「最後のクレープ」
ユリエのプロローグの最後です。
前回の「死に際のクレープ」の内容が大きく変えました。
同じタイトルだったので気付かなかった方もいたかもしれません。
混乱させてしまいすみません。
「う………ぅん………んんっ?あれ?」
彼女―麻木香奈―は白い床以外には天井も壁も物もない真っ白な空間の中で目を覚ました。
彼女は、倒れていた場所から上半身を起き上がらせて周囲を確認する。
周囲を確認した彼女は、困惑したような表情で、眉を顰めると今度は、自分の体をペタペタと触ったり、見たりして自分を確認する。
「あれぇ~?怪我してない……というか制服が全く汚れてない……」
彼女は、不思議そうに首を傾げた後、自分の頬を抓ってみる。
「痛たたたっ………うぅーんやっぱ夢じゃないのかぁ~」
彼女は、ちょっと赤くなった頬を擦りながら呟く
そして、もう一度周りを確認してから、彼女は導き出された答えを呟いた。
「あちゃ~、私死んじゃったのかぁ~」
彼女は、深いため息をついて両手で頭を抱えた。
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自分の置かれている状況を漠然と理解した彼女がまず最初に後悔したことは、
「クレープ最後まで食べ損ねた~~!!」
だった。
「うわぁ………どうせ最後の食事だったなら最後まで食べさせてくれればよかったのに~~!!」
頭を抱えてぶんぶんと振り回して体全体で
しばらくたって彼女は落ち着くと、大の字に寝て、ため息をついた。
「ハァー……まぁ終わったことは仕方ないかぁー………あ、」
彼女は、真っ白な上から視線を横に向けると何かを気付いたように声を出す。
「えぇっと………何しているんですか?」
彼女が横を向くとそれは見事な土下座をしている白髪の老人がいた。
「すまなかった。娘!!」
彼女に指摘された老人の第一声は、土下座したままの謝罪だった。
「儂の手違いでとんでもないことをしてしまった。許してほしいとは言わん。じゃが、神として……人の運命に携わる神として真に申し訳なかった!!」
老人は、悲痛な声音で何度も何度も彼女に対して謝る。
流石に彼女もこの状況には慌てる。
「ちょ、ちょっとまってください。お爺さん。もう少し説明してください。神ってどういうことですか?手違いってどういうことなんですかっ!?」
慌てたように老人に聞いてくる彼女に老人はハッとした様子で顔を上げた。
「そうか、まだ娘に何の説明をしていなかったの。……すまぬが、娘少しばかり長くなるかもしれんが聞いてほしい。」
老人は白い髭と髪が長い威厳に満ちた雰囲気があったが、老人の表情は暗くかげっていて、本来の神々しい威厳溢れる姿は、失われていた。
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老人は、床しかなかった真っ白な空間に一瞬で畳が敷き詰められちゃぶ台が用意された座敷のような場所を作った。
そこに彼女と老人の姿をした神(以降は老神とします。)は、対面になるように座り、ちゃぶ台の上には、緑茶の入った湯呑が二つ置いてあった。
「えぇっと、老神さんの話をまとめると、老神さんは私達のいう所の『地球』に生きている知的生命体の運命に関わる仕事をしている神様なんですか?」
彼女は、老神から聞いた話をかみ砕きながら自分なりにまとめていく。
「仕事……と言うわけではないが、あながち間違ってはない。」
そして、老神は、彼女の内容に補足を入れいていく
「それで、老神さんの主な役割は、歪な運命への分岐を潰す仕事なんですね。」
「そうじゃ、歪な運命は、世界が持っている修繕力を暴走させるんじゃ、歪な運命を正しい運命に修繕しようとする世界の修繕力によって、時にはその世界の崩壊に繋がる程の規模に発展することもあるのじゃ。」
「それで今回、私の街に大きな歪な運命を持った人が生まれて、その対応の時に老神さんはその人ではなくて誤って私の運命を捻じ曲げてしまった。ということですね?」
「そうじゃ。本来なら娘は、怪我はするが死ぬはずではなかったのじゃ。」
老人は、申し訳なさそうに言った。
――ズズズズズッ……
「ハァ~。でもまぁ、すぎてしまったことは仕方ないですしね~。」
しかし彼女は、どこか達観した表情で、湯呑のお茶を飲みながら事もなげに受け取った。
「……娘を再び同じ世界に生き返らせるというのは、あの世界の修繕力が強すぎてできん。じゃから儂からの謝罪としてせめて、娘が望む限りの願いを叶えよう。」
老神はそう言うと彼女に向かって再び土下座した。
「え!?何でも願いを叶えてくれるんですかっ!?じゃ、じゃあ私頼みたいことがあるんです!」
彼女は、老神の言った言葉に先程と違い喰いついた。
「儂が叶えられる望みは全て答える。」
「やった♪じゃあ――――」
ガッツポーズをした彼女は、自分が一番の望みを老神に言った。
「おばちゃんのイチゴクレープを下さい!!」
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そして、彼女はご機嫌な様子でイチゴクレープをパクついてた。
老神は、そんな彼女を複雑そうな表情で見ている。
「ん~~っ///おいしい~♪やっぱイチゴクレープは完熟イチゴを使ってるのが一番おいしいねっ!!」
「の、のぅ娘よ。娘は本当にそれだけでよいのか?」
おいしいそうにクレープを食べている彼女に老人は困った様子で聞いてくる。
「え?それだけって?クレープを食べさせてくれた老神さんに他に何を頼むんですか?」
彼女は、老神の説明にきょとんとした表情で返す。
「他に何を頼む?」
老神は予想外の反応にオウム返しをしてしまう
「フハッ」
老神は、驚いたように目を見開いてしばらく固まった後、突然吹いた。
「フハハハハハハハハッ………ワッハハハハハハハハハハハハ!!」
そして、大声で笑い出した。
「ワッハハハハハハハハッ!!全てを望みが叶う状況で、願いは一品の食べ物だけじゃと!?ワハハハ!!これは面白い!!」
「え、え?」
突然の老神の豹変ぶりに今度は彼女が目を白黒させて驚いた。
「娘、儂は娘のことが気に入ったぞ!!このような面白き娘。初めてじゃ!」
老神は、先程とは打って変わって神々しく輝いて威厳に満ちた表情で彼女の頭を乱暴に撫でまわす。
「娘!儂からの頼みがあるんじゃ!」
老神は、彼女の頭を撫でながら威厳溢れる声で言う。
「は、はいなんでしょうかっ!?」
未だ、最初とのギャップに戸惑いを隠せない彼女は撫でてくる老神を見上げながら上ずった声で敬語で聴き返してしまう。
「娘の為に儂は最大限の支援をすることを許してもらうぞ!」
そんな彼女に対して老神はそう高らかに宣言した。
「え?……そ、そんなことなら別に大丈夫ですけど……?」
彼女は、老神の言ったことが今いち分からないまま思わず答えてしまった。
彼女がそう老神に答えると
突然!
彼女の体が発光し始め、彼女の体が透けてきた。
「えええっ!?」
自分の体の異変に驚く彼女は、問いかけるように老神を見る。
すると、老神は彼女に向かって笑いかける。
「大丈夫じゃ。それは転生の準備の影響じゃ。娘はこれから、新たな世界で新たな生を受けて生まれ変わるんじゃ。」
「転生!?生まれ変わる!?えええええええええ!?何がどうなってるんですかーー!」
突然の展開に完全についていけてない彼女は、思わず叫んでしまう。
「安心しろ。悪いようにはならん。儂からの詫びの一つじゃ」
そんな彼女を安心させるように老神は言う
「と、ともかく老神さん色々とありがとうございました。クレープとってもおいしかったです!!また会いましょう!」
その老神の言葉に少し安心した彼女は、自分の体が消える寸前老神に向かって感謝の言葉と最高の笑顔を見せた。
彼女の薄れゆく意識の中、老神の最後の言葉が届く。
「娘!来世は楽しく幸せに生きるんじゃぞーー!!」
そして彼女は、異世界に転生した。
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麻木香奈 享年18
死因:事故死
いろいろな感想楽しみに待ってます。
批判もできるだけ詳しく指摘してもらえれば、今後作品を書くときの参考にしていこうと思ってます。(もらえると嬉しいです。)
よりよい作品ができるよう精一杯頑張っていこうと思います。
今後もよろしくお願いします。




