門の街で。
リ・カーテ。
「希望の門」を繋いでもらった、門の街と呼ばれる《界》だ。
門の街、なんて呼ばれるだけあって、この《界》には、ちょっと他の《界》では考えられないくらいの数──27個もの《門》がある。
しかもこのリ・カーテそのものがあまり大きくないので、それぞれのゲート同士の距離がそれほど離れていない(遠いものですら、徒歩で2~3日の距離にある)から、異界巡りの旅行者の利用が多く、旅の中継点としてかなり栄えている。
当然、人の数は多い。
「ふわー…」
隣でぽかんと口をあけて惚けているデュークは辺境出身と聞いているから、なおさら、これだけの規模の街を見るのは初めてだったんだろう。開いたままの口から妙な奇声がもれたきり、固まったデュークが再起動する気配はない。
さっきから通行人が、邪魔になる位置で突っ立っているデュークに迷惑そうな視線を送りながら何度も通りすぎていくが、それにも気づいた様子がないのは、ちょっと笑える。
…が、俺もそろそろ周りの視線が痛くなってきた。
「おーいデューク、そろそろ帰ってこいよ~?」
「…、あ。悪い…びっくりしてた」
見りゃわかる。とは、言わないでやった。
「びっくりしててもゲートは歩いてきてくれないぞ?とっとと準備して、次のゲートに出発しようぜ」
「あ…うん、そうだな」
素直に頷いたデュークを連れて、この街で補充していく予定だった携行食糧を扱う店を探すため、道にあふれる人波に踏み込んでいく。
デュークが惚けているあいだに目星をつけた店は、通りの反対側。
「はぐれるなよ」
「わかってる」
短く声をかけあって進む。俺はともかく、デュークはこんな人混みを歩くのも不慣れだろうから、気をつけてやらないと本気で迷子になっていそうだ。…ってああ!言ってるそばから!
「デューク、違うこっちだ!」
人の流れに押されたのか、見当違いの方向に流されていきそうになっている。手間のかかるヤツだなぁ…!
「悪い…」
謝られながら、目当ての店を目指す。
結局そのあと3回同じことをくりかえし、無事に携行食糧を買えたのは、昼に近くなってからだった。
長くなりそうなので、門の街編をいったん切りました。
プロット練ってたら、頭の中で主人公2人が勝手に漫才みたいなやり取りをはじめてくれて、どんどん長く……。
私のなかでのこの2人って、すごく動かしやすすぎて逆に困りますσ(^_^;)