客室にて
いわゆるプロローグです。
緑豊かな小国の《豊穣の国》リャクウォン、その王城の一室、窓は大きく開かれ、心地良い風と美しい庭が庭が展望できた。乳白色の大理石の柱、床には色鮮やかな絨毯が敷き詰められ、木目の美しい家具と大きなソファが置かれていた。
そのソファには、明るい栗色の髪に金の瞳の十二歳になるヴィヴィアンとその姉のである銀髪に碧の瞳の14歳になるファティナ、さらにその二人の母親の銀髪に蒼の瞳のリャクウォン王妃 シシリーが座っており、その正面には銀髪に空色の瞳を持つ青年が一人小さな竪琴を抱え、その横に銀灰色の猫が丸まっていた。
「よく来たのぅ。おぬしが居らんなん間、この娘らが寂しがっておったぞ」
シシリーがそう言うと青年が小さく笑いながら
「ありがたきお言葉、ですがわざわざ私の部屋に来られなくても、こちらから参上いたしましたが…。」
「だって、待ちきれなかったの!座長のザカルドは父様たちと難しいお話ばっかりだし。つまんない。」
ヴィヴィアンが身を乗り出して少し拗ねた口調で言った。
「ヴィー、落ち着きなさい。スタファはしばらくこの王都に滞在するのでしょう?時間はあるのだから、ゆっくり話を聞きましょう。」
ファティナはヴィヴィアンに負けないぐらいの期待を込めた輝きを瞳に宿してスタファを見た。
スタファは小さく溜息をついて
「分かりました。どうやら御三方は護衛を撒いた上にこの後の予定をすっぽかす気でいらっしゃる。ちょうど新しい話を仕入れてきましたので早速、話しましょう。少し長い話になりますので、途中休憩を挿みますが、宜しいですか?」
「「「かまわないわ。」」」
スタファは竪琴を小さく奏でながら、こう言った。
「では、『ここじゃないどこか』の話を」