ゆきえの前で
ベットの上からゆりあを見つけた翔、その姿を見て
「大丈夫ですか?」
「ええ・・大丈夫よ」
涙を浮かべ返事をするゆりあ
それを見て、雄太は、処置室を出た。
大きなため息をして、壁を叩いた雄太
どうして、俺じゃないんだ・・・もう・・だめなのか?
そう思いつつその場に立ち尽くしていた。
翔を見つめるゆりあ、
しかし・・・・
どうしたらいいの?
という言葉が脳裏を駆け巡った。
「ゆりあさん・・大丈夫だから」
そう言い裕子がゆりあの肩をポンと叩いた。
「そう・・じゃぁ・・」
ゆりあが帰ろうとすると
「ゆりあ・・大丈夫か!!」
お父さんが駆けつけてきた。
「大丈夫よ・・」
「そうか・・・」
お父さんと一緒に帰った。
帰り車の中で
「実は・・・お姉さんの件だけど・・」
「あとにしてよ!!」
数日後、ゆりあの携帯に樋口から連絡が入る
「無事退院した。」
「ごめんなさい。」
「いいよ。また、会えないか?」
「またって?」
「明後日の日曜日でも?」
「わかったわ・・」
家に戻るとゆりあの父が待っていた。
「ちょっといいか?」
「何?おとうさん?」
「実は・・」
言葉に詰まる父・・・
「どうしたの?」
神妙そうな父の面持ちに、不安がよぎるゆりあ
「実は・・」
「えっ・・・?」
「ゆきえが・・・1年前にすでに、亡くなっていた。」
「どういうこと?」
「この間、連絡が入ったんだ!」
「隠してたの?」
「俺も知らなかったんだ。」
父はある手紙を渡した。それを見るゆりあ・・・
実の母からだった・・・
「で・・・」
「で・・とは?」
「どこにいるの・・・」
「どことは?」
「おねえさん・・・」
父は、住所の書いた紙を渡した。
そして、
「来週・・・お母さん達と会うことになったから・・・」
ゆりあは姉のゆきえの墓参りに出かけた。
そこは・・・
翔と初めて出会った寺だった
翔と出会った時の風景がよみがえる。
ふとわれにかえるとすでにイチョウの葉が落ち殺風景な風景になっていた。
ゆりあは、境内を抜けて墓所に向かった。
そして
ゆきえの墓の前で、一人手を合わる男性がいた。
翔だった。
ゆきえ・・好きな人が出来た。
よろこんでくれるよな?
彼が祈っていたのだった。
その姿を見てゆりあは、手に持っていた勺を落とした。
コトンという音が響き、その音に気付いた翔が振り向いた。
「石原さん?なぜ?」