学園潜みし厄なる者を刈り尽くせ
パラパラッと直撃し砕けた壁の破片が舞う。
「大丈夫か、顔面に殴り込まれた様だが」
「にしても黄泉夜霊夜でしたっけ。随分力有るんですね」
霊夜の拳を顔面に叩き込まれた教師が、ゆっくりと起き上がる。
その顔に見えるは笑み。殴られたと言うのに笑っている。不気味だった。そして教師は不気味な笑みを浮かばせ言った。
「霊夜君の拳からは、まるで冷たい月の様な凛とした気を感じたのでね」
見付けた。見付けましたよ。そう繰り返し呟く姿は、まるで、ずっと探していた物を見付けた者の様な感じがした。
「そうか、其は良かったな」
心配気に声を掛けた同期の教師も、良かったな。と声を掛けつつ気味悪いと感じ距離を取ってしまった。だから、この言葉を聞く事はなかった。
「ウルフェン様、見付けましたよ。黄泉の霊魂をね……」
「皆、今日から少しの間だけだが、一緒に過ごす。黄泉夜霊夜君だ」
「……黄泉夜霊夜だ。じゃあ、宜しく」
連れて行かれた教室に入るなり、霊夜は自己紹介をさせられていた。
淡々と自分の名を言い近くの椅子に言われる前にさっさと座る霊夜。
そんなクールな霊夜の様子に暫し固まっていた教師と生徒達だが、どっと大きな声が響いた。
「黄泉夜霊夜君だっけ!!超かっこいいんですけど」
「あの白とも銀とも言える髪に銀の眸は凛々しいよね」
「……あぁ、ありがと」
まさか入学していきなりの黄色き悲鳴の大合唱を浴び、霊夜は、恥ずかしいのかそっぽを向きながら、言うのだった。
「へぇー黄色い悲鳴聞けて嬉しいんだろうけどさ。黄泉だ何て気味悪いんだよね」
「そうそう、黄泉だけじゃなくて霊夜だ。何て名前まで気味悪いぜ」
黄色き悲鳴が収まり次に霊夜の耳に入ったのは、悪意が込められた言葉だった。
霊夜は、そんな中傷してくる声は特に気にする訳でもなく、声の主を探った。
「……(風紀委員か。風紀を守る奴等が、こんな奴等ね……)」
見回す様にして声の主を探り出すなり、記録の棚から事前に調べ上げた生徒達と照らし合わせた霊夜。
俺に敵意でも抱いてるのか?だとすれば、風紀委員。要チェックだな。
風紀委員達が、自身を睨み付けているのを感じ、視線を前に戻した霊夜だった。
「ちっ…生意気な餓鬼だな」
風紀委員達も、無視する霊夜に悪態付くと前に向き治るのだった。
「我は、凍霊!!黄泉夜霊夜様との未来を約束されし者。気安く触るでないぞ、人間よ」
霊夜が聞いたら、何を言ってんだよ!!と言ってきそうだが、生憎、霊夜は別の教室にいる為、そんな事を言われている等、知る由もなかった。
「あら、随分と我が儘な小娘が私の教室に来たのね。口の聞き方もなっていないのね」
そんな凍霊に、バチバチと火花を散らした視線を送るは一人の女子生徒。
「あら、我は生憎ですが負け犬の遠吠えに、いちいち関わる気はありませんわね」
其に対して、ズバンと無慈悲に切り捨てる凍霊。
「まぁ、随分と妄想が強いかたね。貴女様の旦那様になると申してた霊夜様でしたっけ」
「何、霊夜様を侮辱するってなら許さないわよ!!」
クスクスと笑いながら霊夜の名を口にした女子生徒に、口調が荒くなり問う、凍霊。
「ふふっ、外の会話を耳にしましてよ」
「廊下の会話が何だってのよ……」
そう言われ不審がりつつも廊下の方に聞き耳を立てて見ると……。
ねぇねぇ、壱組の転入生見たっ!!
見た見たっ!!銀髪に銀の眸で超格好良かったよね!!
名前も、格好良かったよね。霊夜だっけ?
そうそう、黄泉夜霊夜。彼女は居ないみたいだよ!!
じゃあチャンスじゃん!!私、告白しちゃおうかしら!!
「………」
廊下に聞き耳立てて見れば、聞こえてきたのは霊夜の事。どの女子生徒も、霊夜の事ばかり話してる。
「……貴女様は、随分と偉そうに宣言していましたわよね。黄泉夜霊夜様との未来を約束されし者だと」
そう言って見下す様な視線を送ってくる。そんな女子生徒の言いたい事が凍霊も分かった。
強く宣言しておいて、彼女ですらない。勘違い女と笑ってやりたいのだろう。しかし、人間の子供に、そう簡単に負ける程、凍霊は甘くも弱くなかった。
「随分と悪趣味な事を仕掛けて来るのね。霊夜様が居ないと言ったのを直接、貴女は聞いたのかしら」
「ぐっ……」
凍霊の言い分に悔し気に顔を歪ませる女子生徒。
そう悪魔で、廊下での会話を聞いただけであり、本人、即ち霊夜の口から聞いてない以上は、決定的な勝ちを得られた訳じゃないのだ
「もし貴女が、私を勘違い女だと笑ってやりたいのなら、霊夜様から聞いたと言えるのかしら。さぁ答えなさいよ」
「……っっ!!気分が悪いから失礼しますわ!!」
そう言って悔しさに狙いが暴かれてた恥ずかしさに、顔を歪ませつつ逃げるように女子生徒は出て行った。
「待ってくださいませー高貴様ーっ!!」
そして高貴に続く様に数名の女子生徒が去って行った。
暫し訪れし沈黙。
「……ねぇ凍霊。じゃあ霊夜様の好きな所を教えてくれない。勿論、狙ってはいないから」
沈黙を破ったのは、三つ編みの女子生徒だった。そのお願いに一瞬、嫌そうに顔を歪ませた凍霊だが、
狙う気はないと聞いて、なら魅力を話してやろうじゃないかと思い話し始めるのだった。
「良かろう!!我が霊夜様に感じた魅力は………」
そして、凍霊の霊夜様語りは何時間にも及ぶのだった。
「ほら、今回から新しい筋肉生徒になる筋肉輪廻ちゃんだ!!皆、仲良く筋肉する様に!!」
「あぁ!誰が筋肉輪廻だ。この脳筋野郎がぁ!!私は冥土輪廻だ。決して筋肉輪廻何て気味悪い名前じゃねぇからな」
輪廻の紹介をしてくれたのだが、筋肉輪廻と言って勝手に紹介をした教師に、怒りつつも自身の正しき名を紹介した輪廻。
「おぉ!!声が大きいじゃないか。その調子で筋肉してくれたまえ!!」
「(……霊夜、私は帰りたいよ!!)近寄るんじゃねぇ!筋肉達磨!!」
はっはっはっはっ!!と、暴言を言われたにも関わらず暑苦しく笑う筋肉達磨に、早くも帰りたくなってきた輪廻だった。
霊夜「今日は俺を紹介する」
輪廻「どうしたの急に」
凍霊「舞台裏話のネタがないらしいぞ」
戦「メタァ……ですね」
黄泉夜霊夜
「よもつやれいや」
黄泉夜までが姓で霊夜が名前だ。
年齢か。人間で言うなら、十七歳。霊魂としてなら正直覚えてねぇな。まぁ人間が生きられる歳は越えてるぜ。
黄泉霊刀・純白月華は俺の霊魂の半魂なんだ。半魂だから腕に宿らせるのも可能な訳だ。えっ半魂を破壊されたらどうなるか?重症は確定だな。
まぁ次回も宜しく頼むぜ。




