学園潜みし厄なる者を刈り尽くせ
……屋敷の一室。
其処には高級感溢れる家具が溢れ、その低反発クッションで寛ぎながら笑む者がいた。
「……ふふ、愚かな愚民共よ。貴様らが知る必要はない事だ。妾の使い魔の餌食になるが良いわ」
大きな画面には、無数の蝿によって目を食い千切られ臓器を突き破られ、体液と血液を濁らせる様に噴き出させ死んでいく人間達の姿が映し出されていた。
「喚いて叫んで死んでいく。何とも楽しい遊びをしているでは有りませんか」
「愚民風情が、幾ら死のうが構いませんからね」
そんな者に近寄り、必死に蝿の大軍から抜け出そうとし飛散する人間を見て冷たく笑う冷淡と控えの男。
「ふふ、さて妾の次の遊びを始めようか」
そう言って起き上がり部屋の一室を開く。
真っ暗で照明すらない漆黒の部屋。その部屋に閉じ込められる様に鎖で繋がれた少年少女。
その表情は、恐怖に青ざめ泣き声すら渇れ、涙すらも乾いてしまった少年少女達に、厄は始める。狂宴の遊びを……。
「さぁ…喰らいな。人の身を皮を喰らって得るが良い……人狼として生まれ変わると良い」
そう言って扉は閉ざされていく。最後に聞こえたのは、獰猛な獣が、ぐちゃぐちゃと肉を喰らう音だけだっだ。
「……佐鳥。おい、佐鳥」
誰だ。誰かが俺を呼んでる。
「おい、早く起きないか!!佐鳥康夫!!」
「はいぃぃぃ!!って根国霊矢警視総監ーっ!!」
怒鳴り掛けてくる声に思わず飛び起きた佐鳥の目に映ったのは、根国霊矢警視総監の姿だった。
あぁ、警視総監が来てる。俺も年貢の納め時かな。さよなら警部の佐鳥康夫。
そんな風に、佐鳥が諦めの境地に到達したと同時に、声は掛けられた。
「……何故、手を引けと言ったのに引かなかった」
「霊矢総監……」
そう言って佐鳥を見る目には、何故言う通りにしなかったと言う怒りの炎が佐鳥には見えた気がした。
「……他の警察官達はどうなりましたか」
その霊矢総監の表情を見て思い出す。あの大軍の蝿に追われて、皆が殺された。でも、もしかしたら自分と同じ様に誰か一人生き残っているかも知れない。
其は一寸先も闇の中に放り込まれた人間が、唯一の小さな光源を求める様な僅かな望みだった。
「……皆、食い殺されたよ。あの署内の生き残りは君と藻部君だけだった」
だが、そんな佐鳥の儚き小さな希望は、悔し気に食い縛り俯き告げられた霊矢総監の非情な言葉によって砕け散る事になった。
はは、何を言っているんだ。この総監様は。
皆、食い殺された。警察官が、蝿に蝿の大軍に食い殺された。
嘘だ!嘘だ!!そんなの
「嘘だぁぁあああああ!!」
佐鳥は、叫んでいた。自身が関わったりした所為に、比良坂署は全滅してしまった。自責の念が佐鳥を蝕み責め追い詰めていた。
そんな佐鳥を見て、霊矢総監は、ただ只何も言わず、佐鳥が落ち着くのを待ち続けるのだった。
どれ程の時間が経っただろうか。鴉は泣き、子供は帰り歩いて行く。日は沈みかけ夜に移り変わろうとしていた。
「……黄泉、冥土、根国の霊魂を喰らいし時、その身は真の力を放ち人界は滅びるだろう」
「……っえ!?」
静寂に包まれていた病室で口を開いたのは霊矢総監だった。
その霊矢総監の言った言葉に佐鳥は驚愕した。何故なら、その言葉は、確か死んだ女性が言おうとしていた事に酷似していたからだ。
「この言葉は、黄泉夜家、冥土家、根国家の選ばれし霊魂達を指す言葉だ」
「選ばれし霊魂……」
聞いた覚えがある。しかも極最近に聞いた気がする。
記憶の海に潜って行く佐鳥に構わず霊矢総監は続ける。
「この霊魂の単語は、黄泉夜家の霊夜様。冥土家の輪廻様。そして我が根国家の凍霊を指すのだよ」
「……っ!?」
記憶の海から一気に飛び出した佐鳥は、今言った名に衝撃を受けていた。
黄泉夜霊夜。その彼が選ばれし霊魂だと言われ動揺した。
もしもだ。もしも、彼、黄泉夜霊夜が選ばれし霊魂なら、彼は既に死んでる事になる。
「霊夜様は、黄泉を監視する死神なのだよ。輪廻と我が娘、凍霊も死神だ。そして、霊夜君達には敵わないが、私も老いた死神なのだよ」
「何を言って……っ!!」
黄泉夜霊夜が、黄泉を監視する死神。冥土家の輪廻も、総監の娘、凍霊も現役の死神で総監自身も、老いた死神だと。信じられない。信じられる訳がない。
佐鳥は、余りにも自分の知る現実と違い過ぎて、理解が追い付かなかった。当然だ。目の前に座る人間が死神だなんて信じられる筈がない。そんな佐鳥を見て、霊矢総監は、何かを感じたのだろう。自分の肩にホルダーから抜き取った銃を押し合て撃った。
乾いた発砲音と火薬特有の匂いが広がる。
「霊矢総監!!何をして……怪我を…怪我を……」
目の前で自身の肩に銃口を押し合て発砲した霊矢総監に、言葉を一瞬失うも、撃ち抜いて血が流れ出てるだろう肩を見て、今度は本当に言葉を失った。
「……信じて貰えたかな。佐鳥警部」
そう、確かに確かに佐鳥の目の前で撃ち抜かれた筈の肩は血も流さず、銃弾は壁にめり込んでいたのだ。
其は即ち、銃弾が霊矢総監の肩を通り抜け壁にめり込んだ。その事実を鮮明に佐鳥に見せたのだ。
「……あぁ、本当に死神なんですね。霊矢総監」
「おや、信じてくれたみたいで良かったよ」
そう言って、何事もなかった様に佐鳥に話し掛けてくる霊矢総監に年期の差を感じた。
「信じるも信じないも何も、目の前で銃弾を肩に撃ち込んだ筈が肩に怪我の一つも無ければ、信じる他にないでしょう」
そう言って苦笑いを浮かべる佐鳥。あれ程に信じられないと思っていたが目の前に起きた現実を受け止める事は容易に出来た。
「……さて、君に私も含めて死神だと教えた理由は分かるね」
穏やかな表情だった霊矢総監が、改めて真剣な表情で話し掛けてくる様子に佐鳥は、大体の検討は着いた。
「……えぇ、黄泉夜霊夜の件には、これ以上関わりませんよ。でも此だけは教えて下さい。貴方が黄泉夜霊夜が敵としてる存在は何者なんですか!!」
佐鳥の関わりませんよ。の言葉を聞いて安心した霊矢総監だが、次の言葉に驚きつつも教えてやる事にした。身を引くと宣言した彼にせめて此だけは教えてやろうと思ったのだ。そして、口にする。その敵の名は。
「黄泉に住み人間を千五百人殺してやると言った姫の名は」
「神……イザナミだ」
霊夜「・・・余り出番なかった」
輪廻「・・・そうね。今回は忘れられがちな霊矢が大半を奪ったわね」
凍霊「霊夜様より活躍する何て生意気よ!!」
修羅「確かに、今回は目立っていたな。今回は目立っていたな」
霊夜「次回は遂に学園編だぜ」
戦「学園編なのに学生らしい事、無に近い位に少ないけどね;」
輪廻「本当ですわね。でも八柱の一角が遂に姿を現すわ」
霊夜「学生らしい事は、ほとんどしてないが次回からの学園編を宜しくな」




