Halloweenと妹の苦労
「trick or treat!!」
「‥‥は?」
10月31日はHalloween!
なので、僕は一ヶ月前から準備をしていた。衣装やらお菓子やら飾り付けや。もうありとあらゆるもの全て!
そして、本日! 僕の努力が報われる日!と思ったのだが‥‥。
バイトから帰宅した兄貴が、僕の格好、家の変わり様を見て発した言葉があの一文字だった。驚くわけでもなく、“すごーい!”の言葉を言うわけでもなく。ただの、「は?」の一文字だった。
‥‥あ、いや、ハテナまでいれたら二文字か。
「‥‥ぇ、何してんの?」
「‥‥と、trick or treat !!」
マジで何してんの?オーラが半端なかったので、もう一回Halloween定番の台詞を言ってみた。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
沈黙。
「‥‥ぇ、ここ、俺ん家?」
そんな沈黙を破ったのは兄貴だった。
兄貴は、家中をキョロキョロと見回す。
「あー、うん。正真正銘アンタん家だよ」
「へー‥‥。その証拠は?」
‥‥何言ってるんだこの人。
僕のこと認識してる? ちゃんとその目に映ってますか?
兄貴は僕と家を交互に見ながら、そんな信じられないことを発した。
「おい、自分の妹もわかんねぇのか?」
僕は自分を指差しながら、家の証拠となる台詞を吐いた。
「‥‥‥‥」
‥‥そしてまさかの無言である。
コイツ、本当に自分の妹と認識してないの?
‥じゃあ、今誰と喋ってんだよっ。まさかの知らない人か?!
「‥‥ぁ、本当だ」
あれから沈黙が続いたが、やっと理解したのか兄貴が口を開いた。
てか、何分玄関で突っ立ってる気だ?
「いや、本当だって。いったい誰だと思ってたんだ?」
「そこらの受験生」
「‥‥いや、どーやったらそうなる?」
本当に兄貴の思考はわからない。
第一、そこらの受験生が何故知らない人の家に勝手に忍び込んで、あたかも自分の家ですよーな振る舞いで、家の飾り付けしてそのうえ仮装って‥‥おかしいだろ。
大丈夫か、その受験生。
「ん、何か受験に失敗して失敗して、怒り狂った受験生がやったのかと‥」
「‥‥ソウデスカ」
まぁ、そりゃ、狂ってないと出来ない行為だよな、うん。
兄貴はやっと家に上がり込み、家中をウロウロと歩き回る。多分、飾り付けを見ているのだろう。
頑張ったからね、僕。
兄貴がバイトに行った瞬間、物凄い早さで飾り付けしたんだもん。そのうえ仮装までして。
‥‥ある意味人間て限界がないかもね、生物的に考えて。
「お前一人でやったのかよ?」
「おう。凄いだろ?」
ニヤリと笑い、どや顔をする僕。
兄貴はそんな僕を綺麗にスルーしてくれやがった。
「ふーん、まぁ、凄いじゃん。写メっていー?」
そんなにすごいか?
ま、まぁ、一ヶ月前から計画してたからなっ、そりゃ当たり前か!
僕は写メっていー?の返答に、満面な笑みで「おうっ、遠慮なくどんどん撮ってくれ」と言った。
兄貴は、ポケットから携帯電話を取りだし、カメラ機能を発動させパシャパシャ撮り始める。
「これ全部100円均一?」
「当たり前だろ。100円均一はすげーよ。楽園みたいだった」
「そこまでか?!」
いやでも本当に凄かった。
僕が求めていたのが全部揃っていたからだ。
恐るべし100円均一!
「そうだ、アイツにも見せよ♪」
『アイツ』とは“お友達さん”のことである。
兄貴の口から第三者が出るときは、大体“お友達さん”か“バイト先の後輩”だ。
‥“バイト先の先輩”と言うのは、最近入ってきた奴で、兄貴曰く結構なイケメンらしい。
今ではもう、何か仲良くやってるらしい。イケメンなのに好い人らしいのだ。
‥‥兄貴、イケメンは皆性格が悪いと思ってるから。
それで、先輩である兄貴が面倒見てたら懐かれたらしいのだ。
兄貴がいっていたことなので多分本当だと思う。
と、ここで、兄貴の携帯が鳴り響く。
あいしあう~ふた~り~ しわせ~の~そら~
とな~りど~し あ~な~た~と あ~たし さくらんブチ。
‥兄貴の着メロである。
さくらんぼって‥‥古くね?
多分“お友達さん”からだと思う。さっき送ってたからね。
兄貴は携帯画面とにらめっこしていた。というか、顔が驚きの顔でいっぱいだった。
‥‥どうしたんだ?
「兄貴? どーしたんだよ、んな固まって」
僕は携帯片手に固まっている兄貴に近づく。少し背伸びして携帯画面を覗く。
──‥‥このあと見なければ良かったと後悔することとなる。




