誤解
病室を飛び出すゆりあ・・
「ゆりあさん!!」
裕子は声をかけ、ゆりあを追いかけた。
しばらく走って、病院を出て、木陰で泣いているゆりを見つけた。
「ゆりあさん・・・」
「ごめんなさい・」
「仕方ないわよ・・しばらく様子を見ましょう。」
「そうね・・」
「元気だしてね。」
「はい・・でも今日はかえるわ・・」
「そうね。」
二人は分かれた。
病室に戻った裕子
「裕子・・」
「なに?}
「さっきの人・・・」
「お兄ちゃん・・覚えてるの?}
裕子が聞きなおすと、しばらく、考え込む翔
そして、首をひねり
「わからない。」
そこに担当医がやってきた。
「気分はどうですか?」
「特に・・・」
「そうですか・・」
そう言う医者に声をかける裕子
「先生・・」
「なんですか?」
「ちょっと記憶がないみたいなんですが。」
「どのくらいですか?」
「それはわかないんですけど・・」
「と言いますと。」
「私のことは覚えているんですけど」
「はあ。」
「一緒に来ていた人のことは覚えていないんですよ。」
「と言うことは、最近のことを覚えてないってことですか?」
「そうみたいなんです。」
「しばらく、様子を見て、リハビリをしましょう。」
担当医は出て行った。
数日後、奈々枝がお見舞いにやってきた。
「裕子、大変だったわね・・」
「まぁ・・ね」
「樋口さん・・こんにちは」
奈々枝が声をかけると
不思議そうに奈々枝を見る翔の姿がそこにあった。
「どうしたの?わたしよ!わたし」
「どなたですか?」
「樋口さんの彼女の奈々枝よ!!」
「ちょっと!!奈々枝!!」
裕子が声を上げ、手を引っ張る
そして
「な・・何よ!!」
そういう奈々枝を無理やり病室の外に引っ張り出した。
「なんなのよ!!一体!!」
怒る奈々枝に
「お兄ちゃん、今、調子悪いから・・」
「は?」
「記憶が混乱しているの」
「どういうこと?」
「一部記憶がないみたいなの。」
「そうなの。」
病室に戻ろう二人に、
「樋口さんですよね。すみません」
裕子は看護士に呼び止められた。
看護士と話をしている裕子が奈々枝を先に病室に入れた。
「奈々枝、先行ってて。」
しばらくして、裕子が戻ると奈々枝はすでにいなかった。
「あれ?奈々枝は?」
「もう帰った・・・」
「そう・・」
「ところで、石原さんって、どんな人?」
「ああ・・お兄ちゃんが目を覚ましたときに一緒にいた人よ。いつも見舞いに来てくれる。」
「そうか」
窓の外を見る翔
「どうしたの、何か思い出したの?」
「いや・・べつに・・」
翌日、ゆりあが見舞いに行くと、そこには翔しかいなかった。
「こんにちは。」
「ああ・・」
「だいぶよくなりました?」
ゆりあの言葉に、チラッとゆりあの方を見る翔、そして、
「もう来なくていいです。」
「えっ?」
「だから、お見舞いに来なくていいですから」
驚くゆりあ
「なぜ?」
「あなたの顔も見たくない出て行ってくれ!!」
廊下でその声を聞いた裕子、慌てて病室に入ってきた
「お兄ちゃん!!何言ってんのよ!!」
裕子を見たゆりあは、何も言わず、病室を出て行った。
「ゆりあさん・・」
「お兄ちゃん!!一体どうしたのよ。」
「あいつが!!邪魔をしたんだ!!」
かなり興奮した状態の翔、しかし、ゆりあの悲しそうな顔がよみがえる。
「なんの邪魔をしたのゆりあさんが」
「お前は知っているだろう。」
「何のことよ。一体」
そういう裕子の方を見る翔・・・
しばらくして、目から涙が出てきた・・・
「あれ・・?」
驚く翔
「どうしたの?」
裕子が聞くと
「わからない・・」
「で・・一体、何があったの?」
奈々枝が翔の恋人で、その仲を引き裂こうとしたのがゆりあだと聞かされたと翔が語った。