過去
ゆりあは、ミサンガのことが気になっていた。
思い切って父親に聞くことにした。
自分は、父親の連れ子であることは、前から知っていた。
それ以上のことは、よくしてくれる母や、弟に悪いと思って聞いていなかった。
「お父さん・・」
「なんだゆりあ」
「ちょっと聞いていい?」
「なんだい。」
「これなんだけど・・・」
自分のミサンガを見せた。
「これは、お前のお守りだよ。」
「それくらい知ってるわよ。これは、お父さんがくれたものなの?」
ゆりあの父は、ため息をついて、焼酎を一口飲んだ。そして、
「今度、一緒にのみに行こう。そのときだ」
「わかったわ。で? いつ?」
「う~ん。金曜日は?」
一方雄太は焦っていた。
この間は、洪水のせいで、はぐらかされた。
そして
樋口とのことも気になる。
だから
早くプロポーズをして、決めたいと・・・
そして
ゆりあがいる部署に行き声をかけた、
「今週の金曜は、あいてるか?」
「ごめんなさい。先約があるの。」
「先約?誰と・・・」
「お父さんと。」
「そうか・・仕方がないな。じゃぁ、今度にしよう。」
「ごめん行かなきゃ・・」
ゆりあがその場を立ち去った。
そこには、電源の入ったデジカメがあった。
ゆりあのやつ・・と電源を切ろうとするとそこには
イチョウの葉が舞い散る中で、振り返った翔の姿があった。
金曜・・・
「おとうさん。待った。」
待ち合わせをした二人。
「ああ・・」
近くの居酒屋に入り、いつもの個室に入る。
「久しぶりね、二人で来るの・」
「そうだな。就職祝いのとき以来だもんな。」
「あの時、大変だったのよ。お父さん飲みすぎで・・」
「ごめん・ごめんついうれしくて」
「今日は勘弁してよ。」
「大丈夫・・」
「ところで・・あのミサンガのことなんだけど・・」
「そうだな。」
おもむろに父は語り始めた。
「ゆりあ・・実は、お前には、兄と双子の姉がいるんだ・・・」
「えっ?・・じゃぁ・・なんで私一人をお父さんが引取ったの・・・」
「それは・・・」
父は語りだした。
「お前が小さい頃の・・・
わしと母さん・兄・姉そしてゆりあの5人家族で楽しく暮らしていた。
しかし
わしが事業に失敗し、生活が苦しくなっていった。
家計を支えるため、働いていた母さんが病気で入院したんだ。
そんなある日のことだった。
元々、結婚に反対だった母さんの両親が病院にいた母さん、家にいた兄、姉、そして、ゆりあを
無理やり連れ戻ろうとした。
そして
仕事が終わって家に帰ったわしを待っていたのは、泣いていたお前ゆりあだった。」
「なんで私だけが?」
「多分、お前だけどこかに隠れてたんだろう。・・・
怖くて・・
そして
わしに泣いていたのをよく覚えている。」
「・・・・」
「実は、後日お前を引取りに母さんと両親が来た、
その時母さんと別れるのを決意した。
そして
お前も母さんの元へ渡そうとしたんだが
わしの元を離れたくないと泣いたな・・・
本当は、母親にと思ったんだが、
みんなで説得したんだがわしにしがみついて離れなかったんだよ。
だから
わしは、責任もって立派にこの子だけは育てることを約束して、お前を引取ったんだ。」
「じゃぁ、なんで、別れたのおとうさん達は?」
「それは、母さんの病気がひどかったからだ。」
「なぜ?」
「あの時のわしの力ではどうにも出来なかったんだ。」
「じゃぁ・・お母さんは?}
「生きてるよ。」
「そう。よかった。」
「数日後、母さんはお前にとそのミサンガを渡しにきた。
お守りとして、
そして、
兄姉にYKのイニシャルの入ったミサンガを渡したと言っていた、」
「えっ?YK?」
「YK、 兄の裕樹、姉のゆきえ、そしてお前・・」
「なぜKなの?」
「小林のK、母さんの旧姓だ。」
「それでお母さん達は?」
「それを渡したら連絡が途絶えた。」
「どうして?」
「アメリカに行った。」
「じゃぁ・・なぜ・・元気だと。」
「お前の誕生日にはがきが届いてたんだ。エアーメールで・・・最近はないけど」
父親はそれを出した。
それを読むゆりあ・・・
「ゆりあ・・・すまん・・・」
「お父さん、あやまらないで・・・何も悪くないわ・・」
家に戻ったゆりあ・・・
自分のミサンガを見て
樋口・・翔・・・
なぜ、あなたがこれを持ってるの?
ひょっとして・・・?
実のお兄さん?
それとも?
だから?
あの時、ドキッとしたの?
それとも?
自問自答していた。
その頃、翔は、一人ミサンガを見て、考え事をしていた。
そこに
「お兄ちゃん!!」
裕子が入ってきた。
「わっ!!」
驚く翔
「どうやって入ってきた!!」
「どうやってって・・・ドアからよ。」
「勝手に入ってくるなよ!!」
「勝手にって・・何度もノックしたわよ。しかも、ああって返事したくせに。」
「えっ?」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「何もないよ・・・」
「ひょっとして、新しい人が出来たの?」
「ちがうよ・・・」
「さっき、奈々枝から電話あったんだけど・・」
「なんだよ・・」
「好きな人でも出来たの?」
「どういう意味だよ・・」
「分かりやすい・・お兄ちゃんって・・で・・どんな人よ。」
「いいだろう・・別に・・」
「ふーん・・じゃぁ・・がんばってね・・」
裕子は部屋を出て行った。
「余計なお世話だ。」