雨宿り
民宿に着いた二人、女将が迎えた。
「ちょうどよかったわ。あと一部屋だったのよ。」
「えっ?」
二人は驚いた。
「あの~」
ゆりあが聞こうとすると
「いいじゃないの、ご夫婦?失礼・・カップルでしょ。」
「ささ・・」
女将が言うと
「じゃぁ・・俺は、いいわ」
翔が言って出ようとすると
「私が・・・」
「どうするのお二人さん。」
少し怒り気味の女将・・・二人を見て
ため息をついたあと、二人の後ろに回り、
「もう・・とりあえず。部屋へ・・」
二人の背中を押した。
「えっ?」
「あっ?」
驚く二人は無理やり部屋に放り込まれた。
「お風呂は、一階だから・・それとこれから、食事お持ちしますから・・」
女将が部屋を出ようとした時だった。
「すみません。」
翔が女将に声をかけた。
「なんですか?」
「シップあります?」
「しっぷ?あると思うけど・・どうしたの?」
「彼女、足くじいたみたいで・・」
「そう、わかったわ、食事のときに持ってきます。」
女将は、部屋から去った。
部屋に残された二人
「あの~」
同時に声をかけてしまった。
「そちらから・・」
「いえいえ・・そちらから・・」
気まずい空気が流れる。
「すみません。今日は・・」
そう話し始めたのはゆりあだった。
「いえ・・ところで、お名前は?」
「石原ゆりあです。あなたは?」
男は、少し考えて
「石原さんですか、俺は、樋口翔」
翔が話を続けようとすると
「私、婚約者がいるんです。だから」
唐突にゆりあが言い出した。
「だから?」
怪訝な表情でゆりあをみる翔
「だから・・」と話が続かないゆりあ
「ひょっとして、・・」
がっかりした表情をする翔
「いきなり、初対面の人にそんなことしませんよ。それに・・」
「それに?」
「あっ・いや・・なんでもない。」
話していると、女将が入ってきて
「食事の用意ができましたから。食堂まで、・・・あっ・・これシップね。」
そう言って女将はシップをおいて行った。
翔は、シップをゆりあに渡した。
「ありがとう」
受け取ったシップを張るゆりあ・・
いけない・・と携帯を見る。
しかし、電池がさっき切れたのを思い出した。
どうしよう雄太と約束をしていたのに・・・
一方、雄太は連絡がつかない、ゆりあに対し焦っていた。
「よいしょ」
立ち上がる翔、それを見ているゆりあ
「食事でもどうです?」
「あっ・・はい。」
ご飯を持ってくる女将・・
「女将さん」
声をかける翔
「なにか?」
「携帯の充電器ある?」
「ええ・・」
「あとで、ちょっと貸してもらえます。」
「いいですけど・・・」
食事を済ませた二人、ゆりあは立ちあがろうとして、翔のほうを見ると
まだ座っていた。どうしたんだろう・・・そう思ったが、
「先に部屋にもどりますね。」
「はい。どうぞお先に」
席を立ったゆりあ・・・まぁ・・いいかと翔を置いてひとり部屋に戻った。
しばらくして、女将さんが充電器を持ってきた。
「それと、早く風呂に入ってくださいね・」
「はい・・・」
部屋に戻ったゆりあ・・・再び携帯を見たがやはり充電が切れていた。
どうしよう・・・本当に・・・どうやって・・・雄太に・・・そう悩んでいる時だった。
「はい。」
翔の声のがしたなと思ったら目の前に充電器を持っている手が見えた・
「これは?」
「あ・・・さっき、女将から借りてきた。俺も充電しようと思っていたけど・・・先にどうぞ」
そう言ってゆりあに充電器を渡した。
「ありがとう・・・」