5話 「父の悩み」
ユーグとユリエが再び寝た頃
双子の父親―オルグ―は、執務室でいつものように書類に向き合っていた。
書類の内容は、周囲の魔物の被害、討伐状況、領地で起きてる流行り病対策、今回も不作の農作物の対策、税率の見直し、緊急措置………など上げたらきりがないほどだ。
それをオルガは、机の大量の書類を1人でこなす。
家臣たちもいるのはいるが2人だ。3人で大量の書類を消化している。かなりハードだ。
2人しかいないのは、1人は以前からのオルグより年上の茶髪の偉丈夫の見た目脳筋っぽい1流の魔法使いでもある男性クレンド
もう1人は、3年前からここにいる青年、緑の髪で、細身だが、引き締まっている。
そこそこ剣と魔法が使える(オルグ基準)
昔使えていた家臣の1人の孫、ナックスだ。
もっと手がほしいところだが、進んでアルトリューチェ家に来ようとする者がいないためそれも望めないのが現状だ。
――そして、オルグが書類の半分が消化できたほどで、執務室に走ってくる音が聞こえてきた。
――ガチャ!
「だんにゃさま!大変ですにゃ!!大変ですにゃ!」
「……落ち着けフェルミ。何がどう大変なんだ?」
執務室に混乱しながら入ってきた猫人のフェルミ―耳と尻尾、細い瞳孔以外は人間と変わらない―現在二人いる内の1人であるメイドだ。
「スゥーハァー……―――先ほど別邸のユーグ様、ユリエ様の部屋に魔力とは違う何かの似た揺らぎがありました、にゃ」
ガタリっ!
「それは本当か!!直ぐにでも――」
「は、はいですにゃ!ただ、もう感じません、にゃ」
「な、何っ!?消えたのか?2人はどうなっていた?」
「そ、それは穏やかに眠っていました、にゃ」
「………(魔力の暴走ではないのか?しかし魔力が暴走すると魔力を急激に失い苦しいはずだ。今回は大丈夫だったとういうわけか?)」
この世界では種族全てに生まれながら大なり小なり魔力を持っている。
そして、魔力を感じる前に必ず一度暴走する。暴走することで自分の中の魔力を感じることができるようになる。
魔力が大きければ大きいほど、暴走する時期と規模が変化する。
そして、ユーグとユリエにはマリヤ以上の膨大な魔力を持ち、すでにいつ暴走してもおかしくない状態になっており、被害が少なく済むように別邸の部屋にずっといるのだ。
フェルミは、勘が鋭いため魔力などに敏感だ。
そのため今回も来たのだが……
「魔力とは違うとはどういうことだ?」
「えっと……よく分かりませんにゃ」
困ったような顔をしてオルグの質問に答える。
「……わかった。引き続き何かあったら報告を頼む(今考えてもわからぬか……)」
オルグは考えをやめて、フェルミを下がらせる。
再び仕事に戻るオルグだが、効率は各段に下がり、時折不安そうに別邸の方向を見ていた。
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――コンコン
「……むっ。入れ」
少しばかり考え事をしていたオルグは、扉をたたく音に現実に戻る
――ガチャ
「失礼します。追加の書類です。……それと一度休まれたらと、ハーブティーです。」
「ああ、すまんなセバス、少し休憩する。」
入ってきたのは、細身の執事服を着た白髪の白い髭が立派な背筋が伸びた老人、いろいろできる謎の多い人物
今もどこからか、ティーカップと湯気が出ているポットを取り出している。
「………ライルとエリナの様子はどうだ?」
「ライル様は治まってきていますが……エリナ様は重いです。今はネマとマリヤ様で交代で回復魔法を使っていますが、持つかどうかは分かりません」
「そう、か……私も子供たちの為にも――」
「旦那様。旦那様がすべきことは、他にあります。ライル様、エリナ様のことは、ネマとマリヤ様に任せてましょう。大丈夫です。ライル様もエリナ様も旦那様とマリヤ様の子です。ここは、信じて旦那様にしかできない仕事をしてください。」
席を立ちあがろうとしたオルグは、セバスの言葉に押し留められる。
セバスの言葉にオルグは反論することができず、無言で俯いたままゆっくりと座った。
――メキメキメキ
オルグの握った手から音が漏れる。
力の入れ過ぎで手から血が垂れる。
「私には……何もできやしないな。」
「………」
オルガの心の底から絞り出すようなつぶやきにセバスは答えず、ただ静かにそこに立っていた。
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その2日後、オルグの姿は屋敷はなかった。オルグの執務室には処理済みの書類の山と
『王都へ行く。3日で戻る。』とだけ書かれた置手紙だけが残されていた。
オルグの不在に気付いたセバスは、置手紙を見て
「帰ってきたら、仕事漬けですよ旦那様」
そう一言つぶやいてセバスは、執務室を後にした。
ユリエたちは暴走しても大丈夫な緊急措置です。
そのため、外に出すことができません
ライル、エリナはユリエ達の兄弟
2人とも最近流行りの病にかかっています。
広範囲で流行っているため、薬も不足しているため手に入りません
マリヤとネマの回復魔法(傷には効果が高いが、病には低い)では完治はできず、症状を緩和する程度
そのため2人の自然治癒に頼むしかないという現状
オルグにとって2つのことはとても歯がゆいでしょう
4/28内容を一部加筆しました。




