予感
翌日、ゆりあを待っていたのは、怖い顔をした奈々枝だった。
「おはよう。」
そう声をかけたゆりあ、奈々枝の顔を見て怒っているのがわかった。
「どうしたの?」
「どうしたのって?」
怒り出す奈々枝。
不思議そうに見るゆりあに対して
「かわいい顔して・・・よくも・・・」
「なんなのよ。一体?」
「私見たんだから。」
「だから、何を」
「抱き合ってるのを」
「誰が?」
「そこまで、しらばっくれる気?」
そこに、雄太が通りかかっていた。
「本当になんなの?」
「昨日、樋口さんと抱き合っていたの見たんだから。」
「えっ?」
驚くゆりあ
その声は雄太にも聞こえていた。
「どうなのよ・・答えなさいよ・・」
声をあげる奈々枝
「なんだそのことか・・・」
ヘーゼンと答えるゆりあ。
「何だとは何よ。じゃぁ、あなた達そんな関係なの?」
そこへ
「本当なのか!!」
雄太が入ってきた。
「なぁ・・ウソと言ってくれ。」
「もう・・最後まで私の話を聞きなさい。」
ゆりあが声を上げた。
「じゃぁ・・いいなさいよ。」
「本当に・・昨日、会社を出た時に、自転車にぶつかりそうになったの。
それを樋口さんが危ないって、手を引いてくれたの、そしたら、倒れそうになった
わたしと抱き合う格好になったの。ただ、それだけよ・」
「本当?」
「本当か?」
疑う二人
「本当よ。ただそれだけのことよ・・・」
「じゃぁ・・・付き合ったりしてないわよね。」
聞きなおす奈々枝
「だって、2回しかあってないのよ。どうやって付き合うの」
「じゃぁ・・なんで、樋口さんが会社にいたんだ。」
今度は雄太が聞いてきた。そこへ、奈々枝が続けた。
「そうよ、急用を思い出したって、私を置いて帰ったのよ。ひょっとして、ゆりあに会いに来たんじゃ・・」
奈々枝の言葉にあきれるゆりあ・・
「ば・・」
言葉に詰まったゆりあを見て奈々枝は
「ひょっとして? 図星だった?」
「ゆりあ本当か」
思わずゆりあの両肩を持ち叫ぶ雄太、ゆりあは両手を前に出しその手を払いのけた。
「あのねぇ・・・あなた達・・・樋口さんと私をくっつけたいの?」
「そんなこと言ってないわよ。」
「だって・・そうとしか思えないじゃない・・・」
「開き直る気?」
「開き直るですって?樋口さん偶然戻ってきただけじゃない。なんで私がそこまでいわれないといけないの?」
「じゃぁ・・・なぜ? 樋口さん?会社に戻ったの」
「それは・・・忘れ物をとりに来たのよ。」
「なんでそんなこと知ってるのよ。」
「樋口さんから聞いたの」
「じゃぁ、なぜ、ゆりあがいたんだ。」
「あたしは、仕事で残っていただけよ。本当に疑り深いのね、お二人さん。もういいわね・・」
ゆりあは、二人をおいて、仕事場へ向かった。
そこには、翔が一人でいた。
「一人ですか・・」
「はい。」
振り向く翔、どきっとするゆりあ・・
「今日は、石原さんと打合わせだと聞いてますが。」
話しかける翔をじーっと見つめるゆりあ・・・
「石原さん!!大丈夫ですか?」
言う翔の一言が彼女をわれに戻した。
「あっ・・いや・・・」
「どうしたんですか?」
「別に・・さて・・・打ち合わせを始めましょう。」
二人は打ち合わせに入った。