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半人前だと、自覚を持った夕方。

街の北門を出てから、目的のゲートまでの道を歩く。

街の近くはまだ、石畳で舗装されていたが、数時間歩いて日が傾きだすころには、道は石畳のかわりに砂利を敷きつめてあるものに変わっていた。

周囲の景色は、腰くらいの高さの草が生えた草原だ。ところどころ、まばらに樹が生えている。

樹の根元は草がなく、旅人が休憩や野営に使ったような、火を焚いたあとがあったりする。もう少し暗くなったら、俺たちもああいった"休憩所"のお世話になるんだろう。

今夜の食事は、北門のそばで仕入れたパンと果物で済ませればいいか。今は気候もいいし、マントにくるまって眠れば、それほど寒くはないはず。


「なあ、デュ………、あれ?」


横を見るとデュークがいない。いつはぐれた!?


「ん、呼んだか?」


と、思ったら斜め後ろから答えがあった。

デュークはかがんだ姿勢から、身体を起こしたところ、らしかった。


「……なにやってるんだ?」


「何って…」


言いながら、当然のような顔で、デュークは片手に抱えたものを見せてきた。

…枯れ枝?


「今日は野営するだろう?だから、薪にする枯れ枝を拾ってるんだ」


暗くなったら探せないから、歩きながら集めておくんだ。

さらっと言うデュークの背には、街を出るとき背負った荷袋のほかに、そうやって集めたらしい薪を小分けにした束がいくつか増えていた。

い、言われてみれば……。

確かに、町中とちがって、日が落ちてしまえば真っ暗になるだろう。野獣よけにも、焚き火を焚くのは基本中の基本。まして俺自身、道端の"休憩所"の焚き火のあとには気づいてたのに、肝心の焚き火を「どうやって」焚くか、なんて考えになかった。薪がなければ焚き火なんてできないってのに!


「魔法使いも電気も乏しいような、俺んとこみたいな辺境出でもないかぎり、思いつかなくても無理ないさ。気にすんな?」


なんの含みもないことがありありとわかる顔で言われて、俺は自分の顔が赤くなるのが自分でもわかった。悪い、と聞こえたかすらあやしいほど小さく返すのがやっとだった。

街中でのようすから、世慣れていない「田舎のニーちゃん」だと、心のどこかでまだ、この相棒を軽く見ていたことに、いやでも気づかされたからだ。

しかもデュークは気にもしてない。

…ダメだ、俺。

入隊試験に受かったからって、一人前じゃないのは俺自身だってそうなんだ。デュークに「いろいろ教えてやらないと」とか思ってる時点でアウトだ。俺だって、こいつに教えてもらうことがたくさんあるんだ。

ばちん!と音が出るほど強く、自分の両頬を叩いた。

よし、リセット!


「すまんデューク。俺、実際に野営とかするのは初めてだから、本で読んだ知識くらいしかないんだ。具体的にはなにをすればいいかとか、教えてくれないか?」


「ん、そうだな。薪は俺が集めたぶんで足りると思うから、あとは──」



それから日が暮れきるまでのあいだ、デュークに教えてもらいながら、俺たちは野営の準備を整えたのだった。

「都会」初心者と「田舎」初心者。

お互いに相手に教えてもらうことがあるんだと、やっと自覚してくれたようです。

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