近づく冬・・・
しばらくして、
ゆりあが
「樋口さんこそ・・・」
言い近づいて行った。
そして
樋口がいる墓を見るとゆきえの墓だった。
「どうしてここに?」
再び聞くゆりあ・・・
翔はゆっくり立ち上がり
「ここ?」
「そう・・」
「墓参りに・・・」
「そう・・」
「石原さんは?」
「わたしも墓参りに?」
ゆきえの墓の前に立った。
「ゆきえとは?」
「お姉さんなの・・・」
「そうか・・ゆきえの妹か・・・」
「そういう樋口さんは?」
「ゆきえ・・か・・・」
言葉を濁す。
ゆりあの脳裏に翔が一年前に彼女を亡くしたことが蘇った。
「ひょっとして・・」
「そう・・」
少し暗くなる翔。
そして
「でも、今日は、ある報告をしたんだ。」
「報告って?」
「好きな人が出来た。」
「好きな人って?」
「君だ・・」
「えっ?」
「石原さん・・あなたのことが好きだ。」
両手で口を押さえるゆりあ・・
頭がカーッとなっていた。
そこへ近づいてきた翔、
やがて
ふわーっと包み込むように
彼女を抱きしめた。
彼の腕の中・・・
「ごめん・・・やっぱり駄目」
腕を振りほどくゆりあ
その言葉聞いて戸惑う翔
「どうして?」
「どうしてって・・」
「あなたは、私じゃなくて、お姉さんの面影を追ってるのよ。」
「ちがう・・」
「ちがうって?」
「どこが?ちがうって言うの?」
しばらく、向き合う二人・・・
翔は少し頭が痛くなってきていた。
「おれは・・・」
その痛みはだんだん大きくなってきて
目の前が暗くなってきた。
「樋口さん!!」
言うゆりあの声がだんだん遠くなっていった。