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大銀杏の寺で・・・

ゆきえの墓参りに来ていた翔、墓前で手を合わせ、なぜ・・・一人・・・俺を残した・・・翔は、そう心で話しかけた。そして、しばらく墓をじっと見つめていた。やがて、合わせていた手を元に戻し静かに立ち上がり、境内の方へ戻って行った。




ゆりあは久しぶりにあるお寺を訪ねた。

この寺は、大銀杏が有名だった。ゆりあとしてもこの季節に一度は見てみたいと思っていた。雄太も誘ったのだが結局一緒には来てくれなかった。お寺を回る趣味がどうも雄太には理解してもらえないようだ。

石段を前に立つゆりあ。そこで、ゆりあの携帯が鳴った。画面を見ると雄太からだった。


「ゆりあ・・」


「雄太・・どうしたの?」


「えっ・・と、今晩会えるか?」


「えっ?今晩?どうして・・」


今日は用事があると言っていた雄太が急に誘ってきたことに驚くゆりあ


「いいから・・いつ戻ってこれる?」


「今からだと7時くらいかな・・・」


「7時?じゃぁ・・7時にいつもの場所で・・」


「わかったわ・・」


「たい・・・・」


急に雄太の声が途切れ聞こえなくなった。


「もしもし・・もしもし・・雄太・・?」


ゆりあが携帯を見ると電池が切れていた。


もうっ・・・そろそろ替え時ね、電池1日もたない・・・と思いつつゆりあは石段を上った。

一段一段と階段を上ると大銀杏がだんだん近づく、やがて山門のところまで上りつめるとその中から境内を一面黄色いイチョウ葉の絨毯が敷き詰められ、その中に黄色く紅葉した大銀杏が凛と立っていた。

そして、黄色い葉がひらりひらりと舞うように降っていた。


わぁ・・やっぱり着てよかった


夢中でその風景にカメラを構えたゆりあ・・・


カシャ・・


カシャ・・・


数枚撮った時だった


ファインダー越しに一人の男が入ってきたのが見えた。


彼の姿を見とれるゆりあ。


彼が振り向いた時


「あっ・・・」


無意識でシャッターを押していた。


そして


構えていたカメラをおろし、直接、彼をジーッと見つめていた。


振り向いた彼もまた、ゆりあを見ていた。


そこへ、ポツリ、ポツリと雨が降り始めた。


慌てて門へ走るゆりあと翔・・・


「あ~ひどい目にあった。」


ポツリとつぶやくゆりあ、


ふと、ゆりあを見た翔には、その雰囲気がゆきえと重なった。


そして


「ゆきえ」


商はそう思わずつぶやいた。


「えっ?」


驚くゆりあ。


その言葉に、ゆきえでないことに気付いた翔はうつむいた。





降り続く雨の中・・・


山門に取り残された二人


雨は次第に強くなってきた。


しばらくして、二人に気付いた住職が、傘を持ってきた。


「この傘だったら、もって帰っていいから。」


「ありがとうございます。」


「ところで、大雨洪水警報がでたから、ここからのバスがでないぞ。」


「えっ?」


驚く二人


「ふもとに一軒民宿があるからそこに行って聞いたらいいぞ」


「ありがとうございます。」





仕方なく、ふもとに下りる二人、しばらく歩いてバス停へ行くと”本日運休”と張り紙が張ってあった。


「どうする?」


翔がゆりあに聞いた。


「困ったわね・・・私は、とりあえず駅まで行けるか聞いてみるわ。あなたは?」


「おれ? 俺は、民宿へ行ってみるよ。」


二人が分かれようとすると、ゆりあの目の前に消防団員が来た。


「おい。どこへ行く?」


「わたし?」


「そうだ」


「こっちの方向へ」


「そっちは駄目だ。」


「なぜ?」


「川が氾濫寸前だ」


そう言ってその消防団員は去って行った。


「えっ?」


振り向くとまだ横には翔がいた。


「とりあえず行ってみる?」


「はい。」


二人は、川の近くまで来た。すでに警戒水位を超えており、水かさは橋の上まできていた。


「無理だろう。」


そう言った翔に対して、ゆりあは焦っていた。雄太と約束が・・・そう思い


それでも無理して、行こうとするゆりあ。しかし、水に入ってすぐに足を取られて、倒れそうになった。


「あぶない!!」


ゆりあの手をとり助ける翔


「痛い!!」


「何やってんだ!!死ぬぞ。」


ようやく帰れないことを悟ったゆりあ。

川から離れる二人、ゆりあは足を引きずっていた。


「大丈夫?」


「大丈夫・・っ・・・」


歩けない様子のゆりあ、


「ほら・・」


翔がゆりあの目の前に背中を向けしゃがむ


「えっ?」


驚くゆりあ


「ほら・・乗れよ・・」


「いいわよ・・」


無理して歩こうとするゆりあだが、すぐに、痛みのあまりよろめく。


「ほれ・・」


翔はゆりあに肩を貸し住職が言っていた民宿へ向かった。

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