でしたね。今回は、奥様の勘違いで誠に申し訳ない。ですが協力して頂けないでしょうか」
「へっ……」
室内に入るなり謝罪と、何かを頼み込んできた執事に、一瞬唖然とするも協力して欲しい事に察しが付いた霊夜。
「……あぁ、霊君として過ごして欲しいんだろ。其より、誘拐事件って一体」
あの母親の様子からして霊夜が違うと分かれば、あの母親がその後に何をするかは検討が付く。
其よりも霊夜は誘拐事件の単語が頭に引っ掛かりを覚えさせた。
「……えぇ、アレは誘拐事件と村人は言ってますが実は神隠しに霊君は合ったと思っているんですよ」
枕投げ対決
霊夜「♪♪〜」
輪廻「♪♪〜」
凍霊「♪♪〜」
修羅「ぐぇ!!ぎゃあ!!ぐはー!!」
修羅の完封負け。




