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兄貴と僕の行事歴(仮)  作者: pumpkin@
大晦日(2012→2013)
20/21

大晦日の定番 2


 ズルズルズル‥‥。

 ズルズルズル‥‥。


 炬燵の中で温まりながら、年越しのカウントダウンを見ながら──年越し蕎麦をすすっていた。

 何故食べているのかと言うと、まさかの兄貴が用意してくれていたのだ。

 僕が自分の部屋を片付けている間に、急いで買い出しに行き、作ったとのこと。

 もちろん、僕は今年はコンビニの弁当で年を越すと思っていたので、リビングに戻って年越し蕎麦があったときの衝撃は大きかった。と、同時に一気にテンションが上がり、今日一日の疲れは全部吹き飛んだ。

 そのくらい、嬉しかったのだ。

 年越し蕎麦。

 こんなにも年越し蕎麦を、有り難く思いながら食べたのは初めてだ。

『もう少しで年越しますよっ! さっ、何か今年を振り返っての感想のほどを‥‥』

 テレビの画面の向こうでは、もう少しで年を越すと言うことで2012年を振り返っている。


「‥‥お前、2012年はどーだったよ?」


 兄貴が視線はテレビに向けながら、しかし言葉は僕に向けて問いかけた。

 僕はちゅるちゅるちゅると、蕎麦をすすってゴクンと飲んでから答える。


「そうだなぁ。‥‥クリスマスの事しか覚えてないんだけど」


 兄貴と兄貴の“お友達さん”と僕の三人で過ごしたクリスマス。

 “お友達さん”の初めてのお泊まり。

 初めてのケーキ作り。

 初めて──家族以外の人と過ごした、クリスマス。

 “初めて”が多いので、クリスマスしか思い出が残っていない。


「はぁ? ‥‥お前結構記憶力ねぇんだな」


 兄貴がどこか勝ち誇ったような顔をしながら言った。


「じゃあ兄貴はどーだったのさ?」


 ちょっとカチンときたが、ここは抑えて。

 僕は逆に兄貴に問いかけてみた。

 兄貴は箸を意味もなく、開いたり閉じたりしながら答えた。


「そーだな‥‥。あ、ハロウィンとかあったじゃん?」

「あぁ‥‥」


 アレはある意味苦い思い出である。

 一生懸命準備をした僕の努力は、“お友達さん”による一通のメールのせいで壊されることとなる。が、それはイタズラ心でやったもので。

 それを知った瞬間の脱力感たら半端無かった。


「アイツ、結構イタズラ好きだったんだな」

「イタズラにもやっていことと、悪いことがあるよ」


 心臓と精神にね。

 僕は最後の麺をすすり、汁を飲んでから片付ける。

 中々うまかった。

 兄貴結構料理うまいね。


「うぃー、寒い寒い‥」


 手をすりすりと擦り合わせて、温める。手だけしか温まらないのに、これをやったら全身に熱が行き渡りそうな感覚に陥る。

 僕は茶碗を水につけたあと、急いで炬燵へと戻る。

 と、すると次は兄貴が食べ終わったのか立ち上がった。

『あーあーっ、もうそろそろですっ! カウントダウンスタート!!』

 テレビの中の人間どもが騒ぎだす。

 あと、30秒‥‥。


「兄貴ー、もう今年終わるよー」

「待って待って」


 待てねーよ。

 兄貴は手をすりすりと擦り合わせてから戻ってきた。

 ‥‥やっぱり皆それやるよね。


『あと、20秒ですよー!!』

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」


 僕と兄貴は黙って、ただただ待っていた。

 今年が終わるのを。

 そして、新しい年になるのを。


「おい」


 あと、10秒のとこで、兄貴が急に話しかけてきた。

 僕はんー?と適当に返事をした。


 5。

「今年は色々あったけどよ」

 4。

「うん」

 3。

「その‥‥」

 2。

「早く言えよ」

 1──。


「ありがとな」


『happy new year !!』

「‥‥‥‥」


 テレビの音のせいで聞こえなかったが、──微かに聞こえた、“ありがとな”は、僕の中でずっと響き続けていた‥‥。



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