12月24日
シャンシャンシャンシャン‥。
ジングルーベール ジングルーベル すずがーなるー♪
と言うわけで。今日は12月24日。
クリスマスイブだ。
「なぁ、お前サンタに何お願いするんだ?」
うん、どうした兄貴。
今日ものんびりとパソコンで絵を描いていると、兄貴がまた唐突な質問をしてきた。
「え、や。あの、兄貴? 僕今年でもう高1だよ? 分かってる?」
「‥‥? 当たり前だろ」
「じゃあ何でサンタに何お願いするとか聞いたんだ?」
僕はパソコンの画面を見ながら手を動かして話す。
そのため、たまに間違える。
兄貴は最近ハマっている雑誌を読んでいるのか、ペラと紙をめくる音が聞こえる。
「はぁ? そりゃお前───」
一息置いてから次の台詞を吐いた。
──成人男性が言うべき台詞ではない台詞を。
「サンタに言わないとプレゼント貰えないだろ。お前プレゼントいらねぇの?」
「‥‥‥」
あれ、兄貴って成人してるよね? だから僕の“兄”なんだよね?
僕は、あまりの衝撃にペンタブを置いた。そして椅子をくるりと反転させ兄貴の方向を向く。
そこには真面目な顔をした兄貴が‥。
うん、これはマジだ。
「や、あのさ‥サンタって」
「はぁ、お前はサンタがいないと思ってるのか? 夢がないなぁ。夢を持て夢を」
え、どうしたの、兄貴。
「いいか。子供はな純粋で出来てるんだ。純粋にサンタを信じて、純粋にお手紙に自分の欲しいものを書くんだ。だからこの頃の子供は輝いて見える」
「‥‥‥兄貴は何が欲しいんだ?」
何やらぐちぐちと言い出してきたので、僕は兄貴にされた質問を逆に聞いてみた。
もちろん単純の固まりと言っていいほどに単純で出来ている兄貴は、その質問に答える。
「そうだなぁ‥。まぁ、金が欲しい」
「‥‥‥」
てめぇ、コノヤロー。さっきまで夢がなんたらとか、純粋がなんたらとかほざいてなかったか、おい。
僕は「それは誰でも欲しがるよ」と言って、またパソコンに向かいペンタブを握りしめ絵の続きを描く。
「あ、そえば、明日クリスマスだろ? アイツ誘ってさパーティしようぜっ!」
そう言われて僕は走らせているペンタブを止めた。
それに気付かずにペラペラ喋る兄貴。
「そうだなぁ、ケーキとか作ってさ。七面鳥‥は手に入らないからなぁ。てか、ツリーどこだよ、ツリー。やっぱりクリスマスつった、ツリーだろ。‥‥って、おい、聞いてるか?」
「‥‥ぃ‥‥ょ‥‥」
「あ?」
「何でそれを早く言わねぇんだよっ、馬鹿兄貴がっ!!」
「えっ!?」
急に僕が怒鳴ったので驚いたらしく、と言うかそんなことを言われるとは思わなかったのだろう。目をまんまるにさせて僕を見つめていた。
それでも僕は構わずに続ける。
「そんな行事をやるときには僕は数ヵ月前からコツコツと準備をするんだよっ!! 今からそんなこと言われても遅いよっ! ったく、馬鹿兄貴がぁっ!!」
ぜえはあ、と肩で息をする僕。
兄貴は固まったままただ僕を見つめることしか出来なかった。
落ち着いた僕は、何故か急に恥ずかしくなり、椅子にどかっと座り込んだ。顔を俯かせて。
しーん、と重い沈黙が僕と兄貴の間を駆け巡る。
「‥や、あのよ‥」
数秒して口を開いたのは兄貴だった。
僕は顔が会わせられず、俯いたまま兄貴の話を聞いた。
「アイツと一緒に材料買って、飾り付けして‥‥アイツさぁ一人っ子らしいんだよ。だから大勢でこういった準備?っつーの? そういうのがやりたいとか言ってたからさ。‥だから、その‥」
兄貴の言いたいことは粗方分かった。
「───うん。明日、“お友達さん”誘って‥色々材料買いに行こうか」
「おうっ♪」
僕の返事に安心したのか、嬉しそうに返事をした兄貴。
兄貴はそこらへんに置いてあった自分の携帯に手を伸ばして弄り始めた。
多分“お友達さん”にメールを打ってるんだと思う。
‥買い物かぁ。何が必要だろうか。
ツリーやツリーの飾りつけはあるから‥やっぱり料理の材料とか、ケーキだよな。
「あ、兄貴」
「ん?」
「クリスマスケーキ、僕が作っていいか?」
「‥‥ちゃんと食えるのを作れよ?」
「失礼だな、おい。───兄貴よりは美味しいケーキが作れると思うよ」
「なら良いだろう」
いいのかよ。
兄貴が「アイツ明日行けるってさ」と言って上機嫌に風呂に入りにいった。
「‥どんだけ楽しみなんだ」
と言ってる僕も、実は楽しみだったり。
さて、どんなケーキを作ろうか──。




