徒歩移動、天気晴朗なれど先行き不透明なり。
朝日とともに目覚めて、簡単な朝食のあと、焚き火の始末をすませ、出発する。
昼まえには、次の《界》につながるゲートに到着する予定だ。
次の《界》はシェイディア。陸よりも海の面積のほうが広い海洋世界だが、そのわりに水棲種族が少なく、陸棲種の獣人族が多く暮らしている、と聞く。
ここリ・カーテよりもはるかに広く、シェイディアから次の《界》へのゲートは、リ・カーテからの到着ゲートとは違う陸にあるため、船での移動だけで数日はかかる見込みだ。海が荒れていなければいいが。
「獣人族って、けっこう排他的だって聞いたけど…」
「ああ…うん。そんな話は聞いたな…」
昨夜遅くまで語りあったおかげか、お互いにいくらか気心が知れた者どうしのような、少なくとも昨日よりは気安い感じで会話しながら、道を歩く。
「さすがにゲート近辺はそんなでもないだろうけど、獣人以外には物は売らん!とか言われるとイヤだよな」
「いや、商人もいるはずだから、物の売り買いには問題ないだろ。そうじゃなきゃ、他界にゲート解放とかしないだろうし」
自然発生型のゲートでも、中には自由な通行を許可されないものもある。《界》そのものが閉鎖的なところだったり、あるいは、ゲート開口部の位置に問題があったり(機密施設のそば、とか)と、理由はさまざまだが、リ・カーテからシェイディアのゲートは、「制限つき」ではなかったはずだ。というか、制限つきのゲートなら、戦士隊の指定ルートからは外されているはずだし。
そのへんを、指令書といっしょに渡されていたゲートマップを見ながら言うと、デュークはなにやら微妙な顔つきになった。
「…親父から聞いたことあるんだけどさ…。シェイディアの獣人族のうちの、人狼族には気をつけろ、って」
「気をつける?具体的に、どんなふうに?」
「いや、そこまでは…。俺自身が子供のころに聞いた話だし。ただ、あんまり関わるなみたいなことは言ってたと思う」
「関わるな、か…難しいだろうな」
俺はゲートマップを見直した。
いま目指しているゲートの開口部は、シェイディアの人狼族のテリトリーに繋がっている、と書かれている。
なんとなく、嫌な予感がした。
短いです。
次回はシェイディア編に突入………、できるといいな…。