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五百文字の小説

魂込め

作者: 銭屋龍一

 新緑に映えた沢沿いの道を僕は西に向かって歩いている。このまま己を捨て西に向かって歩き続ければ、御獄に入り込むことができるはずである。そこに行き着けさえすれば、僕をふって金持ちの男のところに走った朋子の心を取り戻せるはずである、というのはまったく嘘で、金持ちの男ではあったけれど、僕よりも一千倍は人間ができていて、本当の優しさを知っている男だったのだけど、そんなことは今の僕には関係なくて、どうして僕を朋子がふったのかというのが問題で、確かに僕は自分のことしか考えられない男だったけど、やっとみつけた正社員の仕事を上司を殴りつけてクビになったけれど、それでも朋子のことを大切に思っていたことに偽りはなくて、偽りはないかもしれないけれど、僕は朋子に何もしてやれなくて、そればかりか朋子の給料日には駆けつけて金をせびり、パチスロで何万円もすっていたのだけど、たまに勝ったときは朋子のためにケーキを買って帰ってやったし、そうそう、そういえば御獄のことを教えてくれた婆は、赤い花を手向けなさいと言ったはずだから、僕のバッグパックに入っている赤いバラはきっと御獄でその力を解放するはずで、そうなれば

きっと君はしあわせになれます。


 昼なお薄暗い御獄の奥に入り込み、僕は赤い花を手向けて、一心に祈り続けた。

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